
勘違いされがち!「疼く」は痛みの表現だが…
「疼く」は痛みの表現です。身体的なものと精神的なものの違いはありますが、痛みに対する言葉という意味では変わりません。しかしまれに、「疼く」に対して「むずむずする」「じんじんする」「熱くなる」などという意味と誤解している人もいます。
本当に体に傷ができた際、痛みを感じるのはもちろんです。しかし痛みだけでなく、他にもさまざまな感覚が生じます。「むずむずする」「じんじんする」「熱を持つ」などはすべて代表的な症状であり、傷に対してこういった感覚が出てくるのはよくあること。それによって、「傷が疼く」などという文章になった際、「傷がじんじんするのだろう」「傷が熱いのかな?」などと誤解する人が出てくるのでしょう。
「胸が疼く」という表現について
「胸が疼く」という表現には注意が必要です。これには2通り意味があり、本当に何らかの病などで胸に痛みが生じている場合。それから、精神的に辛いことがあり、たとえの表現として心が痛いという意味で「胸が疼く」という場合があります。どちらであるかは、文脈で判断する必要があるのです。
本当に傷があるわけでなく、精神的な痛みにも「疼く」は使用可能ですが、実際の所多くは「疼く」部位として「胸が」と繋げられます。胸はこの場合心のある場所としての例えであり、人間の体で他に心を連想させる場所はほぼありません。
「疼く」の類義語には大きな特徴が?

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「疼く」の類義語には面白い特徴があります。たとえば「痛む」なども立派な類義語ですが、他の言葉にはオノマトペが非常に多いのです。「ひりひり/ぴりぴり/ひりつく/ずきずき/じくじく」など、日本語の痛みに対するオノマトペは実にバリエーション豊か。そのバリエーション豊かな痛みの表現の多くが、「疼く」の類義語として使用されています。
「疼痛」って何?
「疼痛」という言葉があります。「疼く痛み」と書くこの言葉は、意味合いとしては「疼く」とまったく変わりがありません。ただ、「疼くような種類の痛み」という表現を手短に伝えたいときは、「疼痛」という表現が便利です。読み方は「とうつう」となります。「うずく」という読み方とは変化してしまいますので、注意してください。
いつか我が身に降りかかりかねない「疼く」
「疼く」という言葉は痛みに対する言葉です。そのため、縁がない人はほとんど使わないケースもあります。しかし、今健康で怪我にも病気にも縁が無いからと言って、これから先死ぬまでそうであるとは限りません。生きていれば怪我をすることもあり、病気をすることもあります。そのような場合に「疼く」を覚えていれば、何かと役に立つでしょう。
「痛い」とだけ覚えていれば良いのでは?という人もいますが、それは違います。医師であっても、診察の際に「痛い」だけでは判断しかねる状況は多いです。自分の状況を正確に伝えられる言葉を覚えておくことは、巡り巡って自分が助かることに繋がります。
「疼く」はメディアなどにもしばしば用いられる言葉です。そのため、「やや大げさな表現」とみなされることもありますが、「疼く」はけっして過剰な表現ではありません。自信を持って使用してください。