

端的に言えば韻を踏むの意味は「同じ韻の字を詩句の特定の場所に用いる事」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
放送局の制作現場で10年の経験を積んだをsinpeito88呼んだ。一緒に「韻を踏む」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/sinpeito88
放送局の現場で10年間、ニュース原稿などを日々執筆。より正確な情報を届けられるよう言葉の探求を続けている。
「韻を踏む」の意味は?
「韻を踏む」には、次のような意味があります。
同韻の字を詩句の特定の場所に用いる。韻を押す。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「韻を踏む」
「韻を踏む」とは、「同じ韻の字を詩句の特定の場所に用いる」ことを指す言葉です。また「韻」とは、次のような意味を指します。
1.言葉のひびき。また、物の出す音。
2.風流な趣。
3.漢字音で、声母(頭子音)を除いた部分。韻母。
4.詩や文章で、同一または類似の音を、特定の場所に繰り返して用いること。
5.詩歌。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「韻」
「韻を踏む」と言われる際の「韻」はこの意味の中でも、特に、「詩や文章で、同一または類似の音を、特定の場所に繰り返して用いること」を指しています。「韻を踏む」と言ったり、「押韻」と言ったりするものです。「韻を踏む」という行為は、詩句の中で用いることで文章がリズミカルになったり、聞き取りやすさが上がったり、意味や語句の意味がより印象的になります。
俳句や短歌などをしない人でも、「韻を踏む」という行為はなじみがあるものでしょう。例えば、J-POPの歌詞の中にも韻を踏んでいるものはあります。典型的なのはラップです。音楽の中にリズミカルに言葉を入れ込んでいくためには、「韻を踏む」作業が必要不可欠。文章の最後の母音だけをそろえていることもあれば、その手前の子音からそろえるものもあります。
「韻を踏む」の語源は?
次に「韻を踏む」の語源を確認しておきましょう。元々「韻を踏む」という行為は、中国の漢詩のひとつである「絶句」から始まったものと言われています。「絶句」は、起承転結の4句からなるもので一句が五文字の「五言絶句」と七文字の「七言絶句」がありますが、この中で特定の箇所に同じか似た音の持った語句を用いるという規定があったのが起源とされているのです。
「韻を踏む」の使い方・例文
「韻を踏む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。また、実際に韻を踏んでいる文章も合わせてご紹介しましょう。
1.文頭や文末を同じ音でそろえて、韻を踏むことで、リズムが生まれた。
2.「それでもいいでしょう?」「そこそこやったでしょう?」なんて、そんなんじゃねぇって感じでしょう!
1の文章については特に解説の必要がないので割愛します。
2は「韻を踏む」という行為が2つ組み込まれた文章です。一つは「それで」「そこそこ」「そんなんじゃ」と、文章の頭の発音がすべて「SO」で揃える韻の踏み方。これは「頭韻」という韻の踏み方で、頭の音をそろえるものです。そして、文末が「でしょう」で統一されていますが、これは「脚韻」という韻の踏み方となります。どちらの「韻を踏む」も文章にリズムを持たせて、文章全体の印象を挙げる効果があるものです。
今回は例文のため、すべてひらがなで、かつ簡単なものですが、ラッパーはこれを達人的な領域でやっていますし、J-POPの中でも、韻を踏んでいるものはたくさんあります。人気アーティストの一人であるMr.Childrenの桜井和寿さんの歌詞もかなり意識的に韻を踏んでいますし、1番と2番のメロのなかで全く違うことを言っていながら、文頭と文末で綺麗に韻を踏んでいることが分かると、歌詞を読み込む楽しさが増えていくかもしれません。

ここまで、「韻を踏む」の意味や語源、使い方について解説してきたぞ。「韻を踏む」という言葉を覚えるというより、どういう行為が「韻を踏む」というものかを覚えておくことが大切だな。自分が話をするときにも意識的に使えると良いだろう。ただし、あまり多くなると印象が残るどころか「くどい」印象を与えかねない。さらに言えば、「スキー大好き」のような「オヤジギャグ」も韻は踏んでいるが、笑いに繋がっているかは別物だな!
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