国語言葉の意味

「腹を括る」はいつ使う表現?なぜ“お腹”?意味や語源、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。みんなは「腹を括る」という言葉を聞いたことがあるか?まあ、聞いたことがないっていう人の方が少ない…よな、多分。

この「腹を括る」っていうのは、簡潔に言えば「覚悟を決める」っていう意味だ。でも何で”腹”なんだろうなぁ。そして「腹を○○する」って表現は他にもあったような…。

今回はその「腹を括る」の意味や語源、類義語などを、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「腹を括る」の意味と語源は?

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「腹を括る(はらをくくる)」という表現、今まで最低でも1回は見聞きしたことがあるでしょう。ですが、「腹を括るってどんな意味?」「どうしてお腹を括るの?」と言われると、答えられない人もいるのではないでしょうか。まずは、その「腹を括る」の意味や語源を、国語辞典を参照に見ていきましょう。

「腹を括る」の意味は「覚悟を決める」

国語辞典では、「腹を括る」の意味は次のように掲載されています。

覚悟を決める。「―・って審理を待つ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「腹(はら)を括(くく)・る」

腹を括る」は「覚悟を決める」という意味の慣用表現です。「覚悟を決める」という表現は、(1)”嫌なことを心に受け入れなければ入れない時に、受け入れる気持ちを固める場合”、(2)選択肢の中からどれかを選ぶ必要があるときに、ある選択肢を選ぶ決意を心に固める場合”に使用される表現ですね。この2つは類義語との比較で大切になるので、覚えておいてください。

その前にまずは、例文で使い方を確認していきましょう。

1.「今日死刑が執行されても構わない」と、私は毎日腹を括って朝を迎えるが、なかなか自分が死刑になる順番が回ってこない。
2.昨日上司にひどく怒られたので本当は行きたくないのだが、腹を括って今日も朝の通勤ラッシュの電車に乗って出社した。
3.田中君も中島君も調子がいい。ただし捕手のポジションは1つ。私は腹を括って中島君をスターティングメンバーに入れて勝負に出た。
4.アメリカに留学するかどうするか迷っていたが、腹を括って留学してみることにした。

例文1と2は、(1)”嫌なことを心に受け入れなければ入れない時に、受け入れる気持ちを固める場合”に「腹を括る」を使用している例です。例文1では、”死刑という自分にめぐってきた嫌な現実を心に受け入れた”というニュアンスで「腹を括る」が使用されています。例文2では、”会社に行きたくないが、行かなければならないことを受け入れた”というニュアンスで「腹を括る」が使用されていますね。

例文3と4は、(2)選択肢の中からどれかを選ぶ必要があるときに、ある選択肢を選ぶ決意を心に固める場合”に「腹を括る」を使用している例です。例文3では、”スターティングメンバーの捕手を、調子のいい田中君と中島君の両者のうち、中島君を選択することを決意した”というニュアンスで「腹を括る」が使用されています。例文4では、”留学するかしないか迷っていたが、留学することを決意した”というニュアンスで「腹を括る」が使用されていますね。

なぜお腹?「腹を括る」の語源

「腹を括る」はなぜ”お腹”という字が使われているのでしょうか。この「腹を括る」の語源については、2つの説があります。1つは”戦場に向かう武士が鎧や着物の帯を締めなおすこと”に由来するというものです。戦に向かう前には、鎧や着物をきちんと身に付けなければ命の危険につながります。そこで帯をきつく結びなおすことで、戦に行く覚悟を決めた…ということになったのかもしれません。

もう1つは、”着物を着ている人が、緩んできた帯を締めなおすこと”に由来しているというものです。帯が緩んでいると、同時に気持ちも緩んでしまいます。きちんと心を落ち着かせるために、帯をきつく結びなおしたのでしょうか…。

この2つの語源は俗説であり、確かなことは分かっていません。ただ、古くから使われている言葉であるため、お腹のあたりに結ぶ帯が関連していることは間違いないでしょう。

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「腹を括る」の語源は確かなことは分かっていないそうだが、着物や鎧の帯から来ていると考えられているんだな。確かに俺も、大事な仕事の日はベルトをいつもよりきつく締めるからな。

「腹を括る」の類義語と微妙な違いを解説!

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続いて、「腹を括る」の類義語とその違いを解説していきます。ただ、違いといっても基本的な意味は「覚悟を決める」で同じです。使われ方に若干の違いがあるというレベルですね。確認していきましょう。

「腹を決める」覚悟を決める

腹を決める」は「覚悟を決める」という意味の慣用表現です。「腹を括る」と意味やニュアンスの違いはありません。

ただ、使われ方には若干の違いがあり、(1)”嫌なことを心に受け入れなければ入れない時に、受け入れる気持ちを固める場合”、(2)選択肢の中からどれかを選ぶ必要があるときに、ある選択肢を選ぶ決意を心に固める場合”の内、「腹を決める」は(2)の場合で使われることが多いです。

「腹を固める」覚悟を決める

腹を固める」は「覚悟を決める」という意味の慣用表現です。こちらも「腹を括る」と意味やニュアンスの違いはありません。

ただ、使われ方には若干の違いがあり、(1)”嫌なことを心に受け入れなければ入れない時に、受け入れる気持ちを固める場合”、(2)選択肢の中からどれかを選ぶ必要があるときに、ある選択肢を選ぶ決意を心に固める場合”の内、「腹を決める」は(2)の場合で使われることが多いです。こちらも「腹を決める」と同じですね。

\次のページで「「腹を据える」覚悟を決める」を解説!/

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