平安時代日本史

平安時代に日本とインドをつないだ「今昔物語集」について元大学教員が5分で解説

マンガのなかで生まれ変わった今昔物語

今昔物語をマンガに取り入れたのが「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な漫画家の水木しげる。例えば、「染殿の后」は第20巻の7話、「滝口と珍術」は20巻の10話、「入れ替わった魂」は20巻の18話、「ヘビと女」は24巻の9話、「生霊、人を殺す」は27巻の20話、「墓穴に泊まる」は28巻の44話がモチーフとなっています。水木作品のほとんどは今昔物語から着想を得たと言っても過言ではありません。

夢枕獏(ゆめまくらばく)は、平安時代に妖怪が活躍する話を書いている小説家。なかでも有名な作品が「陰陽師」で、今昔物語の24巻16話と23話をモチーフとしています。また、海音寺潮五郎は「極楽急行」(19巻14話)、「王朝」(20巻10話)、「続王朝」(22巻7話)という作品を執筆。どの作品も、今昔物語に着想を得た悲しく美しい物語として多数の読者を得てきました。菊池寛の「好色物語」(23巻16話)、田辺聖子の「絵草子」(22巻7話)や「鬼の女房」(24巻13話)、丹羽文雄の「親鸞」(20巻34話)、杉本苑子の「ふぁんたじあ」(26巻11話)など、今昔物語を参考にしている作品を挙げたらキリがありません。

現代によみがえる今昔物語の世界

マンガや小説を通じて絶えず掘り起こされている今昔物語ですが、遺跡として現代によみがえっています。今昔物語が採取したのは古代インド、中央アジア、中国の説話。ガンダーラ出土彫刻、アショーカ王塔、スリランカ建国伝説、キジル千仏洞窟画、ウィリク出土板絵などに刻まれた文字に、今昔物語と同じ文章が多数発見されました。

現在でも多くの発掘調査は継続中。今昔物語は現代によみがえりつつあると言っていいでしょう。そして、インドや中国で同じ説話が刻まれているということは、日本を含めてアジア一帯は同じ文化圏にあったことを強烈に感じさせてくれます。

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今昔物語をモチーフに作品を書いた作家たちはみんな大御所だ。きっと今昔物語にはたくさんの読者を惹きつけるような魅力があり、今の思考では思いつかない逸話ばかり。作家たちはその可能性を最大限に引き出したのだと思う。もしかすると他にも気が付いていないだけで、今昔物語に着想を得た作品に触れているのかもしれないな。

私たちにとって身近な今昔物語の世界

現代、今昔物語は多くの人に読まれているわけではありません。しかしながら、驚くほどたくさんの作家に参照されたり応用されたりしています。テレビドラマにもなった海音寺潮五郎の「風と雲と虹と」も今昔物語の25巻1話に由来しているとのこと。きっとそれ以外にもたくさんの逸話がテレビドラマや映画としてリメイクされているのかもしれません。私たちが何気なく楽しんでいるエンタメの世界は今昔物語なしには語れないのかもしれませんね。

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hikosuke