
端的に言えば「建立」の意味は「築き上げること」です。寺社仏閣など仏教的な建造物を建てる例を挙げる辞書が多いが実は言葉の持っている意味の幅はもっと広い。正確なニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
博士(文学)の学位を持ち、日本語を研究している船虫堂を呼んです。一緒に「建立」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/船虫堂
博士(文学)。日頃から日本語と日本語教育に対して幅広く興味と探究心を持って生活している。生活の中で新しい言葉や発音を収集するのが趣味。モットーは「楽しみながら詳しく、わかりやすく言葉をご紹介」。寺社仏閣好き。
「建立」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto
それでは早速「建立」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。今回検討していく「建立」は読み方は特殊ですが「こんりゅう」と読むのが一般的ですが、辞書には「けんりつ」という読み方で項目が掲載されているものもありますので注意が必要です。「建立」は、一般的に寺社仏閣など仏教的な建造物を建てることを指すことが多いのですが、詳しく調べてみると、仏教用語に限定されているわけではなく、もう少し語の使用範囲が広いことがわかります。一緒に「建立」の意味するものについて迫っていきましょう。
「建立」の意味は?
「建立」の意味について、まずは辞書の記述を参照してみましょう。辞書には以下のような説明が掲載されています。参照するのは『精選版日本国語大辞典』(小学館)です。ここでは「建立(こんりゅう)」と「建立(けんりつ)」の項目を引用します。
こん‐りゅう ‥リフ【建立】
出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「建立」より
けん‐りつ【建立】
と、いうわけで、「建立」に関する2つの項目をご覧いただきました。辞書に掲載されている用例の年代を見ると「建立(けんりつ)」の方が「建立(こんりゅう)」より新しいですが、辞書の記載を見る限り読み方の変遷については明らかにされていません。さて、それでは「建立」の意味について整理してみましょう。なお、読み方については次の項目で取り扱いますので読み方の謎に迫りたい方はこの後の項目を先にご覧ください。
『精選版日本国語大辞典』によると、「建立(こんりゅう)」の第一の意味は「宗派を新たに開くこと」とあります。仏教に関する用語ではありますが、一般的に知られている寺社仏閣の建設よりずっとスケールの大きな意味を持っていることをいきなり突きつけられるわけです。そして同じ項目の中に、「寺院やその建物を新たに作ること」という世間一般に知られている意味とそれに該当する『日本霊異記』の用例が続いています。また、項目の最後に「けんりつ」とある点にも注目です。つまり、「建立」の第一の意味で「けんりつ」という用法もあるということですね。
続いて、第二の意味で出てくるのが、第一の意味での「建立」を果たすために勧進や寄進をすることという意味です。説明の文に出てくる「勧進」と「寄進」とは、寺社に金品を寄付することに関する言葉で、「勧進」は他者に寄付を募ることを表すのに対して、「寄進」は自ら進んで寄付をするという意味を持っています。
そして、第三の意味として掲載されている語の意味なのですが、とても範囲が広いです。「うちたてる」という意味で用いることができるわけで、その対象は「建物のような具体的なもの」から「事業」、「観念」など形のないものにまで及びます。これが、「建立」が寺社仏閣の建設に限らないという所以なのです。
\次のページで「「建立」の読み方に隠されている謎とは?」を解説!/