この記事では「割を食う」について解説する。
端的に言えば、割を食うの意味は「損をする」です。ネガティブなニュアンスの言葉だということは知っているでしょうが、シーンに応じて正しく使いこなしているか?
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「割を食う」の意味をチェックし、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「割を食う」の意味と使い方

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「割を食う」は「わりをくう」と読みます。「割」も「食う」もさほど難しい漢字ではありませんが、「割を食う」の場合はどのような意味合いで使われているのでしょうか。さっそく「割を食う」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「割を食う」の意味

まずは辞書で「割を食う」の意味をチェックしましょう。

損をする。自分のほうに不利となる。

出典:デジタル大辞典(小学館)「割を食う」

「割」という言葉には「割り当て」という意味があり、「割り当て」には「分担させる」「配分する」ことから転じて「任務」「分配金」などの意味があります。振り分けられた分配金などが得な場合は「割がいい」「割に合う」といい、損な場合は「割が悪い」「割に合わない」といいますよ。

また、「食う」は食べること以外に多くの意味を持っており、「他から、ある行為、特に望ましくない行為を受ける」という意味があるのです。「大目玉を食う」「肩透かしを食う」などといいますね。

「割を食う」は、たいへんな任務を割り当てられたり、分配金が少ししか分けてもらえなかったりして「損をする」「自分のほうが不利になる」という意味です。「まわりの状況やその変化のせいで思わぬ影響を受け、割りの合わない目にあう」というニュアンスで使われることが多いですね。

「割を食う」の例文

次は「割を食う」の例文で使い方を見ていきましょう。

1.彼女は成績もルックスも決して悪くはないのに、学年トップで町を歩けばスカウトされるという姉といつも比べられて割を食っている。
2.新卒で入社した頃は年功序列で給料があまり上がらず、やっと中高年になったと思ったら50代なかばで給料がカットされるようになった。自分の年代が一番割を食っていると思う。
3.弟は病弱で入退院を繰り返していたので、母はいつも弟につきっきりだった。母に甘えたり家族旅行に行ったりすることができず、幼い私は割を食っていると思っていた。

\次のページで「「割を食う」の類義語」を解説!/

最初の例文は、優秀で目立つ姉のせいでいつも損をしているという意味です。2番目の例文は、若い頃は年功序列で給料が抑えられていたのに、中高年になったら中高年の給料がカットされるようになったという意味ですよ。時代の変化のせいで不利益を被ったという嘆きですね。3番目の例文は、本来できるはずの、親に甘えることや家族旅行に行くことができず、がまんを強いられたという意味です。

「割を食う」の類義語

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「割を食う」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「馬鹿を見る」:つまらない目にあう

「馬鹿」には「つまらないこと」「無益なこと」という意味があります。「馬鹿を見る」「つまらない目にあう」「ばかばかしい思いをする」「不利益を被ったり、損な立場になったりする」という意味です。悪賢い者がうまく立ち回って得をするのに対して、世の中が乱れて正しいことが通らず、正直な者が損をすることを「正直者が馬鹿を見る」といいます。

「不利益を被(こうむ)る」:損をする

「不利益」は「利益にならないこと」「損になること」という意味です。「被る」は「かぶる」と読むときもありますが、ここでは「こうむる」と読みます。「他人から恩恵を受ける」という良い意味もある言葉ですが、ここでは「災いなどを身に受ける」という悪い意味で使っていますね。「不利益を被る」「損をする」という意味です。

「しわ寄せがくる」:不利益が別の人に及ぶ

「しわ寄せ」とは「物事のうまくいかない点を他の部分に押しつけること」。「しわ寄せがくる」「物事がうまくいかずに生じた不利益が当事者でない別の人に及ぶこと」「他に起因する厄介ごとを背負うはめになる」という意味です。

\次のページで「「割を食う」の反対語」を解説!/

「割を食う」の反対語

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「割を食う」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「漁夫(ぎょふ)の利(り)」:第三者が利益を横取り

「漁夫」とは漁師のこと。ハマグリとシギが争っているのを見て、漁師が両方を捕まえたという中国の『戦国策』の故事が語源です。「漁夫の利」「両者の争いにつけ込んで、第三者が苦労せずに利益を横取りする」という意味ですよ。

「旨(うま)みがある」:利益が多い

「旨み」は「食べ物のおいしさ」や「だしの味」という意味もありますが、「仕事や商売で利益やもうけが多い」という意味があります。「旨みがある」「仕事や商売の利益やもうけが多くおもしろみがある」という意味。「実入りのよい」「利幅が大きい」と同じような意味合いです。

「割を食う」の英訳

英語では「割を食う」をどのように表現するのでしょうか。

「be to one’s disadvantage」:不利になる

「be to one’s disadvantage」「不利になる」という意味です。

The rumor worked to her disadvantage. 
うわさは彼女に不利に働いた。

\次のページで「「get the short end of the stick」:貧乏くじを引く」を解説!/

「advantage」は「有利」「強み」という意味で、否定や反対を意味する接頭辞「dis」がついた「disadvantage」は「不利」「不都合」という意味ですね。

「get the short end of the stick」:貧乏くじを引く

「get the short end of the stick」「貧乏くじを引く」「割を食う」という意味です。

He got the short end of the stick.
彼は貧乏くじを引いた。

「the short end of the stick」「損な役割」「貧乏くじ」という意味の成句です。「the dirty end of the stick」「the thick end of the stick」も同じ意味ですよ。

「割を食う」を使いこなそう!

この記事では、「割を食う」の意味を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

 「割を食う」「損をする」「自分のほうが不利になる」という意味です。「まわりの状況やその変化のせいで思わぬ影響を受け、割りの合わない目にあう」というニュアンスで使われることが多いですね。できれば「割を食う」ことは避けたいもの。使いこなすのは文書の中だけにしておきたいものです。

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国語言葉の意味

「割を食う」の「割」と「食う」って何?意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「割を食う」について解説する。
端的に言えば、割を食うの意味は「損をする」です。ネガティブなニュアンスの言葉だということは知っているでしょうが、シーンに応じて正しく使いこなしているか?
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「割を食う」の意味をチェックし、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「割を食う」の意味と使い方

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「割を食う」は「わりをくう」と読みます。「割」も「食う」もさほど難しい漢字ではありませんが、「割を食う」の場合はどのような意味合いで使われているのでしょうか。さっそく「割を食う」の意味を確認し、例文で使い方を見ていきましょう。

「割を食う」の意味

まずは辞書で「割を食う」の意味をチェックしましょう。

損をする。自分のほうに不利となる。

出典:デジタル大辞典(小学館)「割を食う」

「割」という言葉には「割り当て」という意味があり、「割り当て」には「分担させる」「配分する」ことから転じて「任務」「分配金」などの意味があります。振り分けられた分配金などが得な場合は「割がいい」「割に合う」といい、損な場合は「割が悪い」「割に合わない」といいますよ。

また、「食う」は食べること以外に多くの意味を持っており、「他から、ある行為、特に望ましくない行為を受ける」という意味があるのです。「大目玉を食う」「肩透かしを食う」などといいますね。

「割を食う」は、たいへんな任務を割り当てられたり、分配金が少ししか分けてもらえなかったりして「損をする」「自分のほうが不利になる」という意味です。「まわりの状況やその変化のせいで思わぬ影響を受け、割りの合わない目にあう」というニュアンスで使われることが多いですね。

「割を食う」の例文

次は「割を食う」の例文で使い方を見ていきましょう。

1.彼女は成績もルックスも決して悪くはないのに、学年トップで町を歩けばスカウトされるという姉といつも比べられて割を食っている。
2.新卒で入社した頃は年功序列で給料があまり上がらず、やっと中高年になったと思ったら50代なかばで給料がカットされるようになった。自分の年代が一番割を食っていると思う。
3.弟は病弱で入退院を繰り返していたので、母はいつも弟につきっきりだった。母に甘えたり家族旅行に行ったりすることができず、幼い私は割を食っていると思っていた。

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