

通道組織は植物のからだのつくりに関係している用語だが、中学や高校で学ぶ生物学の中ではあまり詳しく説明されない。先生によっては全く触れずに授業を進めることもあるだろう。この機会にぜひどんなものか知ってほしい。
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
通道組織とは?
通道組織(つうどうそしき)とは、植物のからだの中で、水や養分などを輸送する”通り道”となる管の組織をまとめて指した言葉です。
みなさんは、植物のからだの中にある「水が通る管」や「養分が通る管」について聞いたことはありませんか?

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「水が通る管」や「養分が通る管」というのは、中学校の理科で学習する「道管」や「師管」のことだろうか?
そのとおりです!通道組織という言葉だと聞きなれないのですが、これは”維管束組織”とほぼ同じ意味になります。
せっかくですので、ここで少し植物の組織の全体像をご紹介しておきましょう。
植物の組織
陸上植物の場合、そのからだの組織は大きく2つに大別することができます。分裂組織と永久組織です。
分裂組織は名前の通り、盛んに細胞分裂を行う組織を指します。植物のからだというのは、どこでも自由に細胞が分裂しているわけではありません。ごく限られた場所の細胞が盛んに分裂し、からだを生長させているのです。
具体的には、茎や根の生長点にある頂端分裂組織(ちょうたんぶんれつそしき)と、双子葉植物の根や茎にある形成層(けいせいそう)がこれにあたります。

単子葉植物は形成層をもたないため、太い茎になることができないんだったな。
一方で、分裂組織以外の組織は永久組織、または成熟組織とよばれます。機能も形態もそれぞれに分化し、盛んに細胞分裂をすることは基本的にありません。
この永久組織にふくまれるのが、表皮組織や柔組織、機械組織などです。今回のメインテーマである通道組織も、この永久組織組織のなかまとなります。
通道組織の”3つの管”
通道組織にまとめられている”管”には、大きく分けて3つの種類があります。道管、仮道管、師管です。
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
1.道管
道管は、根で吸収した水分を茎や葉の隅々にまで輸送する通路となる管です。”導管”という表記でもかまいません。
中学校の理科などではよく「道管は水の通り道」という点を授業で扱いますが、土壌から吸い上げるのは純粋な水ではないことに注意してください。土壌から水を吸収すれば、その水分に溶け込んでいる養分(肥料の栄養など)も一緒に吸い上げることになります。