
「好きこそ物の上手なれ」の「なれ」とは命令なのでしょうか?しかし、意味を確認してもその要素はなさそうです。では一体どういう意味なのか。よく使われることの多いことわざだからこそ、しっかりと意味を把握しておきたいものです。
今回は、大学で日本文学を専攻し、塾講師時代には国語の指導に力を入れていたというカワナミを呼んです。一緒に説明していく。
- 「好きこそ物の上手なれ」の意味や語源
- 「好きこそ物の上手なれ」の意味は「好きなことは上達が早い」
- 「上手なれ」は命令ではない!「こそ〜なれ」の係り結び
- 「好きこそ物の上手なれ」の語源
- 「好きこそ物の上手なれ」の使い方
- 「好きこそ物の上手なれ」は座右の銘にぴったり
- 「好きこそ物の上手なれ」を使った例文
- 「好きこそ物の上手なれ」の類義語
- 「道は好む所によって安し」:好きならば自然に上達する
- 「好きは上手の元」:好きであることが上達の秘訣だ
- 「好きこそ物の上手なれ」の対義語
- 「下手の横好き」:上達はしないが、熱心なこと
- 「下手の考え休むに似たり」:下手な人の考えは意味がない
- 「好きこそ物の上手なれ」の英訳
- 「What one likes, one will do well.」
- 「Do what you love and the money will follow you.」
- 「好きこそ物の上手なれ」には、まず興味を持つこと
この記事の目次
ライター/カワナミ
大学では日本文学を専攻し、塾講師時代には国語の指導に力を入れる。日本語に触れることが好きだからこそ、書くことを仕事にしたいとwebライターを始めた。モットーは丁寧にわかりやすく伝えること。「好きこそ物の上手なれ」を実現できていることを願う。
「好きこそ物の上手なれ」の意味は「好きなことは上達が早い」
辞書によると「好きこそ物の上手なれ」の意味は以下のように記されています。
好きな事にはおのずと集中できるから、上達が早いものだ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「好きこそ物の上手なれ」
「好きこそ物の上手なれ」は端的に言うと「好きなことは上達が早い」という意味です。好きなことをしているときは、興味があるので集中力が高まりますよね。その上、長い時間をかけても苦になりません。そういった行動を取っている人は、自然と物事の上達が早くなることを表したことわざです。
「好きであるからには上手になれ」という命令の意味はありません。末尾の「なれ」は「〜だ」という断定の意味です。次の項目でさらに詳しく説明していますので、ご覧ください。
「上手なれ」は命令ではない!「こそ〜なれ」の係り結び
「上手なれ」は「上手になれ」という命令ではありません。この「なれ」は断定の意味です。好き「こそ」物の上手「なれ」の「こそ〜なれ」には係り結びの法則があります。
係り結び
係り結びは、文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」がある場合、文末が「連体形」もしくは「已然形」になるというもの。「ぞ・なむ・こそ」は強調、「や・か」では疑問を表す。
・強調/文中:こそ→文末:已然形
・強調/文中:ぞ・なむ→文末:連体形
・疑問/文中:や・か→文末:連体形
「好きこそ物の上手なれ」には直前の言葉を強調する「こそ」があるため、文末は「なり」の已然形「なれ」となります。つまり「好きだからこそ上達するのだ」という意味です。
「好きこそ物の上手なれ」の語源
「好きこそ物の上手なれ」の語源は明確になっていません。しかし、江戸中期の浄瑠璃・歌舞伎の演目である「菅原伝授手習鑑」(すがわらでんじゅてならいかがみ)に登場していることから、その頃には広く知られていたのでしょう。
また一説には、上手になる秘訣が好きであることだと、いつともなく古来から言い伝えられてきたと言われています。孔子の言葉をまとめた中国の古典「論語」には、似た意味の言葉がすでにありました。「之を知る者は、之を好むに如かず 之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」は「物事を知っている人も、それが好きな人・楽しむ人には敵わない」という意味です。
「好きこそ物の上手なれ」の使い方

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「好きこそ物の上手なれ」の主な使い方は褒め言葉や励ましの言葉など、ポジティブなものです。好きな物事や得意な物事がある人を褒めたり、何か物事を上達させたい人へ「上手くなるためにはまずは好きなることだ」と励ましたりするときに用いられます。
「好きこそ物の上手なれ」は座右の銘にぴったり
「好きこそ物の上手なれ」は座右の銘にぴったりの言葉です。表すのは「どんな物事にも興味を持ち、自分のものとして上達していきたい」という意思。挑戦し努力する姿勢を見せられます。また、相手にポジティブな印象を与えることができますね。
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「好きこそ物の上手なれ」を使った例文
「好きこそ物の上手なれ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。
1彼はダンスを始めてまだ1年なのに、コンテストで決勝戦まで進んだらしいね。まさに好きこそ物の上手なれだね。
2好きこそ物の上手なれとは言うけれど、いつも海外ドラマばかり見ている友達が外国人旅行者に英語で道案内をしていたよ。
3苦手な科目も好きこそ物の上手なれだよ。あまり難しく考えず、まずは興味を持ってみよう。
1,2の使用例は褒め言葉です。相手が、好きなことに熱心な努力をし続け、周囲が驚くような上達ぶりを見せた点に感心したことを「好きこそ物の上手なれ」ということわざで表現しています。
3は励ましの言葉として用いている例。勉強にしろ仕事にしろ、苦手であっても、ほんの小さなきっかけで興味が湧くことは十分にあるでしょう。肝心なのは苦手だと思い込まず「好きこそ物の上手なれ」だな、と気を楽に取り組むことだと諭しています。
「道は好む所によって安し」:好きならば自然に上達する
「道は好む所によって安し」は、どんな物事も興味を持って好意的に取り組めば容易に上達するという意味のことわざです。好きなことなら自然と熱心になるので上達も難なくできるというのは、「好きこそ物の上手なれ」と同じですね。使い方も同様に、褒め言葉や励ましの言葉として用いられます。
「好きは上手の元」:好きであることが上達の秘訣だ
「好きは上手の元」とは、好きであることが上達するための秘訣だという意味です。一見「好きこそ物の上手なれ」と同じようですが、違いがあります。「好きこそ物の上手なれ」は、好きである結果として上達が早いことを言うのに対し、「好きは上手の元」は上達するための方法の1つとして好きになることを挙げている点です。褒め言葉ではなく、励ましや諭す言葉として使われます。
「好きこそ物の上手なれ」の対義語
「好きこそ物の上手なれ」の反対の意味のことわざを、対義語として紹介します。
「下手の横好き」:上達はしないが、熱心なこと
「下手の横好き」とは、ある物事が下手でなかなか上達しないけれど、本人は好きで熱心にしていることを意味します。好きであるにも関わらず上達しないのは、「好きこそ物の上手なれ」の反対と言えますね。相手をバカにするような、マイナスな表現ですので、他者に対して使う場合は注意が必要です。しかし、自分のことを謙遜して言う場合には問題ありません。
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