この記事では「取り繕う」について解説する。

端的に言えば取り繕うの意味は「うわべを飾ってごまかす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「取り繕う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「取り繕う」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「取り繕う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「取り繕う」の意味は?

「取り繕う」には、次のような意味があります。

1.ととのえて見よくする。
2.不都合などを隠そうとしてうわべを飾る。
3.間に合わせに修繕する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「取り繕う」

「取り繕う」の読み方は「とりつくろう」。「取り繕う」とは、うわべを飾ってごまかすことです。「ごまかす」というと悪いことのようですが、礼儀としてちょっと「ごまかす」ことから、うそをつくような「ごまかす」まで、やはり「ごまかす」というニュアンスをもってこそ正しく使える言葉といえます。

上の1の意味は、外見をととのえて「ごまかす」こと。「汗でメイクが落ちたがパウダーを乗せて取り繕う」「人の通り道だけは取り繕ってきれいにした」のように使います。2の意味は、知られたくない真実や失敗を「ごまかす」ことです。「実は課題には手をつけていないのだが、やっているように取り繕ってその場をしのいだ」のように使います。

3は、ちょこっと修繕すること。「ごまかし」程度に、という感じでしょうか。「壁に刺した画鋲のあとを、補修テープで取り繕う」のように使います。完全に直すときは「取り繕う」とは言いません。

「取り繕う」の語源は?

次に「取り繕う」の語源を確認しておきましょう。「取り繕う」の言葉は「取り」と「繕う」に分けられます。「取り」の部分は接頭語です。特に意味は持たず、「繕う」の意味を強調する働きがあります。「取り扱う」の「取り」と同じですね。

「繕う」はメインの意味を担う言葉です。その意味は「衣服などのやぶれたところを直す」「身なりなどの見た目や体裁をととのえる」「過失をかくしてうまくやる」と、「取り繕う」とほぼ同じ。「取り繕う」の言葉は「繕う」が元になっているのです。

「繕う」の古語である「繕ふ(つくろふ)」は、平安時代の作品にはすでに登場しています。古文では「直す(修理)」以外に「治す(治療)」の意味でも使われますよ。現代では「治療する」の意味で「繕う」が使われることはありません。

\次のページで「「取り繕う」の使い方・例文」を解説!/

「取り繕う」の使い方・例文

「取り繕う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.お客様に会う前は必ず身だしなみをチェックして、髪やメイクもうまいこと取り繕ってくださいよ。綺麗な秘書がいる会社って、それだけで印象良いでしょ。
2.「少しだけ自分に言い訳させてもらえませんか」などとけなげなふりをしているが、うまく取り繕うためにやっているのが見え見えだ。
3.「新しい手袋がどうしても必要なの!お願い買って!」と言いながらスマホでいくつかの候補を見せてくる娘だが、これくらいの穴あき、ちゃちゃっと取り繕えばまだ使えるはず。
4.アルツハイマー型認知症のある人には、事実と関係なくその場に一番しっくりくるような発言をしてしまう「取り繕い反応」がよくみられる。しかしそれは知ったかぶりなどではなく、人前で間違ったことを言いたくないという、自尊心のあらわれなのだ。

例文1の「取り繕う」は、「見た目を良くする」という意味で使っています。他人に向かって「取り繕ってください」というのは「見た目をごまかしてください」と言っているのと同じであり、大変失礼ですよ。この文章の場合は、そういうキャラの発言ということでセーフなのかもしれません。

例文2は「不都合なことをごまかそうとする」という意味で使っている例です。取り繕うことをくり返すと、大切な人からの信用を失ってしまうでしょう。

例文3は「間に合わせで直す」という意味の例です。布でできた物の修理には「繕う」の方がしっくりくるかもしれませんね。「繕う」という言葉からは、針と糸でチクチク縫って直すイメージが浮かびませんか。

例文4では「取り繕い反応」という言葉を取り上げています。介護や医療の世界で使う言葉です。

「取り繕う」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「取り繕う」の類義語には「お茶を濁す」「その場しのぎ」などがあげられます。

その1「お茶を濁す」

「お茶を濁す」とは、都合の悪いことに対し、適当にごまかすことです。「不都合なことをごまかす」という意味合いが「取り繕う」と似ていますね。

「お茶を濁す」には「適当に」というニュアンスがあるのが特徴です。そもそも「お茶を濁す」とは、お茶の正しいたてかたを知らない素人が「適当に」お茶をかき混ぜてそれらしく装った様子からできた言葉。「適当」で当然なのです。相手からしても「あっ、お茶を濁された」と気づくことも多いでしょう。

対して「取り繕う」には、ごまかすことについては本気の意思が感じられます

\次のページで「その2「その場しのぎ」」を解説!/

その2「その場しのぎ」

「その場しのぎ」とは、ひとまずその時を切り抜けるための処置をいいます。「取り繕う」の「一時的にごまかす」というニュアンスが、「その場しのぎ」と似ていますね。

「取り繕う」はごまかすことに対して積極的といえます。「その場しのぎ」の方は、ごまかしたくはないがその時点ではそれしか選択肢がない、という場面で使うこともあるでしょう。

「その場しのぎの対策では、根本的な解決にはとうてい至らない」のように使います。

「取り繕う」の対義語は?

「取り繕う」の対義語には「メッキがはがれる」があげられます。

「メッキがはがれる」

「メッキがはがれる」は、隠してごまかしていた本性がバレてしまうことです。「メッキ」とは、サビやすいものなどの表面を金属の薄い膜で覆う処理のこと。「金メッキ」はよく聞きますね。

純金のジュエリーと、真鍮などの金属に金メッキがほどこされたジュエリーは、見た目では区別がつかないこともあります。しかし金メッキのジュエリーの方は、長く使用しているとメッキ部分にヒビが入ったり、割れたりしてしまうことも。メッキがはげて中の金属が見えてしまっては、純金のジュエリーとはもう比べものになりませんね。

「メッキ」を「本性をごまかすこと」と考えると、「メッキがはがれる」は「取り繕う」と反対の意味になるといえるでしょう。ちなみに金メッキのジュエリーには、ゴールドのアクセサリーを気軽に楽しめるというメリットもあるのですよ。

「取り繕う」の英訳は?

image by iStockphoto

「取り繕う」の英訳には「gloss over」を使います。

「gloss over」

「gloss over」は「もっともらしくうわべを飾る」「ごまかす」という意味です。「gloss」は、日本語でもリップの「グロス」として使う言葉ですね。「gloss」の本来の意味は「つやを出す」ですが、「うわべを飾る」という意味もあるのです。

She wants to gloss over her errors.
(彼女は自分の間違いを取り繕いたがる。)

\次のページで「「取り繕う」を使いこなそう」を解説!/

「取り繕う」を使いこなそう

この記事では「取り繕う」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「取り繕う」は、うわべを飾ってごまかすことです。少し手をいれて見た目を良くする、都合の悪いことを隠してごまかす、本格的にではなくちょこっと修繕する、という意味で使います。「ごまかす」というニュアンスを忘れなければ正しく使えるでしょう。

取り繕うことをしない人は、素直な人であり、勇気がある人です。そんな人になりたいものですね。

" /> 「取り繕う」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「取り繕う」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「取り繕う」について解説する。

端的に言えば取り繕うの意味は「うわべを飾ってごまかす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「取り繕う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「取り繕う」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「取り繕う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「取り繕う」の意味は?

「取り繕う」には、次のような意味があります。

1.ととのえて見よくする。
2.不都合などを隠そうとしてうわべを飾る。
3.間に合わせに修繕する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「取り繕う」

「取り繕う」の読み方は「とりつくろう」。「取り繕う」とは、うわべを飾ってごまかすことです。「ごまかす」というと悪いことのようですが、礼儀としてちょっと「ごまかす」ことから、うそをつくような「ごまかす」まで、やはり「ごまかす」というニュアンスをもってこそ正しく使える言葉といえます。

上の1の意味は、外見をととのえて「ごまかす」こと。「汗でメイクが落ちたがパウダーを乗せて取り繕う」「人の通り道だけは取り繕ってきれいにした」のように使います。2の意味は、知られたくない真実や失敗を「ごまかす」ことです。「実は課題には手をつけていないのだが、やっているように取り繕ってその場をしのいだ」のように使います。

3は、ちょこっと修繕すること。「ごまかし」程度に、という感じでしょうか。「壁に刺した画鋲のあとを、補修テープで取り繕う」のように使います。完全に直すときは「取り繕う」とは言いません。

「取り繕う」の語源は?

次に「取り繕う」の語源を確認しておきましょう。「取り繕う」の言葉は「取り」と「繕う」に分けられます。「取り」の部分は接頭語です。特に意味は持たず、「繕う」の意味を強調する働きがあります。「取り扱う」の「取り」と同じですね。

「繕う」はメインの意味を担う言葉です。その意味は「衣服などのやぶれたところを直す」「身なりなどの見た目や体裁をととのえる」「過失をかくしてうまくやる」と、「取り繕う」とほぼ同じ。「取り繕う」の言葉は「繕う」が元になっているのです。

「繕う」の古語である「繕ふ(つくろふ)」は、平安時代の作品にはすでに登場しています。古文では「直す(修理)」以外に「治す(治療)」の意味でも使われますよ。現代では「治療する」の意味で「繕う」が使われることはありません。

\次のページで「「取り繕う」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: