この世には「非の打ち所がない」人間なんていないんですね。いくら東大を卒業していたからって、欠点が全くない人間なんていない。性格にやや問題がある人間も、家事ができない人間もいる。俺だって欠点だらけの人間です。

ところで、この「非の打ち所がない」って言葉の意味、分かっているか?簡単に言えば「まったく欠点がない」という意味です。比較的よく使われる言葉ですが、詳しいことを見ていくとなかなか面白いぞ。

今日はそんな「非の打ち所がない」について、院卒日本語教師の"むかいひろき"に解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「非の打ち所がない」の意味や語源は?

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「非の打ち所がない」という言葉、見聞きしたことがある人は多いのではないでしょうか。「非の打ち所がない」と褒められたことがある人もいるかもしれませんね。まずは、その「非の打ち所がない」の意味と語源を確認していきましょう。

「非の打ち所がない」の意味は「まったく欠点がない」

最初に、「非の打ち所がない」の辞書での意味を確認していきましょう。「非の打ち所がない」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

まったく欠点がない。
「ー紳士」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆非の打ち所が無・い」

「非の打ち所がない」は「まったく欠点がない」という意味を表す慣用句です。ある人物やその行動、ある人物が作ったもの…などを評価するときに使用される表現ですね。語源のコーナーで詳細を説明しますが、「批の打ち所がない」と書いても問題はありません。

「非の打ち所がない」の語源の「非を打つ」とは?

「非の打ち所がない」は「非を打つ」という言葉が元になっています。

詩歌や文章などを批評してつける評点のことを「批点」といい、そこから「批点を打つ」という言葉が生まれ、「非を打つ」という形にも変化しました。そして、「批点を打つ」「非を打つ」は「人の欠点を指摘して非難する」という意味でも派生して使用されるようになります。ここから反対の意味に転じて、称賛のニュアンスで使用されるようになったのが「非の打ち所がない」「批の打ち所がない」です。

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「非の打ち所がない」の使い方を例文とともに確認!

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次に、「非の打ち所がない」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「非の打ち所がない」は「非の打ち所ない」という形で用いられることもありますが、意味やニュアンスは変わりません。

1.田中さんの歌声には非の打ち所がない。来週のコンクールもきっと優勝できるだろう。
2.これが最優秀賞をとった石井さんの絵か…。本当に非の打ち所がないきれいな絵だ。
3.水谷さんは非の打ち所のない女性だ。一度お付き合いしてみたい。

例文1は、「田中さんの歌声には批判する部分が見つからない」という意味で「非の打ち所がない」が使用されています。「批判すべき点がない」「欠点がない」という意味で使用されるのが、この「非の打ち所がない」です。例文2も同様に、「欠点が全くないきれいな絵だ」という意味で「非の打ち所がない」が使用されています。

例文3も「水谷さんは欠点のない完璧な女性だ」という意味で「非の打ち所がない」が使用されていますが、実際にそのような人はいないでしょう。人は欠点がどこかしらあり、それを受け容れることが大切なのです。

「非の打ち所がない」の類義語は?

続いて、「非の打ち所がない」の類義語を見ていきましょう。「非の打ち所がない」の類義語は「完全無欠」「完璧」です。意味を確認し、「非の打ち所がない」との比較を行っていきます。

「完全無欠」:完全で、欠点や不足が全くないこと

「完全無欠」は「完全で、欠点や不足が全くないこと」という意味を表す四字熟語です。「まったく欠点がない」という意味の「非の打ち所がない」とは同じ意味・ニュアンスを表します。

ただ、他人を褒めたり、他者の作品を褒めたりする場合は、「完全無欠」よりも「非の打ち所がない」の方が使用される印象がありますね。

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「完璧」:まったく欠点がないこと

「完璧」は「まったく欠点がないこと」という意味の単語です。こちらも「完全無欠」と同様に、「非の打ち所がない」と意味やニュアンスの違いはありません。また、他人や他人の作品を褒める場合、「非の打ち所がない」と同じくらい、もしくはそれ以上によく使用される表現です。

「完璧」の「璧」の字は「壁(かべ)」ではありません。間違える人が多いので注意しましょう。

「非の打ち所がない」の英語表現は?

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最後に、「非の打ち所がない」の英語表現を確認していきましょう。「非の打ち所がない」の英語表現は「impeccable」「perfect」です。それぞれ、意味と例文を確認していきましょう。

「impeccable」:欠点のない、非の打ち所がない

「impeccable」は「欠点のない」「非の打ち所がない」という意味を表す英単語です。「非の打ち所がない」の訳語として辞書でも先頭に出てくることが多いですね。例文を確認していきましょう。

1.Mr. Smith is a perfect fit for this position because he speaks impeccable Russian.
非の打ち所がないロシア語を話すスミス氏は、このポジションにピッタリの人物だ。

2.Smith's impeccable performance earned him a well-deserved gold award.
スミス氏は、その非の打ち所がないパフォーマンスによって金賞を受賞した。

「perfect」:完全無欠な、完璧な

「perfect」は「完全無欠な」「完璧な」という意味の英単語です。「パーフェクト」という形で和製英語にもなっているため、皆さんお馴染みの言葉かもしれませんね。この「perfect」も「非の打ち所がない」の訳語として使用されることが多いです。例文を確認していきましょう。

1.Ray's hitting stats today were perfect.
今日のレイ選手の打撃成績は非の打ち所がない

2.Elections are about choosing the candidate you think is better. There is no candidate who is perfect in all aspects.
選挙とはよりマシだと思える候補者を選ぶものだ。全てにおいて非の打ち所がない候補者なんていない。

\次のページで「完全に「非の打ち所がない」人なんて、いません!」を解説!/

完全に「非の打ち所がない」人なんて、いません!

今回は「非の打ち所がない」について解説しました。「非の打ち所がない」は「まったく欠点がない」という意味を表す慣用句です。ある人物やその行動、ある人物が作ったもの…などを評価するときに使用される表現ですね。

ただ、本当の意味で「非の打ち所がない」人はこの世にいません。誰でも必ずどこか欠点は持っているものです。その欠点をどうやってカバーしていくか考えながら生きていくことが大切なのではないでしょうか

" /> ”非を打つ”ってどういうこと?「非の打ち所がない」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

”非を打つ”ってどういうこと?「非の打ち所がない」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

この世には「非の打ち所がない」人間なんていないんですね。いくら東大を卒業していたからって、欠点が全くない人間なんていない。性格にやや問題がある人間も、家事ができない人間もいる。俺だって欠点だらけの人間です。

ところで、この「非の打ち所がない」って言葉の意味、分かっているか?簡単に言えば「まったく欠点がない」という意味です。比較的よく使われる言葉ですが、詳しいことを見ていくとなかなか面白いぞ。

今日はそんな「非の打ち所がない」について、院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「非の打ち所がない」の意味や語源は?

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「非の打ち所がない」という言葉、見聞きしたことがある人は多いのではないでしょうか。「非の打ち所がない」と褒められたことがある人もいるかもしれませんね。まずは、その「非の打ち所がない」の意味と語源を確認していきましょう。

「非の打ち所がない」の意味は「まったく欠点がない」

最初に、「非の打ち所がない」の辞書での意味を確認していきましょう。「非の打ち所がない」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

まったく欠点がない。
「ー紳士」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆非の打ち所が無・い」

「非の打ち所がない」は「まったく欠点がない」という意味を表す慣用句です。ある人物やその行動、ある人物が作ったもの…などを評価するときに使用される表現ですね。語源のコーナーで詳細を説明しますが、「批の打ち所がない」と書いても問題はありません。

「非の打ち所がない」の語源の「非を打つ」とは?

「非の打ち所がない」は「非を打つ」という言葉が元になっています。

詩歌や文章などを批評してつける評点のことを「批点」といい、そこから「批点を打つ」という言葉が生まれ、「非を打つ」という形にも変化しました。そして、「批点を打つ」「非を打つ」は「人の欠点を指摘して非難する」という意味でも派生して使用されるようになります。ここから反対の意味に転じて、称賛のニュアンスで使用されるようになったのが「非の打ち所がない」「批の打ち所がない」です。

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