
日本発祥の新たな進化説
ダーウィンの進化論が主流になってきていた中で、「非ダーウィン」的な一貫した理論を唱える人物が日本にいました。それが木村資生(もとお)先生ですよ。彼が提唱したのは「中立進化説」というもので、これまでの進化説の要素を含みかつ斬新な仮説でした。
木村資生先生とは
木村資生先生(1924年11月13日-1994年11月13日)は、集団遺伝学者です。愛知県岡崎市出身で、京都帝国大学理学部(現在の京都大学理学部)で植物学を学んでいましたよ。ちなみに、学位は1956年に大阪大学で理学博士号を取得しています。1949年に国立遺伝学研究所に入所し、教授を経て名誉教授になりました。約40年間研究に従事していたのですよ。日本遺伝学会会長も歴任しました。
中立説
自然選択説によると、集団内に受け継がれる遺伝子は、自然選択を受けた有利なものが多いはずです。しかしながら、DNAやタンパク質という分子レベルでの進化について、生存や繁殖に有利でも不利でもない自然選択と関係ない突然変異が一定の確率でたえず起こっていて、これが集団内に多く見られるようになることに木村先生は注目しました。自然選択と関係のない中立的な遺伝子の変化が形質として現れ、進化に関係するとした中立説(1968年)を木村先生は唱えていますよ。
中立説を語る上では、「遺伝的浮動」がキーワードになってきますよ。
次に「遺伝的浮動」について見ていきましょうね。
遺伝的浮動

image by Study-Z編集部
遺伝的浮動とは、ある集団において、たまたま偶然にある遺伝子を持ったものが多く生き残り、ある遺伝子が次の世代に広く伝わったりすることがあるのということですよ。そのことによって、集団内でその遺伝子の頻度が大きく増加します。このように、遺伝的浮動とは、なんらかの意味があって遺伝子が淘汰されているわけではなく、あくまで「偶然」起こっているということですね。
びん首効果
びん首効果(ボトルネック効果)とは、ある集団において、個体数の少ない時期が数世代続くと、個体数が増えて元に戻っても、以前のような多様性が見られず、ある遺伝子を持った個体ばかりになってしまうことです。もし、遺伝的多様性が減ると、どうなるか。環境の変化の耐性が脆弱だったり、さらに他の種に影響をもたらす有害な遺伝子が増える可能性がありますよ。
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