理科生物生物の分類・進化

5分でわかる「フィッシャーの原理」生物の性比が1:1になる原理を現役大学院生が解説!

よぉ、桜木建二だ。今回のテーマは「フィッシャーの原理」だ。フィッシャーの原理とは、イギリスの進化生物学者ロナルド・フィッシャーが1930年に出版した著書『自然選択の遺伝学的理論』で提唱した、多くの生物で性比がおおむね1:1になる理由の説明だ。進化生物学におけるもっとも重要な考え方のひとつである原理を生物に詳しい現役大学院生ライターCaoriと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/Caori

国立大学の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

フィッシャーの原理とは

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皆さんの保育園や小学校など時のクラスの男女比はだいたい1:1だったのではないでしょうか?実は生物種や生態系にかかわらず多くの生物ではオスとメスの比率(性比)が1:1となっています。なぜ生物がこのような性比を維持しているのかを説明した理論が「フィッシャーの原理」です。

もちろんヒトの場合も「フィッシャーの原理」が当てはまります。「日本の人口動態」によると出生性比率(女性100人に対する男性の数)は105~106を推移しており、これは日本国内に限らず、世界的に人類の出生性比は地域・時代にかかわらず男女の性比は1.05~1.06:1です。しかしながら、出生後に男児の方が死亡率が高いため、日本では20~64歳の男女比は男性が3,513.0万人、女性が3,420.0万人で男女比率は 1.02:1 程度となり性比は等しくなっています(総務省統計局のデータを参照)。

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人間の場合、妊娠3ヶ月時においては男女比は 1.20:1 だが、出生時にはこの比率が 1.06:1 程度にまで下がる。これは妊娠中の男児の死亡率が高いためであると説明されているぞ。出生後も男児の方が死亡率が高いため、青年期には男女比率は 1:1 程度になる。その後は平均寿命が女性の方が長いために、年代が上がると逆転して女性の比率が高くなるんだ。ヒトの性比は特に人類学と人口統計学で重要視されているぞ。

進化ゲーム理論

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フィッシャーの原理の概要を解説する前に、生物の進化や生存戦略に重要な理論である「進化ゲーム理論」「進化的に安定な戦略」について解説しておきますね。

「ゲーム理論」はあらゆる戦略的状況を対象としており、経済学や社会学、工学、生物学など多くの学問に応用されています。簡単に言えば「どのような戦略を取れば自分の利益が最大になるか」という理論です。ゲーム理論を生物分野、特に進化の分野に応用したものを「進化ゲーム理論」といい、「どのような戦略を取ればより多くの自分の子孫(遺伝子)を残せるか」になります。生物の自然選択は「種全体にとって有利」であることよりも「その個体(自分)にとって有利」であることが優先して行われることがポイントです。

進化的に安定な戦略

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進化ゲーム理論の基礎を作ったのはメイナード・スミスとジョージ・プライスです。2人は動物の闘争や共存の分析にゲーム理論を適用して、「進化的に安定な戦略(ESS:evolutionarily stable strategy)」と呼ばれる概念を示しました。

進化的に安定な戦略は、「ある集団のすべての成員がその戦略を採用すると、他の戦略により侵略・侵入されることのない戦略」と表現されています。多くの個体が限られた同じ資源(餌や交尾相手)を利用するとき、彼らは互いに競争者です。このとき、様々な戦略をとる集団が現れまずが、いずれの集団でも少数派が有利となり、有利な集団が増えていくためその頻度を増大させて行きます(自然選択によって繁殖成功率が高い適応戦略が種に広がっていくため)。やがて複数の戦略が入り混じった状態で集団が均衡状態に達したとき、 この戦略のバランスを進化的に安定な戦略であると言います

進化的に安定な戦略の例

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スミス博士は動物にゲーム理論を導入し、進化的に安定な戦略を「タカ」と「ハト」に例えて示しました

博士は、多くの動物が資源を奪い合う際に殺し合いにまで至らないのは、徹底的に攻めるという「タカ派」な闘い方より、自分の身を危険にさらさない「ハト派」な戦略のほうが自分にとって有利であると考えました。しかし、「ハト派」戦略はいったん「タカ派」戦略に侵入されたら、タカ派に侵略されてしまい、その動物の戦略は不安定になってしまいます。実際、動物たちは単純な「ハト派」戦略をとらず、なわばりの持ち主であれば「タカ派」戦略で、侵入者であれば「ハト派」戦略で、といった様に両方の戦略をとっていることから、「ハト戦略の個体」と「タカ戦略の個体」が混じり合った状態で種は安定すると結論付けました。このハト派とタカ派の戦略の平衡状態を「進化的に安定な戦略」と表現しています。

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