この記事では「謹む」について解説する。

端的に言えば謹むの意味は「うやうやしくかしこまる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「謹む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「謹む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「謹む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「謹む」の意味は?

「謹む」には、次のような意味があります。

つつし・む【慎む/謹む】
[動マ五(四)]

1 あやまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。

2 度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。

3 (「謹む」と書く)うやうやしくかしこまる。

4 物忌みする。斎戒する。

謹む」は「うやうやしくかしこまる」という意味です。「つつしむ」で調べると、多くの辞書で「慎む」という漢字とセットで解説されています。しかし、よく読んでみると「謹む」と表記されるのは4つの意味のうち「うやうやしくかしこまる」という場合に限定されていることがわかるはずです。

まずは「慎む」という漢字との使い分けられるようになる必要があります。どちらの漢字を表記するかによって意味が変わりますので、注意しましょう。

「謹む」の語源は?

次に「謹む」の語源を、漢字から紐解いていきましょう。

「謹む」の「言(ごんべん)」を除いた右側の部分は「きん」と読む漢字です。この漢字は、「土」と「黄」がセットになっており、ネバネバした土、つまり粘土を表しています。そんな漢字と「言」が合わさったこの「謹」という漢字は、「言葉を塗りこめるように控えめな態度をとる」という意味として使われるようになったのです。

それが現在では、「控えめ」とは言っても「慎む」と区別され、「うやうやしくかしこまった態度」という意味での「控えめ」を指す表現として使われています。

\次のページで「「謹む」の使い方・例文」を解説!/

「謹む」の使い方・例文

「謹む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.参列した葬儀で、彼は遺族に対して謹んで弔意を述べた。
2.この度の不祥事について、関係の皆様に謹んでお詫びを申し上げます。
3.ご依頼いただきまして、謹んでお受けいたします。

基本的には「謹んで」という形で使用されることがほとんどです。使う場面は幅広く、「謝罪」「感謝」「挨拶」「お悔やみ」「快諾」「お祝い」など、自分の気持ちに何か敬意や礼儀を添えて述べたいときに、この「謹んで」という言葉を前置きすることで、一層丁寧に伝えることができます。ビジネスシーンではもちろんのこと、式典や丁寧な手紙の挨拶文などで柔軟に使える言葉になりますので、ぜひ積極的に使いこなせるようにしておきましょう。

「謹む」の類義語は?違いは?

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「うやうやしくかしこまる」という意味である「謹む」の類義語には、どのような言葉があるでしょうか。一つ一つ確認してみましょう。

その1「畏まる」

かしこまる」という読み方で、ここまで「謹む」の意味を説明する際に何度も登場していた言葉です。「相手を敬う」という意味を基本としており、その点が「謹む」と同義となっています。

違いとしては、「畏まる」はそこから生じる動作(正座をする、お礼を述べる、詫びるなど)まで表現することができる点です。つまり、「相手への尊敬の気持ちを言葉や態度として表している状態」を指す言葉になります。「謹む」にはそうしたニュアンスは含まれず、語源のところで説明したように、むしろ「言動を控えることで敬意を表する」というニュアンスに近いのです。

基本的にはどちらも「敬う」という意味で同義語として扱われますが、こうした違いがあることを理解しておきましょう。

 

\次のページで「その2「畏れる」」を解説!/

その2「畏れる」

畏まる」と同じ漢字を使った言葉ですが、こちらは「おそれる」と読みます。「おそれる」と言っても「恐怖心を感じること」ではなく「畏敬」、つまり「かしこまって敬うこと」を指し、「敬う」という点で「謹む」と同じ意味を持っている言葉です。

この「畏れる」という言葉は、使われる場面に特徴があります。この表現は「自分よりはるかに力のあるものを尊く思うこと」を指し、主に神仏や自然など、人智を超えたようなものに対する「敬意」を表すために使われるのです。人間どうしのコミュニケーションの中で用いられる「謹む」とは、その点で違いがあります。

ちなみに、「畏れる」というのは感情の一つを表す言葉で、具体的な言動を指す表現ではありません。敬意が動作に現れた状態を示す「畏まる」とは、同じ漢字を用いていても、そうした違いがありますので、合わせて理解しておきましょう。

「謹む」の対義語は?

「謹む」は「うやうやしくかしこまること」「相手への敬意」を指す表現であるため、対義語は「敬意がない」「礼儀がなっていない」といった意味になることがわかります。具体的にはどんな言葉が挙げられるでしょうか。

「敬意がない状態」を示す言葉は?

まずは「敬意がない状態」を示す言葉として挙げられるのが「蔑(さげす)む」という表現です。「自分より劣ったものとして人を見下すこと」という意味を持っています。こうした感情の中には、相手への敬意は微塵もありませんよね。

その他にも「相手を軽くみる」「軽んじる」という意味で「侮(あなど)る」という言葉も、「敬意がない状態」として「謹む」の対義語として挙げられます。好んで使いたくない言葉であるからこそ、意味を正しく把握しておきたいところですね。

「礼儀がなっていない状態」を示す言葉は?

次に「礼儀がない状態」を指す言葉についてです。こちらについては「失礼」「無礼」「不躾(ぶしつけ)」「無作法」など、多くの表現が存在します。

どれも「礼を欠くこと」という意味で共通しており、その意味では「謹む」と対義語として定義することが可能です。しかし、その中でも「不躾」「無作法」は「そもそも礼儀を知らない」「わきまえていない」ために礼を欠いている、というニュアンスになります。細かい違いではありますが、この機会にぜひ覚えてほしいです。

「謹む」の英訳は?

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日本語であれば「謹んで」を使えばどんな場面でも幅広く対応できますが、英語で表現する場合は、どういった文脈かによって表現も変わってきます。ここでは特に代表的なものを紹介するので、確認してみてください。

謹むは英語で「humbly」

まず紹介するのは「humbly」という表現です。訳としては「謙遜して」というものになりますが、お詫びの気持ちを述べる際に、より相手へ気持ちを添えたい場合にはこの「humbly」という表現が最適になります。お詫びの英文で「humbly」が使われている場合は「謹んで」と訳して問題ないでしょう。

次に、「敬意を持った態度で」という意味で「謹んで」に表すものとして「with respectful attitude」という表現も使用できます。お礼を言う場面や敬意をはらった行動にこの表現が添えられている場合は「謹んで」と訳すことができるでしょう。

以下に例文を用意していますので、ぜひチェックしてみてください。

\次のページで「「謹む」を使いこなそう」を解説!/

I humbly beg your pardon.
謹んでお詫び申し上げます。


She thanked him with respectful attitude.
彼女は謹んで彼に感謝の意を述べた。

「謹む」を使いこなそう

この記事では「謹む」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「謹んで」という形で、さまざまな場面で相手への敬意を添えることができる表現です。挨拶の例文やテンプレートの中に当然のように盛り込まれていることが多く、これまで気に留めることなく使っていた方も多いかもしれません。せっかく使うのであれば、意味を理解しておく方がいいですよね。

この機会に改めて意味を確認して、気持ちをこめて「謹んで」という表現を使うことができるようになってほしいと思います。

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国語言葉の意味

「謹む」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員がわかりやすく解説!

この記事では「謹む」について解説する。

端的に言えば謹むの意味は「うやうやしくかしこまる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員のminを呼んです。一緒に「謹む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「謹む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「謹む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「謹む」の意味は?

「謹む」には、次のような意味があります。

つつし・む【慎む/謹む】
[動マ五(四)]

1 あやまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。

2 度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。

3 (「謹む」と書く)うやうやしくかしこまる。

4 物忌みする。斎戒する。

謹む」は「うやうやしくかしこまる」という意味です。「つつしむ」で調べると、多くの辞書で「慎む」という漢字とセットで解説されています。しかし、よく読んでみると「謹む」と表記されるのは4つの意味のうち「うやうやしくかしこまる」という場合に限定されていることがわかるはずです。

まずは「慎む」という漢字との使い分けられるようになる必要があります。どちらの漢字を表記するかによって意味が変わりますので、注意しましょう。

「謹む」の語源は?

次に「謹む」の語源を、漢字から紐解いていきましょう。

「謹む」の「言(ごんべん)」を除いた右側の部分は「きん」と読む漢字です。この漢字は、「土」と「黄」がセットになっており、ネバネバした土、つまり粘土を表しています。そんな漢字と「言」が合わさったこの「謹」という漢字は、「言葉を塗りこめるように控えめな態度をとる」という意味として使われるようになったのです。

それが現在では、「控えめ」とは言っても「慎む」と区別され、「うやうやしくかしこまった態度」という意味での「控えめ」を指す表現として使われています。

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