今回は「仏頂面」っていう言葉について見ていきます。この言葉は小説や漫画で見たことがあるかもしれませんね。

「仏」っていう文字がついているから良い意味で使うと思う奴がいるかもしれねえが、実はそうじゃねぇんです。仏様に関係があるのは確かなんだけどな。

じゃあ「仏頂面」はどんな意味なのでしょうか。関連語と一緒に、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「仏頂面」の意味・語源は?

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「仏頂面」は小説や漫画などでたまに目にする言葉だと思います。まずは、そのような「仏頂面」の意味や語源を、国語辞典を参照しつつ確認していきましょう。

「仏頂面」の意味は「不機嫌な顔」

「仏頂面」は、国語辞典には次のような意味が掲載されています。

《仏頂尊の恐ろしい面相にたとえたもの。また、一説に「不承面(ふしょうづら)」の転とも》不機嫌にふくれた顔つき。不平らしい顔つき。仏頂顔。「―をする」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ぶっちょう‐づら〔ブツチヤウ‐〕【仏頂面】」

「仏頂面」は「不機嫌な顔」という意味の単語です。「ぶっちょうめん」ではなく「ぶっちょうづら」と読みます。何かに怒っていたり、イライラしたりしているとき、少し怖い顔や、頬を膨らませて納得のいっていない顔つきをしてしまいますよね。それが「仏頂面」です。しかし、なぜそのような「不機嫌な顔」に対して「仏」の字を使うのか、やはり気になりますね。

仏様は穏やかな顔をしているような…

続いて、語源を解説します。皆さんがお寺で見る仏様は、どちらかというと穏やかな表情のものが多いですよね。実は、「仏頂面」の「仏頂」は「仏頂尊」という名前の仏様が由来です。この「仏頂尊」は、仏の頭の上に宿る功徳を仏様化したもので、そのお顔はやや不機嫌そうな恐い顔をしています。「仏頂尊」のような不機嫌な顔、という意味で「仏頂面」という言葉が誕生したと考えられているのです。

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語源は「不承面(ふしょうづら)」→「仏頂面」?

先ほどご紹介した”「仏頂尊」のような不機嫌な顔、という意味で「仏頂面」という言葉が誕生した”という語源以外にも、「仏頂面」にはいくつかの語源の説があります。

1つは「不承面(ふしょうづら)」という言葉が、徐々に発音が変化して「ぶっちょうづら」となり、「仏頂面」という漢字が当てられたという説です。日本語は長い歴史の中で発音が大きく変化してきているので、この節の可能性も十分に考えられるでしょう。

他には、”顔を膨らませた様子が仏様の頭頂の螺髪みたいだから"という説もあります。「螺髪」は「らはつ」と読み、仏様の髪型のことです。奈良の大仏を思い浮かべると分かりやすいですが、頭に小さな丸がたくさんついていて髪の毛のようになっていますよね。あれが「螺髪」です。

「仏頂面」の使い方は?どんな時に使う?

次に、「仏頂面」の使い方を例文とともに確認していきましょう。使える場合と、使えそうですが使えない場合の2つをご紹介します。「仏頂面」という言葉にはマイナスのニュアンスがあるということが前提です。

「仏頂面」はマイナスのニュアンス

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「仏頂面」は、怒っていたり不機嫌であったり、心の奥で悲しんでいたりと、マイナスのニュアンスで使われる言葉です。例文で確認してみましょう。

1.1歳の娘は今日が予防接種だったが、注射の後はずっと仏頂面で話しかけても反応しない。
2.ピンチの場面で西選手がエラー。北野監督はベンチで仏頂面である。
3.親友に裏切られ、悲しみの余り涙も出ず、仏頂面になってしまった。

1番の例文では、”注射を打った幼い子供がその後ずっと不機嫌な顔をしている”という意味で「仏頂面」が使用されています。幼い子供にとって、お出かけだと思っていたら病院に連れて行かれ、注射を打たれたら怒り心頭でしょう。このような怒って不機嫌になっている場合にも「仏頂面」は使用可能です。

2番の例文では、”野球の試合で選手がエラー。監督がそのエラーについて不満な顔をしている”という意味で「仏頂面」が使用されています。何かについて不満があり不機嫌になっている場合にも、「仏頂面」は使用可能です。

3番目の例文では、”親友に裏切られ、悲しみの余り無表情になってしまった”という意味で「仏頂面」が使用されています。マイナスの感情によって顔から表情が消えてしまう場合、ありますよね。そのような場合にも「仏頂面」は使用できます。

「不機嫌な顔」に見えても使えない時

では、「不機嫌な顔」に見えても、「仏頂面」が使用できない場合はどのような場合でしょうか。例文で確認してみましょう。

\次のページで「「仏頂面」の類義語・対義語は?」を解説!/

1.彼は仏頂面になって、明日の試験に向けた勉強や問題対策を一生懸命行っている。
2.彼女は仏頂面で、試合のイメージトレーニングを真剣に行っている。

人間は何かに真剣に取り組んでいるとき、その顔は外から見ると恐い顔や無表情のように感じてしまうことがあります。しかし、こちらは「真剣」というプラスのニュアンスであるため、マイナスのニュアンスが出る「仏頂面」は使用されません。プラスのニュアンスを出したい場合は、「真剣な眼差し」など、別の言葉を使用したほうがいいでしょう。

「仏頂面」の類義語・対義語は?

「仏頂面」の類義語や対義語にはどのようなものがあるでしょうか。「○○面」や「○○顔」のような顔を表す言葉が、どちらにも含まれています。それ以外の言葉も含めて確認していきましょう。

「しかめっ面」「ふくれっ面」…「仏頂面」の類義語

「仏頂面」の類義語には、「しかめっ面(つら)」「ふくれっ面(つら)」「苦虫を嚙み潰したような」があります。

しかめっ面」は「眉のあたりにしわをよせた、機嫌の悪そうな顔」という意味で、「ふくれっ面」は「頬を膨らませた不機嫌な顔つき」という意味です。眉と頬という違いはありますが、どちらも”不機嫌な顔つき”という点では共通していますね。

苦虫を嚙み潰したような」は「ひどく苦々しい不愉快そうな顔」という意味です。”噛んだら苦い虫を嚙み潰したときのような、とても不愉快そうな顔”というニュアンスを表します。噛んだら苦いと分かっている虫は絶対に噛みたくないですよね。虫ですし。それを噛み潰したときのような表情ということで、強い不愉快を表します

「えびす顔」「地蔵顔」…「仏頂面」の対義語

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「仏頂面」の対義語には、「えびす顔」「地蔵顔」「満悦」があります。

えびす顔」は「恵比寿のようにニコニコした顔」という意味です。「恵比寿(えびす)」とは七福神の1つで、目を細めて笑っている顔が特徴の神様ですね。ただ、恵比寿はふくよかな神様でもあるので、「えびす顔」を女性に対して使うのは避けられる傾向にあります。「地蔵顔」は「地蔵のように丸くてにこやかな顔」という意味です。お地蔵様は、確かに笑顔のイメージがありますよね。

満悦」は「心が満ち足りて喜ぶこと」という意味で、「満悦」という形で使用されることが多いです。「ご満悦の表情」といった場合は、満足して喜んでいる表情を表します。

\次のページで「「仏頂面」のニュアンスを理解して正しく使おう!」を解説!/

「仏頂面」のニュアンスを理解して正しく使おう!

今回は「仏頂面」について解説しました。「仏頂面」は「不機嫌な顔」という意味の単語で、仏頂尊という恐い表情をした仏様が語源と考えられている言葉です。そして、怒っている場合や不満を感じている場合、悲しんでいる場合など、マイナスのニュアンスで使われます。「仏頂面」になることが少ない日々を送りたいですね。

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国語言葉の意味

「仏頂面」ってどんな顔?仏様の顔だからと言って良い意味ではない?意味や関連語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

今回は「仏頂面」っていう言葉について見ていきます。この言葉は小説や漫画で見たことがあるかもしれませんね。

「仏」っていう文字がついているから良い意味で使うと思う奴がいるかもしれねえが、実はそうじゃねぇんです。仏様に関係があるのは確かなんだけどな。

じゃあ「仏頂面」はどんな意味なのでしょうか。関連語と一緒に、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「仏頂面」の意味・語源は?

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「仏頂面」は小説や漫画などでたまに目にする言葉だと思います。まずは、そのような「仏頂面」の意味や語源を、国語辞典を参照しつつ確認していきましょう。

「仏頂面」の意味は「不機嫌な顔」

「仏頂面」は、国語辞典には次のような意味が掲載されています。

《仏頂尊の恐ろしい面相にたとえたもの。また、一説に「不承面(ふしょうづら)」の転とも》不機嫌にふくれた顔つき。不平らしい顔つき。仏頂顔。「―をする」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ぶっちょう‐づら〔ブツチヤウ‐〕【仏頂面】」

「仏頂面」は「不機嫌な顔」という意味の単語です。「ぶっちょうめん」ではなく「ぶっちょうづら」と読みます。何かに怒っていたり、イライラしたりしているとき、少し怖い顔や、頬を膨らませて納得のいっていない顔つきをしてしまいますよね。それが「仏頂面」です。しかし、なぜそのような「不機嫌な顔」に対して「仏」の字を使うのか、やはり気になりますね。

仏様は穏やかな顔をしているような…

続いて、語源を解説します。皆さんがお寺で見る仏様は、どちらかというと穏やかな表情のものが多いですよね。実は、「仏頂面」の「仏頂」は「仏頂尊」という名前の仏様が由来です。この「仏頂尊」は、仏の頭の上に宿る功徳を仏様化したもので、そのお顔はやや不機嫌そうな恐い顔をしています。「仏頂尊」のような不機嫌な顔、という意味で「仏頂面」という言葉が誕生したと考えられているのです。

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