
5分で分かる「質量作用の法則」受験でよく出る式を計算して理解を深めよう!京大卒の研究者が丁寧にわかりやすく解説!
【問題】
ある一定の体積Vを持った容器の中に2.50molの水素H2と2.50molのヨウ素I2を入れて一定の温度に保った。これらの気体からヨウ化水素HIが生成する反応が平衡状態になったとき、水素は0.50molであった。このときの平衡定数Kの値を求めよ。
【解答】
まずは化学反応を書いてみましょう。水素分子とヨウ素分子は2つの原子が結合した分子ですので、ヨウ化水素HIとの化学平衡と平衡定数の式は以下のように表されます。
ここで平衡状態における水素は0.50molであるので、2.00molの水素が消費された、すなわち平衡状態のヨウ素は0.50mol、ヨウ化水素は4.00molです。濃度に換算するには体積Vで各成分の物質量を割れば良いので、平衡定数は以下のようになります。
1-3.平衡定数を用いた濃度計算法

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次は逆に平衡定数から濃度を求めてみましょう。変数xを使った2次方程式を用いるので、解の公式などを思い出しながら解いてみてください。
【問題】
以下の水溶液反応の平衡定数Kは0.70である。0.30molのAと0.50molのBを水1Lに溶かしたとき、平衡における各成分の濃度を求めよ。
【解答】
各係数はすべて1であるため、平衡におけるC,Dの濃度がx(mol)ならばAは0.30-x(mol),Bは0.50-x(mol)となりますね。また水1Lに溶かした場合なので、今回はモル濃度としてそのまま平衡定数の式に代入できます。
2次方程式の解の公式を使ってxを求めてみましょう。なお、xは濃度なので正の値を持つ必要がある点に注意してください。
従ってAは0.13mol,Bは0.33mol、CとDは0.17molとなります。
2.質量作用の法則と化学平衡
前の章では質量作用の法則の式を用いて化学平衡の計算を行いました。この章では質量作用の法則や化学平衡について、もう少し詳しく見ていきましょう。はじめに反応速度と平衡定数の関係を学び、その後に温度や圧力変化が起こったときの平衡定数の変化を学んでいきましょう。
2-1.反応速度と平衡定数

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化学反応において重要なキーワードの一つが「反応速度」です。反応速度は化学反応の種類によって異なりますが、実験から求めることができます。例えば先程の例題で使った水素とヨウ素からヨウ化水素が生成する反応では、反応速度定数kを用いて反応速度を以下のように表すことが可能です。
ところで平衡状態は反応が止まっているわけではありません。平衡状態とは「正反応と逆反応が同じ速度で起こっている状態」です。つまり上で表した反応速度を用いると以下のように表すことが出来ます。
つまり反応速度の速度定数の比が平衡定数になるわけです。ちなみに平衡定数をさらに厳密に導出するためには大学で学ぶ化学熱力学の知識が必要となります。
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