この記事では「種子植物」という用語をテーマに勉強を進めていこう。

「種子植物」については、中学校の理科で学習する。ほとんどの生徒は、一度は学習した経験があるはずなのですが…高校以降ではもはや「種子植物とは」というような解説はほとんど耳にしないから、忘れてしまっているやつが多いでしょうな。今回はゼロから優しく「種子植物」について学びなおそう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

種子植物とは?

種子植物(しゅししょくぶつ)とは、名前のとおり”種子”をつける植物を指す言葉です。

種子、いわゆる「種(たね)」は、発芽すると次世代の新しい個体になります。種子植物というグループに含まれる植物は、「種子で子孫を残すという共通の仕組み(生殖方法)をもっている植物だ」と言い換えることもできるでしょう。

「種子植物以外の植物」というのは、言い換えれば「種子以外の方法で次世代をつくる植物」ですよね。コケ植物シダ植物のような、胞子で子孫を残す植物は、種子植物ではありません。

なお、種子植物に当てはまる植物はすべて維管束をもっています。シダ植物は種子植物はありませんが、同じく維管束をもっている植物です。このため、種子植物とシダ植物は「維管束植物」というグループにまとめられたりもします。

種子はどうやってできる?

ではここで、種子植物の最大の特徴である”種子”のでき方について、少し確認しておきましょう。

動物が子どもをつくる場合、まずメスのつくる卵細胞とオスのつくる精子(精細胞)が受精し、受精卵ができますよね。植物の場合でも、種子ができるためには卵細胞と精細胞の受精が必要です。

image by iStockphoto

種子植物のからだで卵細胞が存在するのは、胚のうとよばれる組織です。ふつう、胚のうは珠皮という皮に包まれています。珠皮に覆われた胚のうを胚珠というので、覚えておいてくださいね。

胚珠の中の胚のうに精細胞がたどり着くと、受精し、種子が形成されます。種子ができると、胚のうを包んでいた珠皮は種皮となるのです。

\次のページで「種子植物は大きく2つに分けられる」を解説!/

種子植物は大きく2つに分けられる

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種子植物にはたくさんの植物が属していますが、それらは大きく2つのグループに分けることができます。それが被子植物(ひししょくぶつ)と裸子植物(らししょくぶつ)というグループです。

被子植物

被子植物は、胚珠が子房という組織に包まれているタイプの植物です。

子房は雌蕊(しずい)…いわゆる”めしべ”の根元にあります。胚珠がこれに包まれた状態で種子に発達すると、そのまわりの子房は果実になるのです。

そうですね。子房が成熟してできるくだもの(=フルーツ)は、たしかにたくさんあります。ですが、私たちがよく知る一部のくだものは、子房以外の組織からなるものだったりもするんですよ。

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子房が発達・成熟してできるくだものは真果(しんか)とよばれます。ミカンやカキ、モモなどがこれに当てはまるくだものです。

くだものであっても、元をたどれば子房以外の組織が発達してできたものは偽果(ぎか)といいます。リンゴやイチゴは、この偽果に当てはまるんです。

さあ、話が少しずれましたので、種子植物の話題に戻りましょう。

裸子植物

裸子植物胚珠が子房に包まれず、むき出しの状態になっている種子植物のグループを指します。

のちほど具体例をご紹介しますが、現生の裸子植物は、被子植物よりもずっと種数が少ないです。しかしながら、長い地球の歴史をさかのぼると、被子植物よりも先に裸子植物が登場していたということが分かっています。

\次のページで「被子植物の例」を解説!/

その裸子植物はというと、シダ植物から進化したと考えられています。胞子で生殖する植物から種子植物へ、裸子植物から被子植物へ…こうして地球上にはいろいろな特徴をもつ植物が見られるようになったのです。

被子植物の例

被子植物にはたくさんの植物が所属していますが、それらはさらに大きく2つのグループに分けることができます。双子葉植物(そうしようしょくぶつ)と単子葉植物(たんしようしょくぶつ)です。

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種子が発芽して出てきた初めの葉が双葉になっているものを双子葉植物といいます。双子葉植物のなかでもとくに種数が多いのは、キク科という植物のグループです。キクのほか、タンポポやヒマワリ、ヨモギやレタスなんかもふくまれます。

ダイズやアズキ、エンドウマメの属するマメ科や、サクラやイチゴ、リンゴなどの属するバラ科、教科書によく例の出てくるアブラナ科の植物なども覚えておくとよいでしょう。

単子葉植物は、子葉が1枚だけ出る植物です。葉脈が網目状ではなく平行に走っているという特徴もあります。

単子葉植物のなかでも最大級のグループなのがラン科やイネ科。イネ科にはイネ、ムギ、トウモロコシなどがふくまれます。

いずれも”種子植物”のなかまですので、きちんとした種子をつける植物です。

裸子植物の例

現生の裸子植物は大きく4つのグループに分けて覚えましょう。マツ類、イチョウ類、ソテツ類、グネツム類です。

マツ類には、マツのほか、スギやヒノキ、モミ、メタセコイアなどがふくまれます。いわゆる”針葉樹”たちですね。

イチョウ類は、名前の通りイチョウをふくむグループですが…現生のイチョウ類はたった一種、イチョウのみです。太古の昔には他にもイチョウ類の仲間がいたのですが、絶滅してしまいました。イチョウの種子は、「銀杏」として食用にされますね。

\次のページで「種子植物は”成功者”である」を解説!/

3つ目のソテツ類も、太古に繫栄し、多くの化石が見つかっているグループです。日本でも南西諸島などには現生のソテツが自生しています。

最後のグネツム類。ウェルウィッチアやサバクオモトというような植物が含まれるグループです。

裸子植物の例として、このあたりの植物の名前が出てくるようであれば、もはや植物マスターでしょう。

image by Study-Z編集部

種子植物は”成功者”である

色々な植物の名前を登場させましたが、忘れてほしくないのは、これらがすべて「種子植物の例である」という点です。種子以外の方法(無性生殖)を行うものもありますが、その生涯の中で一度は種子をつける、またはその能力がある植物たちにほかなりません。

一口に種子植物といっても、その中身は多種多様、非常に多くの仲間が存在するということが分かりました。これは、種子による生殖が、この地球上での繁殖のために適した方法であったということ、種子植物が進化の中の”成功者”だということを意味しているのです。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 地球で大繁栄中の「種子植物」被子植物と裸子植物に分かれる?現役講師がサクッとわかりやすく解説! – Study-Z
理科生物生物の分類・進化

地球で大繁栄中の「種子植物」被子植物と裸子植物に分かれる?現役講師がサクッとわかりやすく解説!

この記事では「種子植物」という用語をテーマに勉強を進めていこう。

「種子植物」については、中学校の理科で学習する。ほとんどの生徒は、一度は学習した経験があるはずなのですが…高校以降ではもはや「種子植物とは」というような解説はほとんど耳にしないから、忘れてしまっているやつが多いでしょうな。今回はゼロから優しく「種子植物」について学びなおそう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

種子植物とは?

種子植物(しゅししょくぶつ)とは、名前のとおり”種子”をつける植物を指す言葉です。

種子、いわゆる「種(たね)」は、発芽すると次世代の新しい個体になります。種子植物というグループに含まれる植物は、「種子で子孫を残すという共通の仕組み(生殖方法)をもっている植物だ」と言い換えることもできるでしょう。

「種子植物以外の植物」というのは、言い換えれば「種子以外の方法で次世代をつくる植物」ですよね。コケ植物シダ植物のような、胞子で子孫を残す植物は、種子植物ではありません。

なお、種子植物に当てはまる植物はすべて維管束をもっています。シダ植物は種子植物はありませんが、同じく維管束をもっている植物です。このため、種子植物とシダ植物は「維管束植物」というグループにまとめられたりもします。

種子はどうやってできる?

ではここで、種子植物の最大の特徴である”種子”のでき方について、少し確認しておきましょう。

動物が子どもをつくる場合、まずメスのつくる卵細胞とオスのつくる精子(精細胞)が受精し、受精卵ができますよね。植物の場合でも、種子ができるためには卵細胞と精細胞の受精が必要です。

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種子植物のからだで卵細胞が存在するのは、胚のうとよばれる組織です。ふつう、胚のうは珠皮という皮に包まれています。珠皮に覆われた胚のうを胚珠というので、覚えておいてくださいね。

胚珠の中の胚のうに精細胞がたどり着くと、受精し、種子が形成されます。種子ができると、胚のうを包んでいた珠皮は種皮となるのです。

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