何か失敗をしてしまったときに、「同じ轍を踏むな!」と注意されたり怒られたりしたことがある人、いるんじゃないか?「何となく意味は分かるけど、本当はどういう意味だっけ?」という人が多いかもしれませんね。

この「同じ轍を踏む」は、簡潔に言えば「前の人と同じ失敗をする」という意味です。

今回は「同じ轍を踏む」の意味・語源や使い方、類義語などを、院卒日本語教師の"むかいひろき"に解説してもらうぞ。もちろん「轍」についても解説する。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「同じ轍を踏む」の意味や語源は?

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「同じ轍を踏む(おなじてつをふむ)」という言葉、怒られたり注意されたりしたときに、上司や先生から聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、正確な意味についてや、「轍(てつ)」って何だ?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。まずは、その「同じ轍を踏む」の意味と語源を見ていきましょう。

「同じ轍を踏む」の意味は「前の人と同じ失敗をする」

最初に、「同じ轍を踏む」の辞書での意味を確認していきましょう。国語辞典では「同じ轍を踏む」ではなく、「轍を踏む」で掲載されている場合が多いです。自身が利用している国語辞典も、「轍を踏む」の形で掲載されていました。では、その「轍を踏む」の意味を見ていきましょう。

前人と同じ失敗をする。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆轍を踏(ふ)・む」

「同じ轍を踏む」は「前の人や先人と同じ失敗をする」という意味の慣用句です。「俺と同じ轍を踏むなよ」「戦前の日本と同じ轍を踏むな」といったように、「踏むな」という禁止の形で、戒めや注意を行う場面で使用されることが多いですね。

「前車の轍を踏む」「前者の覆轍(ふくてつ)を踏む」という似たような言葉を使った慣用句がありますが、これらも「同じ轍を踏む」と同じ意味になります。

「同じ轍を踏む」の語源は?

続いて、「同じ轍を踏む」の語源を確認していきましょう。

「同じ轍を踏む」の「轍(てつ)」は、「わだち」とも読みます。この「轍(わだち)」は「車輪の跡」という意味です。昔に使用されていた馬車や牛車といった動物が動力の車や、荷車などの人が動力の車は、前に道を通った車の「轍」に沿って進むことで安定して進むことができます。しかし、転倒した車の「轍」をたどって進めば、後から来た車も転倒してしまうでしょう。このことから、「前の人と同じ失敗をする」という意味で、「同じ轍を踏む」という言葉が使用されるようになりました

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「同じ轍を踏む」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「同じ轍を踏む」の使い方を例文とともに確認していきましょう。戒めや注意を行う際に使用されることが多いですが、それ以外でも使用されることがあります。

1.俺と同じ轍を踏むんじゃねぇぞ。お金の管理だけはしっかりやっておけ。そして絶対に闇金から金は借りるな。
2.前回の商談で田中はリサーチ不足で先方の不興を買った。お前たちは同じ轍を踏むなよ。
3.日本が太平洋戦争の時と同じ轍を踏むことは、ないと信じたい。

例文1はおそらく親子の会話でしょう。親がお金の管理を杜撰に行い、闇金融にまで手を出してしまったことで大変な状況になりました。そのような事態に子どもが陥らないよう、「俺の失敗を繰り返すな」という意味で「同じ轍を踏む」が使用されています。

例文2は、会社での会話ですね。前回の商談時に田中さんが事前のリサーチ不足で失敗しました。「田中のようにリサーチ不足で失敗しないよう、事前にしっかりリサーチしろよ」という意味で「同じ轍を踏む」が使用されています。

例文3は、戒めや注意ではない場合の例です。日本の先人たちは太平洋戦争へと舵を切り、多くの日本人や日本が侵攻した国の人々がなくなりました。「日本が再び戦争という悲劇を起こすことがないと信じたい」という文脈で「同じ轍を踏む」が使用されています。

「同じ轍を踏む」の類義語は?

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次に、「同じ轍を踏む」の類義語を確認しましょう。「同じ轍を踏む」の類義語は「二の舞を演じる」です。こちらもよく聞く言葉ではありますね。意味や「同じ轍を踏む」と異なる点を確かめていきましょう。

「二の舞を演じる」前の人や前回と同じ失敗をする

「二の舞を演じる」は、「他人がしたのと同じような失敗を繰り返すこと」という意味の慣用句です。舞楽では「安摩の舞」の次に、それを真似た滑稽な舞を舞います。このことから「人の真似をする」という意味で用いられるようになり、「他人がしたのと同じような失敗を繰り返すこと」という意味に広がっていきました。

「他人がしたのと同じような失敗を繰り返すこと」という意味では、「同じ轍を踏む」と違いはありません。ただ、現在でも「人の真似をする」という意味で使用されることが、稀にですがあります。

なお、「二の舞を踏む」という言葉が予測変換にも出てきますが、「二の舞を踏む」は「二の舞を演じる」の誤用です。使用しないように気をつけましょう。

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「同じ轍を踏む」の英語表現は?

次に、「同じ轍を踏む」の英語表現について見ていきましょう。「同じ轍を踏む」の英語表現は「make the same mistake as ○○」です。意味や日本語との比較を確認していきましょう。

「make the same mistake as ○○」

「make the same mistake as ○○」は、直訳すると「○○と同じ失敗をする」となります。「同じ轍を踏む」は「前の人や先人と同じ失敗をする」という意味ですので、訳として問題はないでしょう。続いて、例文を見ていきます。

1.I made the same mistake as Mr. Smith and let my company go bankrupt. 私はスミス氏と同じ轍を踏み、会社を倒産させてしまった。
2.Don't make the same mistake as me! 私と同じ轍を踏むんじゃないぞ!

「同じ轍を踏まないように」という戒めの慣用句・ことわざ

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「同じ轍を踏む」は戒めや注意の際によく使用されることは何度かお話しましたね。実は、「同じ轍を踏む」に関連した戒めの慣用句・ことわざが日本語には存在します。どのような言葉か見ていきましょう。

「前車の覆轍」「前車の覆るは後車の戒め」

「前車の覆轍(ぜんしゃのふくてつ)」「前車の覆るは後車の戒め」は、「前の人の失敗は、後の人にとって教訓になる」という意味の慣用句・ことわざです。「同じ轍を踏むな!」「同じ轍を踏まないように」というニュアンスで使用されることが多いですね。この2つの言葉は、語源は「同じ轍を踏む」と同じだと考えられています。

なお、「前の覆轍」を「前の覆轍」と書いている場合もありますが、「前者の覆轍」は誤用ですので気をつけましょう。

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他人の失敗から学び、「同じ轍を踏む」ことのないように…

今回は、「同じ轍を踏む」について解説しました。「前の人や先人と同じ失敗をする」という意味の慣用句です。注意や戒めの場面で用いられることが多いですね。「轍(てつ)」は「わだち」とも読み、「車輪の跡」という意味です。転倒した前の車の「轍」をたどって進むことで、後ろの車も同じように転倒してしまうこと…が「前の人や先人と同じ失敗をする」という意味の由来となっています。

「同じ轍を踏まない」ためには、他人の失敗を笑うのではなく、そこから学んでいく必要があるでしょう。

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国語言葉の意味

踏むのはNG!「同じ轍を踏む」の意味・語源や使い方、類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

何か失敗をしてしまったときに、「同じ轍を踏むな!」と注意されたり怒られたりしたことがある人、いるんじゃないか?「何となく意味は分かるけど、本当はどういう意味だっけ?」という人が多いかもしれませんね。

この「同じ轍を踏む」は、簡潔に言えば「前の人と同じ失敗をする」という意味です。

今回は「同じ轍を踏む」の意味・語源や使い方、類義語などを、院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうぞ。もちろん「轍」についても解説する。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「同じ轍を踏む」の意味や語源は?

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「同じ轍を踏む(おなじてつをふむ)」という言葉、怒られたり注意されたりしたときに、上司や先生から聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、正確な意味についてや、「轍(てつ)」って何だ?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。まずは、その「同じ轍を踏む」の意味と語源を見ていきましょう。

「同じ轍を踏む」の意味は「前の人と同じ失敗をする」

最初に、「同じ轍を踏む」の辞書での意味を確認していきましょう。国語辞典では「同じ轍を踏む」ではなく、「轍を踏む」で掲載されている場合が多いです。自身が利用している国語辞典も、「轍を踏む」の形で掲載されていました。では、その「轍を踏む」の意味を見ていきましょう。

前人と同じ失敗をする。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆轍を踏(ふ)・む」

「同じ轍を踏む」は「前の人や先人と同じ失敗をする」という意味の慣用句です。「俺と同じ轍を踏むなよ」「戦前の日本と同じ轍を踏むな」といったように、「踏むな」という禁止の形で、戒めや注意を行う場面で使用されることが多いですね。

「前車の轍を踏む」「前者の覆轍(ふくてつ)を踏む」という似たような言葉を使った慣用句がありますが、これらも「同じ轍を踏む」と同じ意味になります。

「同じ轍を踏む」の語源は?

続いて、「同じ轍を踏む」の語源を確認していきましょう。

「同じ轍を踏む」の「轍(てつ)」は、「わだち」とも読みます。この「轍(わだち)」は「車輪の跡」という意味です。昔に使用されていた馬車や牛車といった動物が動力の車や、荷車などの人が動力の車は、前に道を通った車の「轍」に沿って進むことで安定して進むことができます。しかし、転倒した車の「轍」をたどって進めば、後から来た車も転倒してしまうでしょう。このことから、「前の人と同じ失敗をする」という意味で、「同じ轍を踏む」という言葉が使用されるようになりました

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