この記事では「鬼の居ぬ間に洗濯」について解説する。

端的に言えば鬼の居ぬ間に洗濯の意味は「怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと」

ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。彼女の「鬼の居ぬ間に洗濯」は家族が出払った休日にパンケーキを焼いて、好きなだけ食べること。そんな彼女がことわざ「鬼の居ぬ間に洗濯」について解説する。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味は?

「鬼の居ぬ間に洗濯」には、次のような意味があります。

1.怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼の居ぬ間に洗濯」

「鬼監督」「鬼教官」等、「鬼〇〇」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。「鬼〇〇」という言葉はその対象となる人物が厳しい場合に用いられる表現ですね。例えば部活の鬼顧問が出張でいなかったとしましょう。その日の部活の時間は「先生、いない!」ということになり、部活の練習メニューは楽なものになったりしませんか。このような状況を「鬼の居ぬ間に洗濯」と言います。

ところで昔話に登場する鬼は大抵どこからかやってきて、村を荒らしますね。日本では「鬼は北東方向からやってくる」とされました。これは中国の思想の影響を受けたもので、北東方向は鬼門と呼ばれます。

平安時代には京の都に鬼等の悪しきものが入って来ないように鬼門封じとして比叡山延暦寺が建立されました。また、天皇が住まわれた御所を囲む塀の北東方向の角はわざとへこまされています。「鬼門の方向に何もなければ悪しきものは入ってくることはできない」という考えから、角が作られなかったのです。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の語源は?

次に「鬼の居ぬ間に洗濯」の語源を確認しておきましょう。

鬼は平安時代から日本人に恐れられてきました。この恐ろしい鬼によく例えらるのが「煙たい存在」「苦手な存在」で、職場の上司や怖い先生、気難しい目上の人といった人々です。

そして洗濯するものは衣服ではなく「いのちやこころ」。洗濯された衣類は気持ちが良いもの。「いのちやこころ」も同じことで、「洗濯」とは「気晴らし」というような意味です。このような考え方が「鬼の居ぬ間に洗濯」ということわざの由来となりました。

\次のページで「「鬼の居ぬ間に洗濯」の使い方・例文」を解説!/

「鬼の居ぬ間に洗濯」の使い方・例文

「鬼の居ぬ間に洗濯」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「今日はお母さんが留守だから、鬼の居ぬ間に洗濯…」血圧高めのお父さんはそう言ってインスタントラーメンを作り始めた。そして「お母さんには内緒だぞ」とぼくに言った。

2.明日から両親が旅行に出掛ける。二世帯同居で苦労している妻に「明日は家事も適当にして、昼寝でもすればいいよ。夜は出前をとろう。鬼の居ぬ間に洗濯だ」と私は言った。

3.海外出張していた嫌味な上司が明日戻ってくる。ビアガーデンで一杯やりながら、みんなで「鬼の居ぬ間に洗濯も今日までかぁ」と溜息をついた。

家庭の中で「鬼の居ぬ間に洗濯」の「鬼」に一番例えられるのはお母さんでしょう。家族に対して一番口うるさい存在がお母さん。なのでお母さんがいない日はグッと羽をのばそうとしますよね。しかし小言を言うのもエネルギーを使うもの。言わなくても良いならお母さんも楽です。でも多くのお母さんは楽をしません。そこにはお母さんの家族に対する想いがあるからです。

そしてお母さんは「嫁」でもあります。二世帯同居という家族形態をとる家は最近では少なくなりましたが、この二世帯同居の「嫁」という立場はなかなか大変。舅姑の顔色を全く見ないという訳にはいきません。そこでこの二人が旅行へでかけたりすると、まさに「鬼の居ぬ間に洗濯」となるのです。

「鬼の居ぬ間に洗濯」はずっと続く訳ではありません。「鬼」はやがて戻って来ます。「鬼」が戻って来る日が近づくと、溜息もでてしまいますね。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の類義語は?違いは?

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それでは「鬼の居ぬ間に洗濯」にはどのような類義語があるのかをみていきましょう。

「鬼の留守に豆拾い」

「鬼の留守に豆拾い」とは「鬼がいない間に鬼に投げつける豆を集める」という意味。「鬼がいるとできないことを、鬼がいない間にする」という意味での類義語ですね。豆は鬼退治のマストアイテム。これは平安時代に鞍馬山から出て来た鬼に豆を投げつけ退治したという伝説によるものです。

ところで鬼は豆の他にヒイラギのトゲとイワシの臭いも苦手。私の母が小さい頃、節分の夜には玄関にヒイラギの枝とイワシの干物を挿し、閉めた雨戸に家の中から小石を投げて音を出し、鬼を追い払ったそうです。嫌いなイワシの干物も怖い鬼が来ないようにと我慢して食べたそうですよ。

\次のページで「「鬼の居ぬ間に洗濯」の対義語は?」を解説!/

「鬼の居ぬ間に洗濯」の対義語は?

それでは続いて対義語をみていきましょう。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とは「虎の子供(価値のあるもの)は虎の巣穴に入らないと(危険をおかさないと)手に入れることはできない」という意味です。例えば織田信長は圧倒的に不利であったにも関わらず桶狭間の戦いで今川義元の本陣を襲撃し、勝利したことで支配を強めていきました。ハイリスク、ハイリターンということですね。

「虎の巣穴に入る」とは「自ら進んで恐ろしいものに向かって飛び込んでいく」ということ。「恐ろしいものがいなくなった間に」という「鬼の居ぬ間に洗濯」の対義語になりますね。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の英訳は?

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「鬼の居ぬ間に洗濯」を英語に直訳すると「Laundry while the demon is away」。「悪魔がいない間の洗濯」は確かに「鬼の居ぬ間に洗濯」という意味になりますが、これはただ日本語の単語を英語の単語に置き換えただけで、これではことわざとしての「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味が伝わりませんね。

英語にも日本語の「鬼の居ぬ間に洗濯」に当たる表現があります。それはどんな表現なのか…さあ、みてみましょう。

英文1.  He said ,"When the cat's away, the mice will play", and he was reading comics all the time while parents were out.

「鬼の居ぬ間に洗濯」と言って、両親が留守の間に彼はずっとマンガを読んでいた。

英文2.  You said ,"It is very important to refresh yourself while the devil is away in this company."

あなたは「この会社で鬼の居ぬ間に洗濯をすることはとても重要だ」と言った。

英文1「When the cat's away, the mice will play」は直訳すると「猫がいない時にネズミは遊ぶ」。アニメーション「トムとジェリー」でお馴染みのようにネコはネズミを追いかけますね。追いかけまわすネコがいない間、ネズミはやりたい放題。まさに「鬼の居ぬ間に洗濯」です。

英文2「to refresh yourself while the devil is away」「鬼の居ぬ間に洗濯」という意味になります。これは直訳すると「悪魔がいない間に息抜きをする」。この会社にはかなり厳しい上司がいるということがわかる文章ですね。

\次のページで「「鬼の居ぬ間に洗濯」を使いこなそう」を解説!/

「鬼の居ぬ間に洗濯」を使いこなそう

「鬼の居ぬ間に洗濯」は「怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと」という意味。類義語には「鬼の留守に豆拾い」、対義語には「虎穴に入らずんば虎子を得ず」、英語の表現としては「When the cat's away, the mice will play」、鬼が入ってくる方向を「鬼門」ということ等がわかりましたね。

ことわざや慣用句の多さからもわかるように、鬼は昔から私たちと深い関わりをもっています。この関わりの深さは自然に対する畏敬の念や私たち人間の心に潜む鬼の存在を示しているのかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【ことわざ】「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「鬼の居ぬ間に洗濯」について解説する。

端的に言えば鬼の居ぬ間に洗濯の意味は「怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと」

ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。彼女の「鬼の居ぬ間に洗濯」は家族が出払った休日にパンケーキを焼いて、好きなだけ食べること。そんな彼女がことわざ「鬼の居ぬ間に洗濯」について解説する。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味は?

「鬼の居ぬ間に洗濯」には、次のような意味があります。

1.怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鬼の居ぬ間に洗濯」

「鬼監督」「鬼教官」等、「鬼〇〇」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。「鬼〇〇」という言葉はその対象となる人物が厳しい場合に用いられる表現ですね。例えば部活の鬼顧問が出張でいなかったとしましょう。その日の部活の時間は「先生、いない!」ということになり、部活の練習メニューは楽なものになったりしませんか。このような状況を「鬼の居ぬ間に洗濯」と言います。

ところで昔話に登場する鬼は大抵どこからかやってきて、村を荒らしますね。日本では「鬼は北東方向からやってくる」とされました。これは中国の思想の影響を受けたもので、北東方向は鬼門と呼ばれます。

平安時代には京の都に鬼等の悪しきものが入って来ないように鬼門封じとして比叡山延暦寺が建立されました。また、天皇が住まわれた御所を囲む塀の北東方向の角はわざとへこまされています。「鬼門の方向に何もなければ悪しきものは入ってくることはできない」という考えから、角が作られなかったのです。

「鬼の居ぬ間に洗濯」の語源は?

次に「鬼の居ぬ間に洗濯」の語源を確認しておきましょう。

鬼は平安時代から日本人に恐れられてきました。この恐ろしい鬼によく例えらるのが「煙たい存在」「苦手な存在」で、職場の上司や怖い先生、気難しい目上の人といった人々です。

そして洗濯するものは衣服ではなく「いのちやこころ」。洗濯された衣類は気持ちが良いもの。「いのちやこころ」も同じことで、「洗濯」とは「気晴らし」というような意味です。このような考え方が「鬼の居ぬ間に洗濯」ということわざの由来となりました。

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