この記事では「上の空」について解説する。

端的に言えば上の空の意味は「他の事に心が奪われて、その事に注意が向かない状態」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「上の空」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「上の空」の意味や語源・使い方まとめ

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「上の空」という言葉、日常生活の中でもよく使う言葉かもしれませんね。そんな状態になってしまったという人も多くいることでしょう。この言葉を正しく使えているか、この機会に確認してみましょう。それでは早速「上の空」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「上の空」の意味は?

まず初めに、「上の空」を辞書で確認してみましょう。「上の空」には、次のような意味があります。

1.他の事に心が奪われて、そのことに注意が向かないこと。また、そのさま。心が浮ついて落ち着かないさま。
2.天空。空中。そら。
3.あてにならないこと。根拠がなく不確かなこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「上の空」

「上の空」の読み方は「うわのそら」です。「うえのそら」ではありませんので注意しましょう。一般的には「上の空」というと「何か他のことに心が奪われていて、目の前のことに集中できない」状態を表す言葉として使われていますね。しかし、文字通りの「天空」という意味、また「あてにならないこと」という意味も持っています。この機会に頭に入れておいてくださいね。

「上の空」は、心ここにあらずの状態を表します。必要なことに集中していないので注意も散漫、心は浮ついて落ち着かず、的確な対応もできないのであてにならないのです。

「上の空」の語源は?

次に「上の空」の語源を確認しておきましょう。

「上の空」は「空の上の方」の意味で平安時代から使われ始めました。『源氏物語』の「夕顔」の歌に「山の端の心もしらで行く月はうはのそらにて影や絶えなむ」があります。ここでは「うはのそら=上の空」は「空の上の方」という意味で使われているのです。しかしこの歌には、好きな人が上空で雲に隠れるように消えてしまうのではないかという不安な心情が表現されています。それを考えると、3番の意味「あてにならないこと」の意も含まれているのが感じられますね。

落ち着かないさまを意味する「心空なり(こころそらなり)」という言葉があります。これが「空なる心」を強調する表現として「上の空なる心」となり、後に心が奪われる意味として「上の空」となったと考えられているのです。「体はここにあっても心は空の上の方にある」ということなのですね。そこから、空の上の方のようにとらえどころのない、頼りない、当てにならないということも意味するようになったのです。

「上の空」の使い方・例文

「上の空」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「上の空」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.小学生でも中学生でも高校生でも、学年を問わず、学習中に上の空になってしまう子は多い。
2.思い切って悩み事を打ち明けたのに「ごめん。上の空だった」と言われてショックだった。
3.振り返ると上の空が美しい夕焼けに染まっていた。
4.今日も上の空だとあきらめていた健太が、急にしっかりしたので驚いた。

「上の空」は、会話中や、先生や上司などしっかりと聞いていなければならないはずの話を集中して聞いていなかった時によく使われる言葉です。ぼんやりと夢うつつな状態でいる時「上の空だぞ」と叱られた経験があるのではないでしょうか。勉強をしながら、また仕事などで指示を受けている最中にも、つい他のことに気を取られて集中できなくなってしまう時がありますね。そういう状態も「上の空」といいます。

また、例文4のように、あてにならないこと、不確かなことに対して使うこともできますよ。地上からは確認することができない空の上の方のように、どうなっているかわからなくてあてにならないことであるとイメージしてみてください。

例文3のように、文字通りの「空の上の方」という意味で使われることは、現代ではほとんどなくなってしまいました。

「上の空」の類義語は?違いは?

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「上の空」の類義語を見ていきましょう。

その1「心ここにあらず」

「心ここにあらず」は「心が他のことにとらわれて、当面のことに心を集中できない」ことを意味する慣用句です。何かに気を取られて、やらねばならないことがおろそかになっている様子を表します。集中力を欠いた状態を表すのです。「上の空」ととても似た意味を持つ言葉ですが、「あてにならないこと」の意は含んでいません。

その2「呆然」

「呆然(ぼうぜん)」は「気抜けしてぼんやりしているさま」を表す言葉です。また「あっけにとられているさま」も表します。「ぼんやりしているさま」という点では「上の空」と似た意味を持っていますが、起こったことに対して驚いたり呆れたりして気が抜けることを表している点で意味が少し異なりますね。なお、同じ読み方で「茫然」がありますが、こちらは「呆然」と同じ意味と共に、「漠然としてつかみどころのないさま」を表す言葉なのですよ。

その3「放心」

「放心(ほうしん)」は「心を奪われたりして、魂が抜けたようにぼんやりすること」を表す言葉です。「魂が抜けたように」とあるように、精神状態が確かでない状態を表します。「放心状態」などと言いますね。「突然のことに放心して立ち尽くす」といったように、心が抜き取られてしまったかのような状態を表すのですね。その点が、ぼんやりして心がどこかへ行ってしまっているという「上の空」とは少し異なる点です。

\次のページで「その4「身が入らない」」を解説!/

その4「身が入らない」

「身が入らない」は「どうにも一生懸命になれない、集中できない、真剣に取り組む事ができない」といった意味合いで使われる表現です。「勉強に身が入らない」などと言いますね。他のことに心を奪われて集中することができない「上の空」と似たような意味を持っていることがわかります。

その5「不注意」

「不注意(ふちゅうい)」は「注意が足りないこと」を意味する表現です。うかつなことや心が行き届かないことを表します。この言葉も「上の空」と似た意味を持つ言葉です。

「上の空」の対義語は?

「上の空」と反対の意味を持つ言葉について見ていきましょう。

その1「夢中」

「夢中(むちゅう)」は「物事に熱中して我を忘れること」を表す言葉です。何かに心を奪われ、他のことが考えられない状態になることを表します。心を奪われているものに集中するということですから、「上の空」とはまったく反対の状態であると言えますね。

その2「脇目も振らず」

「脇目も振らず(わきめもふらず)」は「周りの様子を窺うようなこともせず、一心不乱に集中している様子」を表す言葉です。横を見ることもせず、そのことばかりに集中して心を散らさないということですから、この言葉も「上の空」とは反対の状態を表す言葉であることがわかりますね。

「上の空」の英訳は?

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「上の空」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

その1「space out」

「space」は「宇宙」や「空間」を意味する単語ですね。これを「space out」と言うと、「ぼーっとする」という意味になります。宇宙の外に行ってしまっているという感じからなんとなく想像できますね。

\次のページで「その2「absentminded」」を解説!/

その2「absentminded」

「absentminded」は「ぼんやりした」「うっかりしている」などを意味する言葉です。「absent-minded」と書く場合もあります。「absent」とは「欠けている、不在の、欠席の」などを意味する単語です。「放心した、ぼんやりした」という意味も持っていますので、そのような精神状態になっているということで「上の空」を表すことができるのですよ。

Sorry, I was spacing out.
ごめん。上の空だった。

He always makes an absentminded reply.
彼はいつも上の空の返事をする。

「上の空」を使いこなそう

この記事では「上の空」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「上の空」は「心ここにあらずの状態」を表す言葉でしたね。平安時代から使われているとても長生きの言葉でした。当初の「空の上の方」の意味から、落ち着かないさま、とらえどころのないあてにならないさまへと意味が変化していったのも興味深いですね。空の上の方を眺めながら「上の空」について考えているうちに、大事な話を上の空で聞いていたなんてことにならないよう、大事な時には集中してくださいね。「上の空」、意味や歴史を思いながらまた使ってみてください。

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国語言葉の意味

「上の空」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「上の空」について解説する。

端的に言えば上の空の意味は「他の事に心が奪われて、その事に注意が向かない状態」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「上の空」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「上の空」の意味や語源・使い方まとめ

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「上の空」という言葉、日常生活の中でもよく使う言葉かもしれませんね。そんな状態になってしまったという人も多くいることでしょう。この言葉を正しく使えているか、この機会に確認してみましょう。それでは早速「上の空」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「上の空」の意味は?

まず初めに、「上の空」を辞書で確認してみましょう。「上の空」には、次のような意味があります。

1.他の事に心が奪われて、そのことに注意が向かないこと。また、そのさま。心が浮ついて落ち着かないさま。
2.天空。空中。そら。
3.あてにならないこと。根拠がなく不確かなこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「上の空」

「上の空」の読み方は「うわのそら」です。「うえのそら」ではありませんので注意しましょう。一般的には「上の空」というと「何か他のことに心が奪われていて、目の前のことに集中できない」状態を表す言葉として使われていますね。しかし、文字通りの「天空」という意味、また「あてにならないこと」という意味も持っています。この機会に頭に入れておいてくださいね。

「上の空」は、心ここにあらずの状態を表します。必要なことに集中していないので注意も散漫、心は浮ついて落ち着かず、的確な対応もできないのであてにならないのです。

「上の空」の語源は?

次に「上の空」の語源を確認しておきましょう。

「上の空」は「空の上の方」の意味で平安時代から使われ始めました。『源氏物語』の「夕顔」の歌に「山の端の心もしらで行く月はうはのそらにて影や絶えなむ」があります。ここでは「うはのそら=上の空」は「空の上の方」という意味で使われているのです。しかしこの歌には、好きな人が上空で雲に隠れるように消えてしまうのではないかという不安な心情が表現されています。それを考えると、3番の意味「あてにならないこと」の意も含まれているのが感じられますね。

落ち着かないさまを意味する「心空なり(こころそらなり)」という言葉があります。これが「空なる心」を強調する表現として「上の空なる心」となり、後に心が奪われる意味として「上の空」となったと考えられているのです。「体はここにあっても心は空の上の方にある」ということなのですね。そこから、空の上の方のようにとらえどころのない、頼りない、当てにならないということも意味するようになったのです。

「上の空」の使い方・例文

「上の空」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「上の空」の類義語は?違いは?」を解説!/

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