比較的知名度が高い?耐え忍ぶ「凌ぐ」
「凌ぐ」には精神的な障害を耐え忍び、乗り越えるという意味もあります。ゲームや競争など争う相手が居る場面で、「この攻撃を凌げば~」などと使用されている場合は、この意味です。比較的使用される機会も多く、知っている人も多いでしょう。
積極的に相手と戦いに行くというよりは、過酷なピンチであるにも関わらず反撃手段がなく、我慢するしかない状況の際に使われます。相手と対等に渡り合えている場合は「凌ぐ」はやや不適切になりますので、注意してください。「雨風を凌ぐ」など自然の脅威に対して切り抜ける際にも使用します。
また、聞こえ方の問題で「凌ぐ」ではなく「忍ぶ」と取り違えられやすい言葉という側面も。「忍ぶ」という言葉も耐える様子の表現に使用されるため、意味合い的にも音的にも二重に被っています。注意してください。
なかなか使わない?「凌ぐ」で侮るという意味にも
「凌ぐ」は人を侮るという意味にも使用される言葉です。たとえば、「人を凌いだような態度」とは「人を侮ったような態度」という意味になります。「侮る」という単語と同様の使い方で問題ありません。
しかし知名度はやや低めになります。というのも、「侮る」と同じ使い方ということもあり、わざわざ「侮る」でなく「凌ぐ」を使用するケースというのはごく限られているからです。伝わりやすさという意味では、やや劣ると言わざるを得ません。
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他の人の上を行く?「凌ぐ」
「凌ぐ」には他の人に実力で勝るという意味もあり、「彼の才能を凌ぐ」などという風に使用します。これも比較的知名度が高く、知っている人も多いでしょう。非常に近い類義語で「凌駕(りょうが)」という単語も。「才能を凌駕する」などという使用法であり、「凌」という漢字が共通しているのがわかります。
ニュアンスとしては力量が明らかに上回っているケースが多く、ぎりぎり上になっている程度の力関係の場合は他の言葉が使用されるケースが多いです。
紛らわしい?おおいかぶさる「凌ぐ」
「凌ぐ」にはおおいかぶさるという意味もありますが、これは非常に紛らわしい意味合いです。たとえば「雪がテントを凌ぐ」というと、「雪がテントにおおいかぶさる」という意味合いに変換して受け取らなければなりません。しかし「おおいかぶさるという意味もあるのだ」と知らない人が相手である場合、「テントを用いて雪の危険に耐えた」という意味だと受け取られる場合があります。
まとめると、正しいが間違われやすいという表現にカテゴライズされるため、使用する際は誤解を招かない文脈にするよう、注意が必要です。
間違いが多発する「凌ぐ」について
「凌ぐ」は意味が多い言葉です。見ようによってはそれだけ使う場面が多いとも言えますが、言い換えると同じ言葉でも、それだけ意味のバリエーションがある言葉とも言えます。人間の習性ともいえることですが、知らないものを見聞きした際は、咄嗟に自分の知っているものに変換したり、相手が間違っているとみなすものです。
「凌ぐ」はそういう扱いをされることが多い言葉であり、「攻撃を凌ぐ」というと「攻撃を忍ぶの間違いだな」と思われるなどのケースが多発します。しかも、実際には本当に間違いであるケースも混じるため、余計に混乱を招いてしまうのです。文章や文脈だけに囚われず、目の前の相手に「これはこういう意味で合っていますか?」と聞く力も試されるのが、「凌ぐ」なのかもしれません。