今日は遺伝学の理論について学んでいきます。輝かしい研究業績を残したものに与えられる栄誉ある賞、例えばノーベル賞が最高権威であり有名ですね。それ以外にもたくさん素晴らしい研究を称える賞があって、「ダーウィン・メダル」という生物学における最高レベルの賞があるんです。日本人で唯一それを受賞したのは木村資生(もとお)先生なんです。木村先生の唱えた進化説やその他の有名な進化説について生物に詳しい医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

進化のしくみ研究の曙期

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進化のしくみについて研究が進んできたのは、19世紀になってからです。冒頭で触れたダーウィンも1859年に有名な『種の起源』を発表していますよ。進化論の曙期の様々な理論について見ていきましょうね。

用不用説と自然選択説

用不用説と自然選択説

image by Study-Z編集部

19世紀で主流だった、「用不用説」「自然選択説」について説明していきますね。用不用説とは、フランスのラマルクによって彼の著書『動物哲学』(1809年)で提唱されました。用不用説とは、よく使われる器官は発達し、発達した形質が子孫に伝えられて進化が起こるというものですよ。18世紀の中ごろまでは、生物の種は変化しないとされてきましたので、ラマルクによる生物が進化するということを明確にしたのはセンセーショナルなことでした。

「自然選択説」は、ダーウィン自身の著書である『種の起源』(1859年)で提唱されました。これは、「自然淘汰説」とも言いますよ。ダーウィンは、船で世界中を廻って、ガラパゴス諸島のゾウガメやフィンチ(鳥の仲間)などのガラパゴス諸島の固有種の観察によって、生物は1つの種から進化したのではないかと考え、この説を導き出したそうです。

自然選択説の要点をまとめると下記のようになりますよ。

1.生物は多くの子を産むが、それらの間には違った形質(変異)が見られる。

*例えば、キリンなら、首が長いものとそうでない個体が生まれたとする。

2.これらのうち、より環境に適したものが生き残って子孫を残す。

*前足や首がより長い個体の方が高い位置に生えている葉を食べることができる。

3.自然選択の結果、適した形質が子孫に伝えられ、このような変化が積み重なって進化した。

*だから、キリンは首が長い個体である。

突然変異説

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突然変異説はオランダの遺伝学者ド フリースによって提唱されました。ド フリースは、オオマツヨイグサを栽培して代々自家受精していました。ある時、その中にいくつか変異が突然生じ、さらにそれが遺伝することをド フリースは発見しました。ド フリースは、この現象を突然変異と呼び、突然変異によって新しい種が急速に生じるとする突然変異説を提唱しました。

しかしあがら、突然変異が起こったものは突然変異説は、なぜ突然変異が起こったものが次の世代に受け継がれるのかは検証されていません。

\次のページで「日本発祥の新たな進化説」を解説!/

日本発祥の新たな進化説

ダーウィンの進化論が主流になってきていた中で、「非ダーウィン」的な一貫した理論を唱える人物が日本にいました。それが木村資生(もとお)先生ですよ。彼が提唱したのは「中立進化説」というもので、これまでの進化説の要素を含みかつ斬新な仮説でした。

木村資生先生とは

木村資生先生(1924年11月13日-1994年11月13日)は、集団遺伝学者です。愛知県岡崎市出身で、京都帝国大学理学部(現在の京都大学理学部)で植物学を学んでいましたよ。ちなみに、学位は1956年に大阪大学で理学博士号を取得しています。1949年に国立遺伝学研究所に入所し、教授を経て名誉教授になりました。約40年間研究に従事していたのですよ。日本遺伝学会会長も歴任しました。

中立説

自然選択説によると、集団内に受け継がれる遺伝子は、自然選択を受けた有利なものが多いはずです。しかしながら、DNAやタンパク質という分子レベルでの進化について、生存や繁殖に有利でも不利でもない自然選択と関係ない突然変異が一定の確率でたえず起こっていて、これが集団内に多く見られるようになることに木村先生は注目しました。自然選択と関係のない中立的な遺伝子の変化が形質として現れ、進化に関係するとした中立説(1968年)を木村先生は唱えていますよ。

中立説を語る上では、「遺伝的浮動」がキーワードになってきますよ。

次に「遺伝的浮動」について見ていきましょうね。

遺伝的浮動

遺伝的浮動

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遺伝的浮動とは、ある集団において、たまたま偶然にある遺伝子を持ったものが多く生き残り、ある遺伝子が次の世代に広く伝わったりすることがあるのということですよ。そのことによって、集団内でその遺伝子の頻度が大きく増加します。このように、遺伝的浮動とは、なんらかの意味があって遺伝子が淘汰されているわけではなく、あくまで「偶然」起こっているということですね。

びん首効果

びん首効果(ボトルネック効果)とは、ある集団において、個体数の少ない時期が数世代続くと、個体数が増えて元に戻っても、以前のような多様性が見られず、ある遺伝子を持った個体ばかりになってしまうことです。もし、遺伝的多様性が減ると、どうなるか。環境の変化の耐性が脆弱だったり、さらに他の種に影響をもたらす有害な遺伝子が増える可能性がありますよ。

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2000年代以降の中立進化説

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科学技術が進歩し、分子生物学の発達によって、遺伝子レベルで古生物の形態を調べることが可能になりました。このことによって、多くの中立的な突然変異が起こっていることが明らかになりましたよ。現在集団遺伝学の分野で指示されている学説は、「総合説」ですよ。

「総合説」について詳しく見ていきましょう

総合説

総合説とは、メンデルによる遺伝の法則とダーウィンの自然選択とを結びつけて進化を総合的に理解しようとするものですよ。ちなみにメンデルの遺伝の法則は、1866年に唱えられたものですから、ダーウィンの自然選択説よりも新しい説なのですよ。さらに、総合説では、自然選択や突然変異以外でも遺伝的浮動や隔離についてさまざまな要因を含んで進化について研究する考え方ですよ。

現代では、次世代シークエンサーやワークステーションなどのより洗練された機器や手法を使って古代生物のゲノム解析が可能となっておりますので、今後集団遺伝学において新たな発見があるかもしれませんね。

近代的な進化説に貢献した中立説

19世紀になると、進化や遺伝についての研究が進み始めました。ラマルクの用不用説、ダーウィンの自然選択説、ドフリースの突然変異説は現在の集団遺伝学の研究の要素にも含まれています。ラマルクやダーウィンは種を残すためにより有利な遺伝子の存在についてフォーカスしていますが、木村資生先生は種を残すために有利でも不利でもない中立的な存在の遺伝子に注目したことは大きな功績ですね。一見すると、木村資生先生の中立進化説はダーウィンの自然選択説を否定しているようにも見えますが、こちらもしっかりと現在の集団遺伝学の要素に含まれていますね。

微生物を含むすべての生物のゲノム解析が進めば、今後変異のメカニズムがわかってくるかもしれませんね。

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理科生物

3分で簡単「木村 資生」日本のダーウィン?遺伝学に影響を与えた遺伝学者を医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

今日は遺伝学の理論について学んでいきます。輝かしい研究業績を残したものに与えられる栄誉ある賞、例えばノーベル賞が最高権威であり有名ですね。それ以外にもたくさん素晴らしい研究を称える賞があって、「ダーウィン・メダル」という生物学における最高レベルの賞があるんです。日本人で唯一それを受賞したのは木村資生(もとお)先生なんです。木村先生の唱えた進化説やその他の有名な進化説について生物に詳しい医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

進化のしくみ研究の曙期

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進化のしくみについて研究が進んできたのは、19世紀になってからです。冒頭で触れたダーウィンも1859年に有名な『種の起源』を発表していますよ。進化論の曙期の様々な理論について見ていきましょうね。

用不用説と自然選択説

用不用説と自然選択説

image by Study-Z編集部

19世紀で主流だった、「用不用説」「自然選択説」について説明していきますね。用不用説とは、フランスのラマルクによって彼の著書『動物哲学』(1809年)で提唱されました。用不用説とは、よく使われる器官は発達し、発達した形質が子孫に伝えられて進化が起こるというものですよ。18世紀の中ごろまでは、生物の種は変化しないとされてきましたので、ラマルクによる生物が進化するということを明確にしたのはセンセーショナルなことでした。

「自然選択説」は、ダーウィン自身の著書である『種の起源』(1859年)で提唱されました。これは、「自然淘汰説」とも言いますよ。ダーウィンは、船で世界中を廻って、ガラパゴス諸島のゾウガメやフィンチ(鳥の仲間)などのガラパゴス諸島の固有種の観察によって、生物は1つの種から進化したのではないかと考え、この説を導き出したそうです。

自然選択説の要点をまとめると下記のようになりますよ。

1.生物は多くの子を産むが、それらの間には違った形質(変異)が見られる。

*例えば、キリンなら、首が長いものとそうでない個体が生まれたとする。

2.これらのうち、より環境に適したものが生き残って子孫を残す。

*前足や首がより長い個体の方が高い位置に生えている葉を食べることができる。

3.自然選択の結果、適した形質が子孫に伝えられ、このような変化が積み重なって進化した。

*だから、キリンは首が長い個体である。

突然変異説

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突然変異説はオランダの遺伝学者ド フリースによって提唱されました。ド フリースは、オオマツヨイグサを栽培して代々自家受精していました。ある時、その中にいくつか変異が突然生じ、さらにそれが遺伝することをド フリースは発見しました。ド フリースは、この現象を突然変異と呼び、突然変異によって新しい種が急速に生じるとする突然変異説を提唱しました。

しかしあがら、突然変異が起こったものは突然変異説は、なぜ突然変異が起こったものが次の世代に受け継がれるのかは検証されていません。

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