この記事では「打ちひしがれる」について解説する。

端的に言えば打ちひしがれるの意味は「気力を完全に失くす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「打ちひしがれる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「打ちひしがれる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「打ちひしがれる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「打ちひしがれる」の意味は?

「打ちひしがれる」は「打ちひしぐ」を受け身にした形。「打ちひしぐ」には、次のような意味があります。

1.《主に受身の形で用いる》精神的な衝撃などで気力を完全になくさせる。意気消沈させる。
2.武器などで相手をたたきのめす。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「打ちひしぐ」

「打ちひしぐ」が「気力を完全になくさせる」という意味であることから、「打ちひしがれる」は「気力を完全になくす」となります。現代では、「打ちひしがれる」と受け身の形で使うことが圧倒的に多いでしょう。

上の2は、物理的に攻撃をするという意味ですね。しかしその使い方も現代ではほぼ見ません。「打ちひしがれる」と受け身形の場合でも、「物理的にたたきのめされる」というよりは「精神的にたたきのめされる」という意味の方がしっくりきます。

古文、もしくは文語体で書かれていたころの作品には「打ちひしぐ」という使い方や「物理的に攻撃する」という意味でも登場することがありますよ。文脈から意味をとらえるようにしましょう。

「打ちひしがれる」の語源は?

次に「打ちひしがれる」の語源を確認しておきましょう。上でも述べたとおり、「打ちひしがれる」は「打ちひしぐ」の受け身の形。「打ちひしぐ」の「ひしぐ」は、「押しつけてつぶす」という意味です。「つぶすように打ちつける」または「つぶれるまで打つ」というのが「打ちひしぐ」という言葉のもともとの意味でしょう。

現代では、精神的なダメージを受けたときに使う言葉へと変化しました。「つぶれるほど打たれる」という非常に大きなダメージのニュアンスは残っていますね。

\次のページで「「打ちひしがれる」の使い方・例文」を解説!/

「打ちひしがれる」の使い方・例文

「打ちひしがれる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.大学受験では結果を出せたつもりだったが、模擬試験から競っていたライバルが東大に合格したと知り、敗北感に打ちひしがれた。
2.かつての恋人は起業していまや年商億の社長、起業なんて無理だと言っていた僕はごくごく一般的なサラリーマンのまま。現在の僕は喪失感に打ちひしがれ、彼女を応援できなかった自分の小ささを痛感している。
3.押しも押されもせぬエースと言われたあの選手は、大ケガをしたときは絶望に打ちひしがれていたが、いまは再起をかけて意欲に燃えているそうだ。

例文では、それぞれ「敗北感」「喪失感」「絶望」に「打ちひしがれて」います。精神的なダメージにより、完全に気力を失ってしまった様子が伝わるでしょうか。

例文のとおり、「○○に打ちひしがれる」という使い方をすることが多いです。この「○○」には「悲しみ」「ショック」「不幸」などが当てはまります。喜びをあらわす言葉には使わないので注意してくださいね。どんな衝撃的なことがらだったとしても「うれしさに打ちひしがれる」とは使いませんよ。

「兄は『やってはいけないミスをしてしまった』と打ちひしがれた。」のようにも使います。

「打ちひしがれる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「打ちひしがれる」の類義語には「打ちのめされる」があります。

「打ちのめされる」

「打ちのめされる」とは、完全に参ってしまうことです。精神的な苦痛をうける意味では「打ちひしがれる」と同じように使います。「悲しみに打ちのめされる」を「悲しみに打ちひしがれる」と入れ替えても、ほぼ同じ意味合いを表現できますね。

注意すべきは、「打ちのめされる」は良いことをあらわす表現としても使うことです。「感動に打ちのめされた」のように使います。「あまりの感動に参ってしまった」という意味ですね。これを「感動に打ちひしがれた」と言い換えることはできません。

ちなみに「打ちのめされる」は「打ちのめす」の受け身の形です。「打ちのめす」はもともと、物理的に叩いたりなぐったりしてやっつけることをあらわす表現。「打ちのめされる」も同じように使います。

\次のページで「「打ちひしがれる」の対義語は?」を解説!/

「打ちひしがれる」の対義語は?

「打ちひしがれる」にはっきりした対義語はありません。

「気力を完全に失くす」という意味に対し、「気力を失くさない」という意味から連想できる「プライドを持つ」を紹介します。

「プライドを持つ」

「プライドを持つ」は、誇りや自尊心を大切にするという意味です。辛い目にあって打ちひしがれることがあっても、心の中に小さなプライドの炎があれば、立ち上がることができるでしょう。

気力を失くしてしまう「打ちひしがれる」に対し、気力を燃やし立ち上がる「プライドを持つ」。逆のベクトルの言葉同士といえないでしょうか。

「打ちひしがれる」の英訳は?

image by iStockphoto

「打ちひしがれる」の英訳には「be overwhelmed by~」を使います。

「be overwhelmed by~」

「be overwhelmed by~」で、「~に打ちひしがれている」の意味をあらわすことができます。「overwhelmed」は形容詞なので、打ちひしがれた「状態」をあらわしますよ。「~に打ちひしがれた状態になる」を英訳するなら「become overwhelmed by~」となります。文脈によって適当な方を選びましょう。

「overwhelmed」の基本的な意味は「圧倒された」であり、「大きさに圧倒された」や「優しさに圧倒された」のようにポジティブなことにも使います。日本語の「打ちひしがれる」より、表現の幅が広い言葉といえますね。和訳するときには注意しましょう。

I was overwhelmed by hopelessness.
(私は絶望感に打ちひしがれた。)

\次のページで「「打ちひしがれる」を使いこなそう」を解説!/

「打ちひしがれる」を使いこなそう

この記事では「打ちひしがれる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「打ちひしがれる」は、気力を完全に失くすという意味です。「絶望に打ちひしがれる」「悲しみに打ちひしがれる」のように、多くは「○○に打ちひしがれる」のかたちで使います。喜びをあらわすときには使えないので注意しましょう。

物語の主人公が、何度打ちひしがれても立ち向かう姿には感動しますね。自分を勇気づけてくれるイチオシの作品、あなたは持っていますか?

" /> 「打ちひしがれる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「打ちひしがれる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「打ちひしがれる」について解説する。

端的に言えば打ちひしがれるの意味は「気力を完全に失くす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「打ちひしがれる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「打ちひしがれる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「打ちひしがれる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「打ちひしがれる」の意味は?

「打ちひしがれる」は「打ちひしぐ」を受け身にした形。「打ちひしぐ」には、次のような意味があります。

1.《主に受身の形で用いる》精神的な衝撃などで気力を完全になくさせる。意気消沈させる。
2.武器などで相手をたたきのめす。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「打ちひしぐ」

「打ちひしぐ」が「気力を完全になくさせる」という意味であることから、「打ちひしがれる」は「気力を完全になくす」となります。現代では、「打ちひしがれる」と受け身の形で使うことが圧倒的に多いでしょう。

上の2は、物理的に攻撃をするという意味ですね。しかしその使い方も現代ではほぼ見ません。「打ちひしがれる」と受け身形の場合でも、「物理的にたたきのめされる」というよりは「精神的にたたきのめされる」という意味の方がしっくりきます。

古文、もしくは文語体で書かれていたころの作品には「打ちひしぐ」という使い方や「物理的に攻撃する」という意味でも登場することがありますよ。文脈から意味をとらえるようにしましょう。

「打ちひしがれる」の語源は?

次に「打ちひしがれる」の語源を確認しておきましょう。上でも述べたとおり、「打ちひしがれる」は「打ちひしぐ」の受け身の形。「打ちひしぐ」の「ひしぐ」は、「押しつけてつぶす」という意味です。「つぶすように打ちつける」または「つぶれるまで打つ」というのが「打ちひしぐ」という言葉のもともとの意味でしょう。

現代では、精神的なダメージを受けたときに使う言葉へと変化しました。「つぶれるほど打たれる」という非常に大きなダメージのニュアンスは残っていますね。

\次のページで「「打ちひしがれる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: