この記事では「歔欷」について解説する。

端的に言えば歔欷の意味は「啜りなき(すすりなき)」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「歔欷」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「歔欷」の意味や語源・使い方まとめ

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今回は「歔欷」について解説します。漢字も初めて目にした、まして読み方は見当もつかないという方が多いのではないでしょうか。「歔欷」は「きょき」と読みます。日常会話よりも小説や文語の中で登場する言葉ですね。語源までさかのぼり、意味や関連表現を理解しましょう。日本語の表現力がアップしますよ。

それでは早速「歔欷」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「歔欷」の意味は?

「歔欷」には、次のような意味があります。

すすり泣くこと。むせび泣き。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「歔欷」

「歔欷」は「すすり泣き、むせび泣き」という意味です。どちらも強い悲しみがあり、泣き声を出さずに静かに泣くさまを指します。 「すすり泣く」は鼻をすするように、「むせび泣く」は必死に声を殺そうとしてのどをつまらせて泣く様子です。漢字をさかさまにした「欷歔(ききょ)」という熟語もあり、こちも「すすり泣き、むせび泣き」という同じ意味を持っています。

文章中で使われる場合は「歔欷」単体よりも「歔欷する」という動詞表現になることが多いことも、あわせておさえておきましょう。

「歔欷」の語源は?

次に「歔欷」の語源を確認しておきましょう。

「歔」はそれ自体に「すすり泣く、むせび泣く」という意味があります。また「欷」は「嘆く、悲しむ、すすり泣く」という意味です。この2つの漢字が重なってできたのが「歔欷」で、「悲しみによってすすり泣く、むせび泣く」という意味になりました。

「歔欷」の使い方・例文

意味が分かっても、実際どのように使うのかイメージが湧きにくいですよね。例文を使って「歔欷」の使い方を見ていきましょう。この言葉はたとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「歔欷」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.ひき逃げ事故で妻を失った男性が歔欷する声が聞こえる。犯人への恨みつらみがこもっているかのようだ。
2.昔の辛い出来事を思い出したのか、感情が高ぶった彼女は突然に歔欷し始めた。
3.どこからか、人が歔欷する気配がする。何かあったのだろうか。

歔欷」は「悲しみによって声を上げずにすすり泣く、むせび泣く」という意味ですね。よって悲しい出来事や思い出とともに使われることが多くなります。

例文1は交通事故で最愛の妻を失った男性がむせび泣く様子が、例文2はつらかった過去を思い出した女性が、それぞれ「歔欷」している様子が伝わってきますね。「歔欷」を使うと、「すすり泣く、むせび泣く」と表現するよりも情景に雰囲気と奥行きが生まれます。

例文3は誰が泣いているのかはわからないが、どこからか人がむせび泣く気配がするという意味です。声を殺していても、人が泣いている気配というのは伝わるもの。ひそかに漏れ聞こえる小さな嗚咽も「歔欷」と表現できます。

「歔欷」の類義語は?違いは?

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「歔欷」の類義語を見てみましょう。「すすり泣き、むせび泣き」を表す言葉は非常に数が多いのですが、代表的なものを3つご紹介します。

その1「歔泣」

歔泣(ききゅう)」という熟語があります。「歔欷」の「歔」の字と「泣」が合わさったものですね。意味は「すすり泣く」です。

その2「忍び泣く」

忍び泣く」も「歔欷」の類義表現です。「忍んで泣く」という字面の通り、「ひそかに泣く。人目をはばかって声を抑えて泣く」という意味になります。

その3「嗚咽」

嗚咽(おえつ)」は聞いたことがあるという人も多いでしょう。「声をおさえて泣くこと。むせび泣き」という意味ですから、「歔欷」の類義語と言えます。漢字に注意してください。「 鳴咽」と誤表記されることがありますが、正しくは「嗚咽」です。「嗚」の字に注目ですよ。

\次のページで「「歔欷」の対義語は?」を解説!/

「歔欷」の対義語は?

「歔欷」の対義語を見てみましょう。「声をおさえて泣く」という意味の「歔欷」の対義語には、どのようなものがあるでしょうか?

その1「慟哭」

慟哭(どうこく)」は「声をあげて激しく嘆き泣くこと」という意味です。「歔欷」とは反対のさまを表していますね。悲しみに耐えきれず、大きな声をあげて泣く様子を指す言葉です。

その2「号泣」

号泣(ごうきゅう)」は「大声をあげて泣くこと、泣き叫ぶ」という意味です。「号」という漢字には「大声で叫ぶ」の意味があり、「号泣」は大声を上げて泣くという意味だとされています。多様な解釈がある言葉ですが、正しくおさえておきましょう。

「歔欷」の英訳は?

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「すすり泣く、むせび泣く」という行動は世界共通のものですね。「歔欷」を英語で表現するとどのようになるのか、見てみましょう。

その1「sob」

「歔欷」を表す英単語の1つ目は「sob」です。「sob」は「涙にむせぶ、すすり泣く」という意味ですから、まさに「歔欷」と同義ですね。

She sobbed against his chest.
「彼女は彼の胸ですすり泣いた」

その2「sniffle」

「歔欷」の英訳2つ目は「sniffle」をご紹介します。「sniffle」は「すすり泣く、涙声」という意味です。他に「風邪などで鼻が詰まって、ふんふんいわせる」という意味もあります。誤解されないように、使い方には注意しましょう。

\次のページで「その3「weep」」を解説!/

He sniffled in sorrow.
「彼は悲しみにすすり泣いた」

その3「weep」

「歔欷」の英訳3つ目は「weep」です。「涙を流して泣く」という意味で、声をあげて泣くというよりは悲しみに涙を流すというニュアンスがあります。 

They wept to hear the sad tale.
「彼らはその悲しい話を聞いて涙を流した」

「歔欷」を使いこなそう

この記事では「歔欷」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「歔欷」しないといけないような場面には遭遇したくないものですが、しかし生きていればいろいろなことがあるもの。時には「歔欷」したくなることもあるでしょう。「歔欷」している人を見かけることもあるかもしれません。そんなそっと寄り添い、気持ちをわかちあう優しさを持っていたいものですね。

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国語言葉の意味

「歔欷」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「歔欷」について解説する。

端的に言えば歔欷の意味は「啜りなき(すすりなき)」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「歔欷」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「歔欷」の意味や語源・使い方まとめ

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今回は「歔欷」について解説します。漢字も初めて目にした、まして読み方は見当もつかないという方が多いのではないでしょうか。「歔欷」は「きょき」と読みます。日常会話よりも小説や文語の中で登場する言葉ですね。語源までさかのぼり、意味や関連表現を理解しましょう。日本語の表現力がアップしますよ。

それでは早速「歔欷」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「歔欷」の意味は?

「歔欷」には、次のような意味があります。

すすり泣くこと。むせび泣き。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「歔欷」

「歔欷」は「すすり泣き、むせび泣き」という意味です。どちらも強い悲しみがあり、泣き声を出さずに静かに泣くさまを指します。 「すすり泣く」は鼻をすするように、「むせび泣く」は必死に声を殺そうとしてのどをつまらせて泣く様子です。漢字をさかさまにした「欷歔(ききょ)」という熟語もあり、こちも「すすり泣き、むせび泣き」という同じ意味を持っています。

文章中で使われる場合は「歔欷」単体よりも「歔欷する」という動詞表現になることが多いことも、あわせておさえておきましょう。

「歔欷」の語源は?

次に「歔欷」の語源を確認しておきましょう。

「歔」はそれ自体に「すすり泣く、むせび泣く」という意味があります。また「欷」は「嘆く、悲しむ、すすり泣く」という意味です。この2つの漢字が重なってできたのが「歔欷」で、「悲しみによってすすり泣く、むせび泣く」という意味になりました。

「歔欷」の使い方・例文

意味が分かっても、実際どのように使うのかイメージが湧きにくいですよね。例文を使って「歔欷」の使い方を見ていきましょう。この言葉はたとえば以下のように用いられます。

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