
「皮切りに」は差別用語?

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桜木先生の言う通り、「皮切りに」と検索するとサジェストに『差別用語』などと出てくることがあります。字面だけをみれば『皮を切る』とはたしかに物騒な響きがありますが、その語源はお灸でしたね。なぜ『差別』などとヒットしてしまうのでしょうか。
同和問題と関係?
日本社会が形作られていく過程で生まれた身分制度に基礎を置く差別問題を、『同和問題(あるいは部落差別)』と言います。その起源は古代までさかのぼりますが、紆余曲折を経て江戸時代に強固な身分制度が確立されました。
そして幕府の存続のために、被差別階層の方々に民衆の不満が向くように巧妙な仕組みが施されます。この被差別階層の中には、屠殺(とさつ;家畜を処理すること)を生業とする(させられる)方も大勢いました。
この家畜処理の過程で、皮革製品のために皮を剥ぐ作業もあったようです。「皮切りに」という言葉がこの被差別階級の屠殺業と結び付けられて、差別用語と認識されてしまうこともあるのでしょう。しかし繰り返しになりますが、「皮切りに」の語源はお灸であり、差別とはなんの関係もありません。
ご注意!「皮切りに」は放送禁止用語
差別用語と誤認されうることが理由なのか、実は「皮切りに」は放送禁止用語の一つに数えられています。差別用語との誤解を恐れて「皮切りに」が放送禁止用語とされていることには疑問を感じる方も多いとは思いますが、そのように受け取られる可能性があることは、知っておいて損はないでしょう。『「皮切りに」は差別用語だよ』などと批判されても、胸を張って『違うよ』と言えるからです。
「皮切りに」を使いこなして粋になろう
この記事では「皮切りに」について、類義語や対義語などの付随的な事柄も含めて解説しました。
「皮切りに」はビジネスシーンなどで普通に聞く言葉です。その意味は字面から想像しにくいので、『知っていなければ使えない言葉』と言えるでしょう。教養を示すことや語感などから、「皮切りに」という表現に粋な雰囲気を感じるのは、筆者だけではないと思います。差別用語とのご認識による批判を恐れずに、使いこなしてみたい言葉ですね。
この記事が「皮切りに」の理解を深めて、みなさまの語彙力の一部に資すれば幸いです。