この記事では「薄ら寒い」について解説する。
端的に言えば「薄ら寒い」の意味は「なんとなく寒い、うそ寒い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「薄ら寒い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「薄ら寒い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「薄ら寒い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「薄ら寒い」の意味は?

「薄ら寒い」には、次のような意味があります。

[形][文]うすらさむ・し[ク]

1 少し寒い感じである。うすさむい。「―・い秋の朝」

2 心が寒気を感じるさま。なんとなく寒いものを感じるさま。「厭世的な風潮に―・いものを感じる」「考へてみると、―・いアルバムですね」〈太宰・小さいアルバム〉

出典:コトバンク

「薄ら寒い」は温度を表す形容詞なんとなく寒い、少し寒い様子を表します。はっきりした客観的な基準はなく体感として温度がやや低く感じることを表しますよ。「涼しい」とは異なり温度の低いことがマイナスイメージとして捉えられています。

「薄ら寒い」の語源は?

次に「薄ら寒い」の語源を確認しておきましょう。「薄ら寒い」は「薄い」と「寒い」が組み合わさってできた言葉です。それでは「薄」「寒」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「薄」は草を表す「艹」と近づく意味の音を示す「ハク」とを合わせた字。草が近づきくっついて群がり生えている意味を表します。後にうすい意味の「膊」の字にあてて「うすい」意味に使われるようになりました。また「寒」は氷を表す「冫」と結ぶ意味の音を示す「カン」とを合わせた字。氷が結びついて固まることから「さむい」意味を表します。

\次のページで「「薄ら寒い」の使い方・例文」を解説!/

「薄ら寒い」の使い方・例文

「薄ら寒い」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.最近うすらさむい日が続いているので、恐怖で頭髪が逆立つように毎日ちょっとした鳥肌が立つ。速攻でエアコンをつけて初夏のような温かさに設定するほかない。

2.五月だというのにうすらさむく寒々とした挨拶を交わすようになった。お知らせを持ってきてくれたお隣さんは「とつぜん寒くなったわね、熱帯夜もいやだけど、どっちもいやよね」などと言っていた。

3.やたらうすらさむいジョークを言ってくるので、あなたは人気者のつもりでも人生すべってると思うと伝えた。

例文1と例文2からは季節外れの寒さに戸惑っている様子が伝わってきますね。例文3からは気持ちが寒くなるようなことを言ってくる相手を軽蔑している様子が伺えます。

「薄ら寒い」の類義語は?違いは?

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「薄ら寒い」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「肌寒い」

「肌寒い」は体に寒さを感じる様子を表す表現はっきりした客観的な基準はなく体感として温度が低く感じられることを表します。「涼しい」とは異なり温度が低いことがマイナスイメージとして捉えられていますよ。「肌寒い」は「寒い」よりも体感としての寒さを強調した表現になっているので、体温との比較において相対的に気温が低いというニュアンスがあり、絶対的に気温が低い場合には用いません

したがって「肌寒い」が最もよく用いられる状況としては、それまで適温だった気温が急に下がったときや梅雨時で低温が続く時などです。また「肌寒い」は気温が変化した時に感ずる寒さの意味で用いることがふつうで、体温自体が変化したために寒さを感じる時には用いないことが多いでしょう。「薄ら寒い」との違いは「肌寒い」でははっきりした寒さを体に感じており、「薄ら寒い」よりも寒さの程度が大きいことが多いという点です。

\次のページで「その2「うそ寒い」」を解説!/

その2「うそ寒い」

「うそ寒い」はなんとなく寒い様子を表します寒さの程度が低いことを表しますが、温度としての寒さというよりは心理的に寒い感じ、寂しいというニュアンスを持っている語。例えば「晩秋の朝のうそさむい日差し」も単なる温度の低さを言っているのではなくて、その寒さが心の侘しさなどを反映した表現として使われています。したがって、物理的に温度が少し低く寒さを感じる場合にはあまり用いられません。「薄ら寒い」との違いは「うそ寒い」は寂しいというニュアンスを持っているという点です。

「薄ら寒い」の対義語は?

「薄ら寒い」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「暖かい」

「暖かい」は空気・水などの温度が適度に高い様子を表します。絶対的な温度にはあまり関係しません。人間の感覚として快い温度を表しますよ。「暖かい」ものは原則として空気と水(液体)ですが、「彼女はあたたかそうな毛皮のコートを着ていた」のようにそれを着るとあたたかく感じるために、そのものの性質として「暖かい」を使うこともあります。温度に対する快感が問題なので、同じ気温についても夏感じる場合と冬感じる場合とで表現が異なることがあるでしょう。

その2「生暖かい」

「生暖かい」は「首筋になまあたたかい風が気味悪くあたった」など温度が少し高いことが不快に感ずる様子を表しますよ。物理的な温度の幅としては「暖かい」の示す温度よりもやや低めであって、体温に近いと感じる温度を指すことが多いでしょう。「暖かい」がプラスイメージの語であるのに対して、「生暖かい」は温度が少し高いことについて不快であることにポイントがあります。また「生暖かい」は具体的なものの温度について用いることが多く、人間の体感や心情などについては用いません。実際の温度としは「生ぬるい」にも近いですが、「生ぬるい」はもともと熱かったり冷たかったりしたものが、その熱や冷たさを失って体温に近くなっているが不快だというニュアンスをもつ点が異なります。

「薄ら寒い」の英訳は?

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「薄ら寒い」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「薄ら寒い」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「slightly cold」

「slightly cold」は「薄ら寒い」という意味です。「It feels kind of slightly cold today」で「今日はなんとなく薄ら寒く感じる」、「Don't say anything that'll make me slightly cold」で「うすらさむくなるようなことを言わないでよ」となりますよ。

\次のページで「「薄ら寒い」を使いこなそう」を解説!/

「薄ら寒い」を使いこなそう

この記事では「薄ら寒い」の意味・使い方・類語などを説明しました。「薄ら寒い」は温度の低いことがマイナスイメージとして捉えられている表現だと解説しましたね。また「薄ら寒い」は「肌寒い」に似ていますが、「肌寒い」でははっきりした寒さを体に感じており「薄ら寒い」よりも寒さの程度が大きいことが多いでしょう。また「薄ら寒い」は具体的に体に寒さを感じる時に用いることが多く心理的に寂しい感じの時にはふつう用いません。そのため「都会の孤独な生活は薄ら寒い」は間違った用法となり、正しくは「都会の孤独な生活はうそ寒い」となります。それぞれの意味の違いを正しく理解し表現していきましょう。

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「薄ら寒い」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

「薄ら寒い」を使いこなそう

この記事では「薄ら寒い」の意味・使い方・類語などを説明しました。「薄ら寒い」は温度の低いことがマイナスイメージとして捉えられている表現だと解説しましたね。また「薄ら寒い」は「肌寒い」に似ていますが、「肌寒い」でははっきりした寒さを体に感じており「薄ら寒い」よりも寒さの程度が大きいことが多いでしょう。また「薄ら寒い」は具体的に体に寒さを感じる時に用いることが多く心理的に寂しい感じの時にはふつう用いません。そのため「都会の孤独な生活は薄ら寒い」は間違った用法となり、正しくは「都会の孤独な生活はうそ寒い」となります。それぞれの意味の違いを正しく理解し表現していきましょう。

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