この記事では「翻る」について解説する。

端的に言えば翻るの意味は「裏返しになる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「翻る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「翻る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「翻る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「翻る」の意味は?

「翻る」には、次のような意味があります。

ひる‐がえ・る〔‐がへる〕【翻る/×飜る】[動ラ五(四)]

1 反対の面が出る。さっと裏返しになる。

2 態度・説などが、急に変わって反対になる。

3 風になびいて揺れ動く。ひらめく。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

まず読みは「ひるがえる」です。読み方と送り仮名に注意しましょう。よく使われるのは1、2の「それまでとは反対の面が出る」「態度や説が急に反対になる」という意味ですが、これらはもともと3の意味である「風になびいて揺れ動く」から派生して生まれた意味です。

次項目でその語源について詳しくみていきましょう。

「翻る」の語源は?

次に「翻る」の語源について、詳しく確認していきましょう。

「翻る」はもともと、漢字からイメージできるように「鳥が羽をのびやかに広げる様子」という意味を持っていました。そのように鳥が羽を動かして飛ぶ姿から「裏返る」の意も指すようになったと言われています。それが今では「裏返る」「反対になる」という意味の方が一般的に用いられるようになっていったのです。

そんな漢字のイメージから連想して、意味が頭に浮かべられるようになりましょう。

\次のページで「「翻る」の使い方・例文」を解説!/

「翻る」の使い方・例文

「翻る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ここにきて相手の意見が翻るなんて、全く予想していなかった。
2.国王の圧政に耐えかねた市民たちは反旗を翻し、革命を起こした。
3.干した洗濯物が風で翻る様子は、なんとなく癒される。

使い方で注意が必要なのは「翻る」と「翻す」の使い分けです。「翻る」はいわゆる「自動詞」で、目的語なしに使用できます。実際1、3は「〜を」「〜に」というような目的語が使われていません。

一方、「翻す」は「他動詞」のため、目的語が必要になる表現です。2であれば「反旗を」という目的後が存在しています。主語が働きかけたことで何か(目的語)が反対になったと言う場合には「翻す」を使いましょう。

ちなみに2の「反旗を翻す」は「謀反を起こす」という意味で使われる慣用表現です。

「翻る」の類義語は?違いは?

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次に、「翻る」のそれぞれの意味に対する類義語や、関連する言葉や表現を説明していきます。類義語は微妙なニュアンスの違いも含めて、ぜひチェックしてみてください。

その1「はためく」

まずは「風になびく」という意味での「翻る」との類義語です。「布や紙といったものが風の力でひらひら動く」様子を示す言葉として、「翻る」と「はためく」は同義となります。

微妙な違いとしては「はためく」は「炎がいきおいよく燃える」「雷が鳴り響く」「鳥がはばたく」といったような「ばたばた」という音を立てるものに幅広く使われていました。そのため、ばたばた音を立てて風になびいているような状況や様子に対して使うことが自然です。

それに対して「翻る」は、風を受けて広がって動くような状態を示すと言われています。そう言われても、これに関してはなかなか判断基準が難しいところですね。

そのため、音を立てて風になびくものは「はためく」、そうでない場合は「翻る」と使い分けることができれば問題ないでしょう。

\次のページで「その2「覆る」」を解説!/

その2「覆る」

次に「反対になる」という意味の「翻る」の類義語として「覆る」を紹介します。「覆る」と「翻る」は「何か今ある状態から逆の状態になる」という意味で共通している表現です。

違いとしてはまず、「覆す」は「対象が自分と関係ない物」になる傾向があります。例えば「世間の常識」「これまでの定説」などは、自分以外のものが作り上げたものですよね。こういった自分に責任のないものが対象となるのです。

一方、「翻る」は「意見や考え」が反対になる場合に使われます。また、「翻る」には「急に」というニュアンスが含まれ、そこも「覆る」との違う点です。

ちなみにこの違いは、他動詞形の「翻る」「覆る」の場合でも同じになります。この2語の違いを理解し、上手に使い分けができるようになりましょう。

「翻る」の対義語は?

「翻る(翻す)」は「反対になる(する)」「風になびく」という意味なので、基本的には対義語を定義することができない言葉です。意味や類義語との使い分け、そして次に紹介する英語表現についてしっかり覚えておくようにしましょう。

「翻る」の英訳は?

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最後に、「翻る」「翻す」の英語表現についての解説していきます。例文は最後にまとめて紹介しますので、最後までチェックしてくださいね。

「風で翻る」は英語で「flutter」

まずは「風になびく」という意味での「翻る」は「flutter」という単語で英訳ができます。「風ではためく」「ひらひらなびく」「鳥がはばたく」と、幅広く使用できる表現です。

今みている景色のなかで「何かが風で翻っている」状態を表したいときは「be fluttering」のように現在進行形として表現します。

「考えが翻る」は英語で「change one's mind」

次に「考え・意見・気持ちが翻る(を翻す)」という場合です。気持ちや考え方の場合は「change one's〜」という表現がわかりやすいかと思います。後ろに「mind」や「thinking」といった表現を文脈に応じて置きましょう。

また、翻すことによって「前の意見や考え方に戻る」ような場合には「取り戻す」という意味を持つ「take back」という表現も使えます。うまく使い分けることができるとベストですね。

以下に例文を用意していますので、ぜひチェックしてください。

The flag is fluttering in the wind.
旗が風に翻っている


He changed his thinking after hearing her mind.
彼は彼女の気持ちを聞いた後、意見を翻した


She took back her words.
彼女はさきほどの発言を翻した

\次のページで「「翻る」を使いこなそう」を解説!/

「翻る」を使いこなそう

この記事では「翻る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

漢字から連想できるように「風になびく」という意味から「反対になる」という意味まで持つようになった言葉です。漠然と意味を覚えるよりも、そうしたイメージから意味を連想できるとわかりやすくなりますね。

記事の中で紹介した、自動詞の「覆る」と他動詞の「覆す」の使い分けや、意味によって異なる英訳の方法まで、しっかりと覚えておいてもらえると嬉しいです。

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国語言葉の意味

「翻る」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員がわかりやすく解説!

この記事では「翻る」について解説する。

端的に言えば翻るの意味は「裏返しになる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「翻る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「翻る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「翻る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「翻る」の意味は?

「翻る」には、次のような意味があります。

ひる‐がえ・る〔‐がへる〕【翻る/×飜る】[動ラ五(四)]

1 反対の面が出る。さっと裏返しになる。

2 態度・説などが、急に変わって反対になる。

3 風になびいて揺れ動く。ひらめく。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

まず読みは「ひるがえる」です。読み方と送り仮名に注意しましょう。よく使われるのは1、2の「それまでとは反対の面が出る」「態度や説が急に反対になる」という意味ですが、これらはもともと3の意味である「風になびいて揺れ動く」から派生して生まれた意味です。

次項目でその語源について詳しくみていきましょう。

「翻る」の語源は?

次に「翻る」の語源について、詳しく確認していきましょう。

「翻る」はもともと、漢字からイメージできるように「鳥が羽をのびやかに広げる様子」という意味を持っていました。そのように鳥が羽を動かして飛ぶ姿から「裏返る」の意も指すようになったと言われています。それが今では「裏返る」「反対になる」という意味の方が一般的に用いられるようになっていったのです。

そんな漢字のイメージから連想して、意味が頭に浮かべられるようになりましょう。

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