
1.ミステリー小説を読んで忘我のひとときを過ごした。
2.授賞式は忘我する程の感極まる瞬間だった。
3.犯行の瞬間は忘我の状態だったと思われる。
例文に沿って「忘我」を解説していきます。例文1は趣味に没頭する至福の時間を表現していますよ。本が好きな人には理解していただけるかと思いますが、読書というのはその世界にのめり込む魅力があります。本に限らず陶芸でもゲームでも同じですね。コミュニティのようなコミュニケーションを取りながらとかではなく、どっぷりとその世界にはまり込む時間を「忘我の時間」と言いますよ。例文2は人生で初めてというほどの感動を表しています。忘我するほど感極まる体験は、そうそう出来るものでもないですし、忘れられない貴重な時間を過ごした様子を表現していますよ。例文3は今まで挙げた例文とは反対の心境ですね。憎しみや憎悪といった負の感情に囚われている状態の時でも、「忘我」という言葉は使われますよ。
このように「忘我」という言葉は、良くも悪くも我を忘れる程の精神状態の時に用いられる言葉です。

「忘我」という言葉は知っていたが、実は使った事はなかったんだ。日常会話で聞く事もなかったし、文学的な響きだよな。古典文学など色々と調べていくと、昔はライトな性的ニュアンスで使われていたことも分かったんだ。「甘美な忘我が」などの表現も見つけたから詳しく調べてみると、Wikipediaの「エクスタシー」という言葉の意味に「忘我」とあって、かなり驚いたぞ。現代ではどのように使われているのか、もう少し詳しく「忘我」について調べてみよう。
その1「没我」
「忘我」とほぼ同様の意味で用いられるのが「没我」です。「ぼつが」と読み、「物事に熱中して我を忘れること」の意。この言葉も聞き慣れませんが「没頭」と聞くとピンとくる人も多いでしょう。「没頭」も何かに集中しているさまを表すので、「忘我・没我・没頭」は、類義語として言い換えできる言葉ですよ。セットで覚えておくと表現の幅が広がりますね。
その2「無我夢中」
「無我夢中」と聞くと何かに必死でなりふり構わず、のようなイメージが浮かぶのは私だけでしょうか?「無我夢中」は「むがむちゅう」と読み、「心をうばわれ、無意識的にただひたすら行動するさま」の意。かなり近い意味で「一心不乱」という四字熟語もありますね。どちらも「心を奪われ、ただひたすらに」という点が、「忘我」と共通しているので類義語としてふさわしいでしょう。ちなみにどちらにも「必死に・なりふり構わずに」という意味は含まれていませんでした。もし私と同じような間違った解釈をしている方がいれば、この機に意味をしっかり覚え直しましょう。
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