この記事では「凌ぐ」について解説する。「凌ぐ」は意味合い的にも利便性が高く、日常に即していて使いやすい。それに伴って知名度も高いが、実は意味の種類が多く、正確に「凌ぐ」について把握しきっている奴は意外に少ないぞ。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「凌ぐ」の意味や使い方、注意点などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「凌ぐ」の意味とは?

image by iStockphoto

「凌ぐ」の意味は以下の通りです。

1 押し分けて前に進む。乗り越えて進む。
2 困難や苦境などにじっと堪えて、なんとか切り抜ける。辛抱して乗り越える。また、防いで、堪え忍ぶ。
3 人を侮る。
4 能力・程度などが他のものを追い抜いて上に出る。他よりまさる。
5 押し伏せる。おおいかぶさる。

出典:goo路線「凌ぐ 意味」

意味の種類の数がそもそも多いという印象を抱く人も、少なくないでしょう。言葉には1種類の意味しか持たないものも多くある中、「凌ぐ」は実に5つもの意味を持っています。そのため、読み書きの際はどの意味合いで使用されているのかの確認が必要な場合も多いです。

「凌ぐ」の読み方は?部首は何?

「凌ぐ」は「しのぐ」と読みます。しばしば勘違いされますが、激しく争うことを示す言葉である「しのぎを削る」とは関連がありません。「しのぎを削る」の「しのぎ」とは「鎬」という漢字を用いており、そもそも言葉の意味合いからして異なります。混同しないよう注意してください。

部首は「にすい」です。水を表す部首で有名なのは「さんずい」ですが、その「さんずい」から真ん中の点を取ったものが「にすい」になります。まれに「さんずい」と思い込み、誤って覚えている人もいますので、区別してください。

\次のページで「「凌ぐ」ってどうやって使うの?」を解説!/

「凌ぐ」ってどうやって使うの?

「凌ぐ」は以下のように使用します。

1.鬱蒼とした森では、木の葉や木の枝などを「凌いで」進まなければならない。
2.近年、わが社は競合他社に比べて競争力が落ちているが、なんとか「凌が」なければならない。
3.彼女には新人を「凌ぐ」悪癖がある。なんとかしてやめさせなければ。
4.ライバルを「凌ぐ」ような圧倒的な能力は、身に着けようと思ってできるものじゃない。
5.雪が屋根を「凌ぐ」ように積もっている。

上記の5つの例文は、意味の引用の番号と連動しています。「凌ぐ」は文脈や内容により、どの意味で使用されているのか迷うケースも多いです。知識を元に推測することも大切ですが、確認が取れる状況であれば使用者に確認を取ることも、「凌ぐ」のように意味の多い言葉に対しては重要になります。

「凌ぐ」の詳細な意味を覚えよう!

image by iStockphoto

「凌ぐ」は言葉の意味が多く、さらりと軽く辞書を読んだだけでは学習として不十分な場合が多いです。本記事ではひとつひとつの意味を詳細に解説していきますので、この機会に頭に入れてください。

物理的に障害を乗り越える「凌ぐ」

「凌ぐ」には押し分けて進む、障害を乗り越えるという意味があります。この場合は物理的な障害であり、進むにあたって邪魔なものを押し分けるイメージで捉えましょう。「凌ぐ」には物事に耐えるという意味もありますが、どちらの意味で取るかにより状況が変化します。

たとえば同じ「草木を凌ぐ」という文章でも、障害を乗り越えるという意味であれば、自分が草木を押し分けて進んでいるという意味です。しかし耐えるという意味では、風などに乗って自分に向かってくる草木に耐えているイメージになります。

\次のページで「比較的知名度が高い?耐え忍ぶ「凌ぐ」」を解説!/

比較的知名度が高い?耐え忍ぶ「凌ぐ」

「凌ぐ」には精神的な障害を耐え忍び、乗り越えるという意味もあります。ゲームや競争など争う相手が居る場面で、「この攻撃を凌げば~」などと使用されている場合は、この意味です。比較的使用される機会も多く、知っている人も多いでしょう。

積極的に相手と戦いに行くというよりは、過酷なピンチであるにも関わらず反撃手段がなく、我慢するしかない状況の際に使われます。相手と対等に渡り合えている場合は「凌ぐ」はやや不適切になりますので、注意してください。「雨風を凌ぐ」など自然の脅威に対して切り抜ける際にも使用します。

また、聞こえ方の問題で「凌ぐ」ではなく「忍ぶ」と取り違えられやすい言葉という側面も。「忍ぶ」という言葉も耐える様子の表現に使用されるため、意味合い的にも音的にも二重に被っています。注意してください。

なかなか使わない?「凌ぐ」で侮るという意味にも

「凌ぐ」は人を侮るという意味にも使用される言葉です。たとえば、「人を凌いだような態度」とは「人を侮ったような態度」という意味になります。「侮る」という単語と同様の使い方で問題ありません。

しかし知名度はやや低めになります。というのも、「侮る」と同じ使い方ということもあり、わざわざ「侮る」でなく「凌ぐ」を使用するケースというのはごく限られているからです。伝わりやすさという意味では、やや劣ると言わざるを得ません。

他の人の上を行く?「凌ぐ」

「凌ぐ」には他の人に実力で勝るという意味もあり、「彼の才能を凌ぐ」などという風に使用します。これも比較的知名度が高く、知っている人も多いでしょう。非常に近い類義語で「凌駕(りょうが)」という単語も。「才能を凌駕する」などという使用法であり、「凌」という漢字が共通しているのがわかります。

ニュアンスとしては力量が明らかに上回っているケースが多く、ぎりぎり上になっている程度の力関係の場合は他の言葉が使用されるケースが多いです。

紛らわしい?おおいかぶさる「凌ぐ」

「凌ぐ」にはおおいかぶさるという意味もありますが、これは非常に紛らわしい意味合いです。たとえば「雪がテントを凌ぐ」というと、「雪がテントにおおいかぶさる」という意味合いに変換して受け取らなければなりません。しかし「おおいかぶさるという意味もあるのだ」と知らない人が相手である場合、「テントを用いて雪の危険に耐えた」という意味だと受け取られる場合があります。

まとめると、正しいが間違われやすいという表現にカテゴライズされるため、使用する際は誤解を招かない文脈にするよう、注意が必要です。

間違いが多発する「凌ぐ」について

「凌ぐ」は意味が多い言葉です。見ようによってはそれだけ使う場面が多いとも言えますが、言い換えると同じ言葉でも、それだけ意味のバリエーションがある言葉とも言えます。人間の習性ともいえることですが、知らないものを見聞きした際は、咄嗟に自分の知っているものに変換したり、相手が間違っているとみなすものです。

「凌ぐ」はそういう扱いをされることが多い言葉であり、「攻撃を凌ぐ」というと「攻撃を忍ぶの間違いだな」と思われるなどのケースが多発します。しかも、実際には本当に間違いであるケースも混じるため、余計に混乱を招いてしまうのです。文章や文脈だけに囚われず、目の前の相手に「これはこういう意味で合っていますか?」と聞く力も試されるのが、「凌ぐ」なのかもしれません。

" /> 意味が多くて混乱しがち!「凌ぐ」の意味や使い方・注意点などを言葉大好きライターがわかりやすく解説! – ページ 3 – Study-Z
国語言葉の意味

意味が多くて混乱しがち!「凌ぐ」の意味や使い方・注意点などを言葉大好きライターがわかりやすく解説!

比較的知名度が高い?耐え忍ぶ「凌ぐ」

「凌ぐ」には精神的な障害を耐え忍び、乗り越えるという意味もあります。ゲームや競争など争う相手が居る場面で、「この攻撃を凌げば~」などと使用されている場合は、この意味です。比較的使用される機会も多く、知っている人も多いでしょう。

積極的に相手と戦いに行くというよりは、過酷なピンチであるにも関わらず反撃手段がなく、我慢するしかない状況の際に使われます。相手と対等に渡り合えている場合は「凌ぐ」はやや不適切になりますので、注意してください。「雨風を凌ぐ」など自然の脅威に対して切り抜ける際にも使用します。

また、聞こえ方の問題で「凌ぐ」ではなく「忍ぶ」と取り違えられやすい言葉という側面も。「忍ぶ」という言葉も耐える様子の表現に使用されるため、意味合い的にも音的にも二重に被っています。注意してください。

なかなか使わない?「凌ぐ」で侮るという意味にも

「凌ぐ」は人を侮るという意味にも使用される言葉です。たとえば、「人を凌いだような態度」とは「人を侮ったような態度」という意味になります。「侮る」という単語と同様の使い方で問題ありません。

しかし知名度はやや低めになります。というのも、「侮る」と同じ使い方ということもあり、わざわざ「侮る」でなく「凌ぐ」を使用するケースというのはごく限られているからです。伝わりやすさという意味では、やや劣ると言わざるを得ません。

他の人の上を行く?「凌ぐ」

「凌ぐ」には他の人に実力で勝るという意味もあり、「彼の才能を凌ぐ」などという風に使用します。これも比較的知名度が高く、知っている人も多いでしょう。非常に近い類義語で「凌駕(りょうが)」という単語も。「才能を凌駕する」などという使用法であり、「凌」という漢字が共通しているのがわかります。

ニュアンスとしては力量が明らかに上回っているケースが多く、ぎりぎり上になっている程度の力関係の場合は他の言葉が使用されるケースが多いです。

紛らわしい?おおいかぶさる「凌ぐ」

「凌ぐ」にはおおいかぶさるという意味もありますが、これは非常に紛らわしい意味合いです。たとえば「雪がテントを凌ぐ」というと、「雪がテントにおおいかぶさる」という意味合いに変換して受け取らなければなりません。しかし「おおいかぶさるという意味もあるのだ」と知らない人が相手である場合、「テントを用いて雪の危険に耐えた」という意味だと受け取られる場合があります。

まとめると、正しいが間違われやすいという表現にカテゴライズされるため、使用する際は誤解を招かない文脈にするよう、注意が必要です。

間違いが多発する「凌ぐ」について

「凌ぐ」は意味が多い言葉です。見ようによってはそれだけ使う場面が多いとも言えますが、言い換えると同じ言葉でも、それだけ意味のバリエーションがある言葉とも言えます。人間の習性ともいえることですが、知らないものを見聞きした際は、咄嗟に自分の知っているものに変換したり、相手が間違っているとみなすものです。

「凌ぐ」はそういう扱いをされることが多い言葉であり、「攻撃を凌ぐ」というと「攻撃を忍ぶの間違いだな」と思われるなどのケースが多発します。しかも、実際には本当に間違いであるケースも混じるため、余計に混乱を招いてしまうのです。文章や文脈だけに囚われず、目の前の相手に「これはこういう意味で合っていますか?」と聞く力も試されるのが、「凌ぐ」なのかもしれません。

1 2 3
Share: