この記事では「買いかぶる」について解説する。

端的に言えば買いかぶるの意味は「実力より高く評価する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「買いかぶる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「買いかぶる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「買いかぶる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「買いかぶる」の意味は?

「買いかぶる」には、次のような意味があります。

1.人物を実際以上に高く評価する。
2.品物を実際の価値よりも高く買う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「買い被る」

「買いかぶる」とは、人のことをその実力より高く評価することです。例えば「君は優秀だから、これまで大きな失敗なんてしたことないだろう」という言葉に対し「買いかぶるのはやめてください」などと使います。他人に対しても「彼女のことをちょっと買いかぶりすぎなんじゃない?」などと使いますね。

しかし「私は彼女を買いかぶっている」と使うのは誤りです。自分が「買いかぶる」場合は、「その実力を知らずに高く評価してしまっていた」という過去にしか使えませんよ。「私は彼女を買いかぶっていた」と使うのは問題ありません。

上の2の意味は「買いかぶる」のもともとの意味。明治時代頃までは「実際の価値より高い値段で買う」という意味で使われていましたが、現代ではもっぱら1の意味で使います。

「買いかぶる」の語源は?

次に「買いかぶる」の語源を確認しておきましょう。「買いかぶる」を漢字で書くと「買い被る」。「被る」は「被害を被る(こうむる)」の「被る(こうむる)」と同じ字であり、「本来しょわないで良いものをしょいこむ」という意味があります。

上でも述べたとおり「買い被る」は、もともとは「実際の価値より高い値段で買う」という意味で使われていました。買うことで被害を背負わされてしまうことから、「買い被る」という言葉が生まれたのでしょう。

不当に高い値段で買ってしまうことから、明治時代頃には「人を信用しすぎてしまう」という意味に変わっていきました。「人を実力より高く評価する」という意味につながりますね。

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「買いかぶる」の使い方・例文

「買いかぶる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.きみの翻訳レベルは上級クラスと考えていたが、すこし買いかぶっていたかもしれないな。
2.ぼくが作った無料ゲームアプリが人気になったのは運が良かっただけですし、プレイ動画をネットにアップした友人が話題になったのもたまたまですよ。買いかぶらないでください、プロデューサーなんて無理ですって。
3.自分の営業手腕を買いかぶって自慢してくるのはウザいけど、この人についてるとフォロー役の私の評価が上がるし、便利に利用させてもらっちゃおっと。

どの例文も「実力より高く評価する」ニュアンスが感じられますね。

1の例文の「買いかぶっていた」は、上級クラスのレベルには届いていないのに、上級クラスに相当すると評価してしまっていた、という意味です。

2の例文では、「買いかぶらないでください」と使って、たまたま成功したのを実力だと思わないでほしいと訴えています。本人は自分に実力がないと思っているようですが、それが正しいかどうかは分かりません。しかし彼からすると、相手の人は「自分を買いかぶっている」のですね。

3の例文は、自分を優秀だと思っている人に対し、そうでもないと考えている人の気持ち。自分の力を買いかぶって自慢する人、それを利用する人、どっちもどっちですね。WIN-WINの関係であるならこれで良いのかもしれません。

「買いかぶる」の類義語は?違いは?

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「買いかぶる」の類義語には「過大評価する」があげられます。

「過大評価する」

「過大評価する」とは、読んで字のごとく、過大に評価すること。実際よりも高く評価することですね。「買いかぶる」と同じ意味といえます。

お互い言い換えができますが、「過大評価する」は漢字がすべて音読みの「漢語」、「買いかぶる」は訓読みの「和語」のため、ニュアンスは少し違うかもしれません。

「実力のない人ほど自分を過大評価する」という文章は、ビジネスマン向けの自己啓発の言葉かのように感じます。一方「実力のない人ほど自分を買いかぶる」というと、ひそひそ陰口でも言っているような雰囲気じゃないでしょうか。言い換えて使っても意味は通じるのですが、ニュアンスが変わりますね。

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「買いかぶる」の対義語は?

「買いかぶる」の対義語には「侮る(あなどる)」があげられます。

「侮る(あなどる)」

「侮る(あなどる)」とは、相手を軽くみることです。「買いかぶる」が実力より高く評価することですから、まさに反対の意味といえるでしょう。

「君を侮っていたよ」といったら、「君の実力はもっと低いと思っていたよ」ということ。良きライバルに「君を侮っていたよ」と言わせたのなら、一泡吹かせてやった感じがします。逆に「君を買いかぶっていたよ」と言われたらショックですね。

しかし、「侮る」という言葉は「軽蔑する」「バカにする」という意味を含む場合もあります。ふざけた態度で接してくる人がいれば、それはこちらを「侮って」いるから。それはそれでうれしくない態度といえます。

「買いかぶる」の英訳は?

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「買いかぶる」を英訳するときは「overestimate」を使います。

「overestimate」

「overestimate」は、まさに「買いかぶる」という意味をあらわす言葉です。「estimate」は「見積もる」「見こむ」という意味。そこに「over(越えて)」がつくので、直訳すれば「越えて見積もる」。日本語の「過大評価(する)」という意味にピッタリくる言葉なのです。

英語が母国語の人にとっても、「overestimate」を「過大評価する」と和訳するのはわりと簡単かもしれませんね。逆に「買いかぶる」と和訳するのはけっこう難しいのではないでしょうか。売買の「買う」という意味を含まない「買いかぶる」という言葉、これを使いこなせる外国のかたは日本語ツウといえそうです。

I think you overestimate him.
(あなたは彼のことを買いかぶっていると思うな。)

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「買いかぶる」を使いこなそう

この記事では「買いかぶる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「買いかぶる」とは「実力より高く評価する」という意味です。「私なんかのことを買いかぶりすぎですよ」のように使います。

人に買いかぶられるのは、困る反面、うれしい気持ちもあるでしょう。だれかに期待されたときは「買いかぶられて困る」なんて思わずに、高く評価された自分を信じ、頑張ってしまうのも良いかもしれません。

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国語言葉の意味

「買いかぶる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「買いかぶる」について解説する。

端的に言えば買いかぶるの意味は「実力より高く評価する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「買いかぶる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「買いかぶる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「買いかぶる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「買いかぶる」の意味は?

「買いかぶる」には、次のような意味があります。

1.人物を実際以上に高く評価する。
2.品物を実際の価値よりも高く買う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「買い被る」

「買いかぶる」とは、人のことをその実力より高く評価することです。例えば「君は優秀だから、これまで大きな失敗なんてしたことないだろう」という言葉に対し「買いかぶるのはやめてください」などと使います。他人に対しても「彼女のことをちょっと買いかぶりすぎなんじゃない?」などと使いますね。

しかし「私は彼女を買いかぶっている」と使うのは誤りです。自分が「買いかぶる」場合は、「その実力を知らずに高く評価してしまっていた」という過去にしか使えませんよ。「私は彼女を買いかぶっていた」と使うのは問題ありません。

上の2の意味は「買いかぶる」のもともとの意味。明治時代頃までは「実際の価値より高い値段で買う」という意味で使われていましたが、現代ではもっぱら1の意味で使います。

「買いかぶる」の語源は?

次に「買いかぶる」の語源を確認しておきましょう。「買いかぶる」を漢字で書くと「買い被る」。「被る」は「被害を被る(こうむる)」の「被る(こうむる)」と同じ字であり、「本来しょわないで良いものをしょいこむ」という意味があります。

上でも述べたとおり「買い被る」は、もともとは「実際の価値より高い値段で買う」という意味で使われていました。買うことで被害を背負わされてしまうことから、「買い被る」という言葉が生まれたのでしょう。

不当に高い値段で買ってしまうことから、明治時代頃には「人を信用しすぎてしまう」という意味に変わっていきました。「人を実力より高く評価する」という意味につながりますね。

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