この記事では「辛気臭い」について解説する。
端的に言えば「辛気臭い」の意味は「思うにまかせずくさくさした気分である、じれったく苛立たしい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「辛気臭い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「辛気臭い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「辛気臭い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「辛気臭い」の意味は?

「辛気臭い」には、次のような意味があります。

[形][文]しんきくさ・し[ク]思うようにならず、いらいらするさま。また、気がめいるさま。「単調で―・い仕事」「―・い口調で話す」

出典:コトバンク

「辛気臭い」はこまごまとしたことが思うようにならず焦燥を感じる様子を表しますよ。関西方言から共通語化した語で日常会話中心に用いられますが、共通語で「辛気臭い」をこのような意味で用いることはあまり多くはなく、どちらかというと「辛気臭い」は気分が重く沈む様子を表す意味で使われます。これも客観的に気が滅入る状態を表すのではなく本人の主観的な気分を表す語。「憂鬱」などに比べてより気分的で侮蔑の暗示もある表現になっています。

「辛気臭い」の語源は?

次に「辛気臭い」の語源を確認しておきましょう。「辛気臭い」は「心気臭い」とも書きますが、現在では「辛気臭い」が一般的な表記となっています。それでは「心」「気」「臭」のそれぞれの漢字の成り立ちについて説明しましょう。「心」は心臓の形を描いた字。また心臓が体の真ん中にあることから「物事の中心」の意味にも使われるようになりました。そして「気」は「米」と湯気を表す「气」とを合わせた字。米を炊くときに立ち上る湯気のことから「空気のような物」の意味に使われるようになりました。最後に「臭」は鼻の形を描いた「自」と「犬」とを合わせた字。犬がクンクンと鼻でにおいを嗅ぐことから「におい」を表します。後に「くさいにおい」の意味にも使われるようになりました。

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「辛気臭い」の使い方・例文

「辛気臭い」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.こんがらがった毛糸を解くのはしんきくさい。神経質なあなたには向いていると思うけど自分にはストレスでしかないわ。まわりにも気鬱な思いが伝わっているじゃないかしら。

2.最初から帳簿付けなんてしんきくさい仕事はやりたくなかったんだ。コレばっかりやっているとだんだん陰鬱な表情になって不満が爆発しそうになる。

3.年寄りと一緒にいると墓場だの病院だのしんきくさい話ばかりで嫌になる。天気や植物の話ばかりされるのも憂うつだな。同感だよ。俺の場合は戦争の話を延々と聞かされて沈鬱な気持ちになった。

4.彼はしんきくさくていられないと出て行ってしまった。数日後、私は蕎麦屋で彼の姿を見かけた。

例文1からは短気な性格のため根気のいる作業は向かないと訴えている様子が、例文2からはチマチマした作業は自分には不向きだと愚痴を言っている様子が伺えます。また例文3からは暗い話を聞かされるのは御免だという気持ちが、例文4からはくさくさした気分でどうにもやってられないという思いが伝わってきますね。

「辛気臭い」の類義語は?違いは?

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「辛気臭い」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「面倒くさい」

「面倒くさい」は「食事の支度がめんどうくさいからといって食べないのは、健康によくない」や「いちいち辞書を引くのはめんどくさくてかなわない」など非常に手間がかかって不快な様子を表します「…くさい」は「いかにも…のような感じである」という意味の形容詞を作る語尾。日常会話ではしばしば「めんどくさい」と発音されますよ。また「面倒くさい」は「煩わしい」に似ていますが、「面倒くさい」は実際に行ってみて手間がかかるので不快だというニュアンスではなく、行う前に手間がかかりそうだと予想するニュアンスで、しばしば行為を行わない暗示があるでしょう。この点で、行為をしたかしないかに言及しない「煩わしい」と異なります。なお「辛気臭い」との違いは「辛気臭い」はこまごまとしたことが思うようにならず焦燥を感じる様子を表すという点。

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その2「かったるい」

「かったるい」はやる気が起こらない様子を表す形容詞。俗語であって日常会話以外には用いられません。「コンクリートジャングルで、毎日かったるい仕事をしてるのさ」などのように述語か名詞にかかる修飾語として用いられるのが最も一般的で、その他の修飾語として用いられることは少なく、「面倒くさい」よりは抽象的で物事の性質より気分の方に重点があるでしょう。したがって、同じ仕事でも「かったるい」と受け取るかどうかには個人差があります

また「かったるい」には「つまらない」「退屈だ」というニュアンスがあり、物事が非常に複雑だったり難解だったりしてめんどうな場合には用いないことが多いでしょう。ちなみに「辛気臭い」との違いは「辛気臭い」はこまごまとしたことが思うようにならず焦燥を感じる様子を表すという点です。

「辛気臭い」の対義語は?

「辛気臭い」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「容易い」

「容易い」は「口で言うのはたやすいが、実際にやるのは容易でない」など労力や能力を必要としない様子を表します。文書語的であまり日常会話には登場しません。簡単だという意味ですが、行為をするにあたって気軽にできるという暗示があり、客観的な容易さを意味しません。また「容易い」は「優しい」に似ていますが、「優しい」が行為の主体にとっても受け手にとっても容易であることを意味できるのに対して、「容易い」はふつうは行為の主体の容易さを意味し受け手にとっての容易さは意味しない点が異なります。

行為の主体にとっての容易さという意味で「容易い」は「気軽」に通じますが、「気軽」は行為の難易は問題にせず、行為をするときの気分だけを問題にする点が異なるでしょう。さらに「容易い」は「造作ない」「わけない」に似ていますが、「造作ない」「わけない」は日常会話中心に用いられかたい文章中にはあまり用いられず、簡単にできることに対して軽い侮蔑の暗示を含む点が文章語的な「容易い」と異なります。

その2「造作ない」

「造作ない」は「こんな細工は子供でもぞうさなくできる」など手間がかからず気軽にできる様子を表します。日常会話中心に用いられかたい文章中にはあまり用いられません。「造作ない」は「優しい」に似ていますが、「優しい」がとても客観的な容易さの表現になっているのに対して、「造作ない」は容易であることについての気分の軽さに視点のある点で異なります。

容易であることについて気分の軽さを意味する点では「造作ない」は「わけない」にも似ていますが、「わけない」が対象そのものの単純さを評するニュアンスが強く、たいていの場合結果としての容易さを軽い侮蔑を伴って暗示するのに対して、「造作ない」は行為の過程における容易さを暗示する点で異なるでしょう。ちなみに「造作ない」はとてもかたい文章語で日常会話にはあまり登場せず、用法も広いです。

「辛気臭い」の英訳は?

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「辛気臭い」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「辛気臭い」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「boring」

「boring」は「うんざりするような」という意味です。「She lamented that his long lectures are boring」で「彼女は彼の長い講義が退屈だと嘆いた」、「I don't like that kind of man, he's too boring」で「私はあのての辛気臭い男は嫌いだ」と表現することができますよ。

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「辛気臭い」を使いこなそう

この記事では「辛気臭い」の意味・使い方・類語などを説明しました。「辛気臭い」は気分が重く沈む様子を表す表現だと解説しましたね。また、客観的に焦燥を感じている様子を表すのではなく焦燥を感じている本人の心理を表すのでとても主観的です。したがって、第三者が見ていらいらするという意味では用いません。そのため「彼の仕事は辛気臭くて見ていられない」は間違った用法となり、正しくは「彼の仕事はじれったくて見ていられない」となりますよ。表現の違いを正しく理解しましょう。

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国語言葉の意味

「辛気臭い」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「辛気臭い」について解説する。
端的に言えば「辛気臭い」の意味は「思うにまかせずくさくさした気分である、じれったく苛立たしい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「辛気臭い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「辛気臭い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「辛気臭い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「辛気臭い」の意味は?

「辛気臭い」には、次のような意味があります。

[形][文]しんきくさ・し[ク]思うようにならず、いらいらするさま。また、気がめいるさま。「単調で―・い仕事」「―・い口調で話す」

出典:コトバンク

「辛気臭い」はこまごまとしたことが思うようにならず焦燥を感じる様子を表しますよ。関西方言から共通語化した語で日常会話中心に用いられますが、共通語で「辛気臭い」をこのような意味で用いることはあまり多くはなく、どちらかというと「辛気臭い」は気分が重く沈む様子を表す意味で使われます。これも客観的に気が滅入る状態を表すのではなく本人の主観的な気分を表す語。「憂鬱」などに比べてより気分的で侮蔑の暗示もある表現になっています。

「辛気臭い」の語源は?

次に「辛気臭い」の語源を確認しておきましょう。「辛気臭い」は「心気臭い」とも書きますが、現在では「辛気臭い」が一般的な表記となっています。それでは「心」「気」「臭」のそれぞれの漢字の成り立ちについて説明しましょう。「心」は心臓の形を描いた字。また心臓が体の真ん中にあることから「物事の中心」の意味にも使われるようになりました。そして「気」は「米」と湯気を表す「气」とを合わせた字。米を炊くときに立ち上る湯気のことから「空気のような物」の意味に使われるようになりました。最後に「臭」は鼻の形を描いた「自」と「犬」とを合わせた字。犬がクンクンと鼻でにおいを嗅ぐことから「におい」を表します。後に「くさいにおい」の意味にも使われるようになりました。

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