この記事では「烏合の衆」について解説する。

端的に言えば烏合の衆は「ただ寄り集まっただけの群衆」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「烏合の衆」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊  雅子。「烏合の衆というけれど、カラスは社会性をもつ生き物なのに…」と思っている彼女が「烏合の衆」という故事成語について解説する。

「烏合の衆」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「烏合の衆」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「烏合の衆」の意味は?

「烏合の衆」には、次のような意味があります。

1.規律も統一もなく寄り集まった群衆。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「烏合の衆」

「烏合の衆」は「うごうのしゅう」と読み、「烏」とはカラスのことです。「烏合の衆」はカラスの群れを比喩に用いて「ただ集まっただけの群衆」という意味を表していて、その群衆には規律も統制もありませんしかし実際のカラスは鳴き声で会話したり、ある程度協力しあったりもするのです。カラスはずっと単独行動をするのではなく、社会的な行動もするということが観察と研究によってわかってきました。

日本で見られるカラスは一般的なハシブトガラス、ハシボソガラスをふくむ7種類。ハシブトガラスは日本全国の市街地や山地(除小笠原諸島)に、アシボソガラスは田畑に生息しています。これらのカラスは翼を広げると1m。結構大きい鳥ですね。

カラスは知能が高いことでも知られています。朝、漁港の傍の信号機に止まってトラックを待ち伏せ。赤信号でトラックが止まるとサッと舞い降り、積み荷の魚をつかんで飛び去ります。また道路にクルミを置いて車にひかせ、硬い殻を割らせるのも有名な話。記憶力も優れていて、追い払ったりした人間の顔を覚え、その人を執拗に追い回したり足や嘴で攻撃したりもします。

「烏合の衆」の語源は?

次に「烏合の衆」の語源を確認しておきましょう。

中国後漢の歴史を記した書物「後漢書 耿弇(こうえん)伝」に「烏合之衆」という表現があります。

後に後漢の初代皇帝劉秀に仕えることになる武将の耿弇が王郎の軍勢と戦い、「烏合の衆のように統率性も団結心もなく、ただ集められただけの兵士の集団は簡単に打ち負かすことができる」と相手に言い放ったことが「烏合の衆」の由来となったということです。

\次のページで「「烏合の衆」の使い方・例文」を解説!/

「烏合の衆」の使い方・例文

「烏合の衆」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.夕食を食べながら会社のプロジェクトのことで愚痴を言っていると、妻に「チームのメンバーはみんな有名大学卒業で専門知識もあるのに…やっぱりそのメンバーを上手くつなげる人がいないと、いくら能力のある人の集団でも烏合の衆になっちゃうね」と言われてしまった。

2.スマホを触っている奴、寝ている奴、マンガを読んでいる奴、学習塾のテキストを開いている奴…前では文化祭の実行委員が実行委員会で決まったことを報告しているが、真面目に興味をもって聞いている奴なんて誰もいない。教室にいる学生達は皆無秩序に好き勝手なことをしている。この状態はまるで烏合の衆だ。

3.最近国会関連のニュースを見たが、与野党とも本気で論戦を戦わせようとしているようには見えない。あの国会内でひしめきあっている議員たちはただの群集…烏合の衆だ。

例文1は優秀な人間がどれだけ集まっても、その能力を活かすことができなければただの集団になってしまうということを「烏合の衆」という言葉で表しています。

例文2で「烏合の衆」が表しているのは文化祭実行委員の話を聞く場であるのに、クラスメートは各自勝手なことをしているということ。クラスメートというよりは寄り集まり状態です。学生時代には「一生懸命」や「団結」といった言葉を「ダサい」と感じる時期がありますね。そう感じる背景には「一生懸命やってうまくいかなかったら格好悪い」とか「団結を呼び掛けて、みんなが応えてくれなかったら恥をかくことになる」といった思いがある場合が多いのです。

例文3は熱のこもった有意義な議論が行われるはずの国会で、議員たちは論戦しようとしているようには見えず、彼らはただそこに集まっている群集にすぎないということを「烏合の衆」を使って表現しています。

「烏合の衆」の類義語は?違いは?

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「ただ集まっただけの群衆」という意味をもつ「烏合の衆」にはどのような類義語があるのでしょうか。

「有象無象」

種々雑多なつまらない人々の集まりという意味。この言葉は集まっているそれぞれの人が取るに足らない人間であるということを表しています。

それに対し「烏合の衆」は集まった人々がつまらないのではなくその集団が統制のとれていない、ただの群衆であるということを表しているのです。

\次のページで「「烏合の衆」の対義語は?」を解説!/

「烏合の衆」の対義語は?

それでは続いて対義語をみていきましょう。

「一枚岩」

亀裂の入っていない大きな一枚の岩は頑丈ですね。

組織等でその頑丈な岩のように人々が団結し、まとまっている状態を一枚岩といいます。規律もなく、ただ人々が集まっている状況を示す「烏合の衆」の対義語ですね。

「烏合の衆」の英訳は?

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故事成語の「烏合の衆」。英語ではどのように表現されるのでしょうか。

英文1.  Without a homeroom teacher, the students would be like sheep without a shepherd.

担任の先生がいないと、あの生徒たちはまるで烏合の衆だ。

英文2.  "The soldiers who gathered for money are a disorderly crowd. Don't be afraid," the commander said.

「金目当てに集まった兵士たちは烏合の衆だ。恐れることはない」と指揮官は言った。

英文1の「sheep without a shepherd」は直訳すると「羊飼いのいない羊」。羊飼いがいないと羊たちは統制がとれず滅茶苦茶な行動をとりますよね。そこから「烏合の衆」と訳すことができます。

英文2は「disorderly crowd」が「烏合の衆」という意味です。「disorderly crowd」は「無秩序な集団」という意味。「烏合の衆」と訳すことができますね。

\次のページで「「烏合の衆」を使いこなそう」を解説!/

「烏合の衆」を使いこなそう

この記事では「烏合の衆」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「烏合の衆」とは「規律も統一もなく寄り集まった群衆」という意味で、類義語には「有象無象」、対義語には「一枚岩」という言葉があること等がわかりましたね。

「人間が出したゴミをカラスが荒らす」…これは全国的な問題になっています。この問題の解決に力を発揮しているのが鷹。鷹匠が数日間鷹を放つとカラスはどこかへ行ってしまうと言います。仁徳天皇の時代には行われていたという鷹狩がこの現在社会で役立っているとは意外ですね。

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国語言葉の意味

【故事成語】「烏合の衆」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「烏合の衆」について解説する。

端的に言えば烏合の衆は「ただ寄り集まっただけの群衆」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「烏合の衆」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊  雅子。「烏合の衆というけれど、カラスは社会性をもつ生き物なのに…」と思っている彼女が「烏合の衆」という故事成語について解説する。

「烏合の衆」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「烏合の衆」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「烏合の衆」の意味は?

「烏合の衆」には、次のような意味があります。

1.規律も統一もなく寄り集まった群衆。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「烏合の衆」

「烏合の衆」は「うごうのしゅう」と読み、「烏」とはカラスのことです。「烏合の衆」はカラスの群れを比喩に用いて「ただ集まっただけの群衆」という意味を表していて、その群衆には規律も統制もありませんしかし実際のカラスは鳴き声で会話したり、ある程度協力しあったりもするのです。カラスはずっと単独行動をするのではなく、社会的な行動もするということが観察と研究によってわかってきました。

日本で見られるカラスは一般的なハシブトガラス、ハシボソガラスをふくむ7種類。ハシブトガラスは日本全国の市街地や山地(除小笠原諸島)に、アシボソガラスは田畑に生息しています。これらのカラスは翼を広げると1m。結構大きい鳥ですね。

カラスは知能が高いことでも知られています。朝、漁港の傍の信号機に止まってトラックを待ち伏せ。赤信号でトラックが止まるとサッと舞い降り、積み荷の魚をつかんで飛び去ります。また道路にクルミを置いて車にひかせ、硬い殻を割らせるのも有名な話。記憶力も優れていて、追い払ったりした人間の顔を覚え、その人を執拗に追い回したり足や嘴で攻撃したりもします。

「烏合の衆」の語源は?

次に「烏合の衆」の語源を確認しておきましょう。

中国後漢の歴史を記した書物「後漢書 耿弇(こうえん)伝」に「烏合之衆」という表現があります。

後に後漢の初代皇帝劉秀に仕えることになる武将の耿弇が王郎の軍勢と戦い、「烏合の衆のように統率性も団結心もなく、ただ集められただけの兵士の集団は簡単に打ち負かすことができる」と相手に言い放ったことが「烏合の衆」の由来となったということです。

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