この記事では、「皮切りに」について解説する。
「皮切りに」はビジネス用語としてもよく聞く言葉です。なんとなく『最初に』って意味合いを、粋な感じで表現する方法だと俺は思っているが、実際はどうなんでしょうか。
今回は、話を切り出すときにあれこれ悩みすぎるライターであるぷーやんを呼んです。「皮切りに」の意味と使われ方について、説明してもらおう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。仕事の報告会やメールの書き出し、果ては日常の雑談ですら、なにを「皮切りに」するかいちいち逡巡する煮えきらない男。

「皮切りに」の意味から押さえよう!

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まずは「皮切りに」の意味から、辞書と例文で押さえていきましょう。

辞書にみる「皮切りに」

「皮切りに」を辞書で引くと、次のように書かれています。

1 《2が原義》物事のしはじめ。手始め。「話の―」
2 最初に据える灸 (きゅう) 。
「商売にはかへられず―こらへて出る心」〈浄・反魂香〉
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「皮切りに」

上記の1のニュアンスで、体験的に理解されている方が多いのではないでしょうか。筆者は『最初に据える灸』が原義であることが、とても意外でした。お灸と『皮膚を切る』ことが繋がらなかったためです。事実、お灸で皮膚を切ることはありません。最初に据えるお灸が、皮膚を切るような痛みをともなうことから、「手始め」のことを「皮切りに」と言うようになったようです。

「皮切りに」の使い方を例文でみてみよう!

辞書で「皮切りに」の意味を調べたあとは、例文で言葉としての使い方を確認してみましょう。

1.あの人の発言を皮切りに皆が意見を出し始め、ミーティングの場が大いに盛り上がった。
2.机の片付けと掃除をすることが、試験勉強の皮切りになった。
3.突撃の合図を皮切りに、捜査員が事件現場へなだれ込んだ。

いずれの例文でも、なにか大きな動きが出るきっかけとなることを、「皮切りに」と表現しています。例文2のように、勉強の前になんとなく部屋の掃除をした、という話はよく聞きますね。実はこの行動、嫌なことからの一種の逃避行動なのだそうです。ともあれ、つい部屋が汚れてしまいがちな方には、試験勉強の副次的ないい効果だと言えそうですね。

「皮切りに」の類義語には何がある?

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それでは「皮切りに」の類義語をご紹介していきます。

筆頭に:ある範疇で一番に挙げられるもの

戸籍で一番はじめに書かれている人を『筆頭者』と言ったり、企業の株の一番多い保有者を『筆頭株主』と言ったりしますね。このようにある集まりの中で最初にくるものを、「筆頭」と言います。

契機に:物事を始める手掛かり

「きっかけ」や「動機」と言い換えることもできる言葉です。なにかをはじめようと思ったとき、まっさらな状態から取り掛かるのは難しく、まごつくこともしばしばでしょう。そうしてくすぶっているときに契機を与えられると、一気に物事が進むものです。

端緒(たんしょ)として:糸口として

こちらも「きっかけ」と言い換えられる言葉です。読み方は「たんしょ」ですが、「たんちょ」も慣用読みとして定着しています。

「皮切りに」の対義語3選!

類義語の次は対義語をみていきましょう。

\次のページで「仕舞い:物事が終わること」を解説!/

仕舞い:物事が終わること

能の略式上演を「仕舞」と言い、能の上演終了後のアンコールで「仕舞」を舞ったことから、なにかが終わることを「お仕舞い」と言うようになったのだとか。「皮切りに」の「なにかが始まる」という意味と対義的ですね。

挙句の果て:最終的な結果

「いきついた結果」を意味する「挙句」を、さらに強調した表現です。物事が大きく動くきっかけである「皮切りに」に対して、その結果であるという意味において対義関係にあると言えるでしょう。

結尾(けつび):終わり

特に文章などの終わりを指す言葉ですね。『皮を切る』と『尾を結ぶ』という、体の一部を使うところが共通の、「皮切りに」に対義的な表現方法です。

「皮切りに」は英語ではなんという?

国際化が叫ばれて久しい昨今にあっては、日本語の英語訳が気になるという方も多いのではないでしょうか。そこで「皮切りに」の英語表現もご紹介します。

gateway

「入口」という意味の単語。これが転じて、「皮切りに」というニュアンスで使われることもあります。

start with

先に挙げた「gateway」よりも、直接的に「皮切りに」を英語訳した感じがしますね。ほかに和訳するとすれば、「○○を発端とする」や「○○から始まる」といったところでしょう。

\次のページで「「皮切りに」は差別用語?」を解説!/

「皮切りに」は差別用語?

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桜木先生の言う通り、「皮切りに」と検索するとサジェストに『差別用語』などと出てくることがあります。字面だけをみれば『皮を切る』とはたしかに物騒な響きがありますが、その語源はお灸でしたね。なぜ『差別』などとヒットしてしまうのでしょうか。

同和問題と関係?

日本社会が形作られていく過程で生まれた身分制度に基礎を置く差別問題を、『同和問題(あるいは部落差別)』と言います。その起源は古代までさかのぼりますが、紆余曲折を経て江戸時代に強固な身分制度が確立されました。

そして幕府の存続のために、被差別階層の方々に民衆の不満が向くように巧妙な仕組みが施されます。この被差別階層の中には、屠殺(とさつ;家畜を処理すること)を生業とする(させられる)方も大勢いました。

この家畜処理の過程で、皮革製品のために皮を剥ぐ作業もあったようです。「皮切りに」という言葉がこの被差別階級の屠殺業と結び付けられて、差別用語と認識されてしまうこともあるのでしょう。しかし繰り返しになりますが、「皮切りに」の語源はお灸であり、差別とはなんの関係もありません。

ご注意!「皮切りに」は放送禁止用語

差別用語と誤認されうることが理由なのか、実は「皮切りに」は放送禁止用語の一つに数えられています。差別用語との誤解を恐れて「皮切りに」が放送禁止用語とされていることには疑問を感じる方も多いとは思いますが、そのように受け取られる可能性があることは、知っておいて損はないでしょう。『「皮切りに」は差別用語だよ』などと批判されても、胸を張って『違うよ』と言えるからです。

「皮切りに」を使いこなして粋になろう

この記事では「皮切りに」について、類義語や対義語などの付随的な事柄も含めて解説しました。

「皮切りに」はビジネスシーンなどで普通に聞く言葉です。その意味は字面から想像しにくいので、『知っていなければ使えない言葉』と言えるでしょう。教養を示すことや語感などから、「皮切りに」という表現に粋な雰囲気を感じるのは、筆者だけではないと思います。差別用語とのご認識による批判を恐れずに、使いこなしてみたい言葉ですね。

この記事が「皮切りに」の理解を深めて、みなさまの語彙力の一部に資すれば幸いです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
" /> ビジネスで頻出?「皮切りに」の意味・例文・類語・英語・言い換え表現をwebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

ビジネスで頻出?「皮切りに」の意味・例文・類語・英語・言い換え表現をwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「皮切りに」について解説する。
「皮切りに」はビジネス用語としてもよく聞く言葉です。なんとなく『最初に』って意味合いを、粋な感じで表現する方法だと俺は思っているが、実際はどうなんでしょうか。
今回は、話を切り出すときにあれこれ悩みすぎるライターであるぷーやんを呼んです。「皮切りに」の意味と使われ方について、説明してもらおう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。仕事の報告会やメールの書き出し、果ては日常の雑談ですら、なにを「皮切りに」するかいちいち逡巡する煮えきらない男。

「皮切りに」の意味から押さえよう!

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まずは「皮切りに」の意味から、辞書と例文で押さえていきましょう。

辞書にみる「皮切りに」

「皮切りに」を辞書で引くと、次のように書かれています。

1 《2が原義》物事のしはじめ。手始め。「話の―」
2 最初に据える灸 (きゅう) 。
「商売にはかへられず―こらへて出る心」〈浄・反魂香〉
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「皮切りに」

上記の1のニュアンスで、体験的に理解されている方が多いのではないでしょうか。筆者は『最初に据える灸』が原義であることが、とても意外でした。お灸と『皮膚を切る』ことが繋がらなかったためです。事実、お灸で皮膚を切ることはありません。最初に据えるお灸が、皮膚を切るような痛みをともなうことから、「手始め」のことを「皮切りに」と言うようになったようです。

「皮切りに」の使い方を例文でみてみよう!

辞書で「皮切りに」の意味を調べたあとは、例文で言葉としての使い方を確認してみましょう。

1.あの人の発言を皮切りに皆が意見を出し始め、ミーティングの場が大いに盛り上がった。
2.机の片付けと掃除をすることが、試験勉強の皮切りになった。
3.突撃の合図を皮切りに、捜査員が事件現場へなだれ込んだ。

いずれの例文でも、なにか大きな動きが出るきっかけとなることを、「皮切りに」と表現しています。例文2のように、勉強の前になんとなく部屋の掃除をした、という話はよく聞きますね。実はこの行動、嫌なことからの一種の逃避行動なのだそうです。ともあれ、つい部屋が汚れてしまいがちな方には、試験勉強の副次的ないい効果だと言えそうですね。

「皮切りに」の類義語には何がある?

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それでは「皮切りに」の類義語をご紹介していきます。

筆頭に:ある範疇で一番に挙げられるもの

戸籍で一番はじめに書かれている人を『筆頭者』と言ったり、企業の株の一番多い保有者を『筆頭株主』と言ったりしますね。このようにある集まりの中で最初にくるものを、「筆頭」と言います。

契機に:物事を始める手掛かり

「きっかけ」や「動機」と言い換えることもできる言葉です。なにかをはじめようと思ったとき、まっさらな状態から取り掛かるのは難しく、まごつくこともしばしばでしょう。そうしてくすぶっているときに契機を与えられると、一気に物事が進むものです。

端緒(たんしょ)として:糸口として

こちらも「きっかけ」と言い換えられる言葉です。読み方は「たんしょ」ですが、「たんちょ」も慣用読みとして定着しています。

「皮切りに」の対義語3選!

類義語の次は対義語をみていきましょう。

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