この記事では「目下」について解説する。「目下」は一見簡単な漢字で単純そうに見えるが、実は奥深く注意が必要な単語です。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「目下」の意味や派生語、歴史などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「下」と書いているけど目の前のこと?「目下」の意味とは

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「目下」の意味は以下の通りです。

1 目の前。すぐ近く。眼前。
2 ただいま。さしあたり。現在。副詞的にも用いる。

出典:Weblio辞書「目下 意味」

「目下」と漢字では書きますが、イメージとしては目の「前」に差し迫る物事を指しています。物理的に何かが目の前にあることだけではなく、まさに目の前にあるような直面している出来事という抽象的な意味も持つ言葉です。転じて「さしあたってすぐ」「とにかくやるべきである」という意味にもなります。

「目下」の読み方とは?

「目下」の読み方は「もっか」となります。「目」という漢字は「もく」とも読めることは広く知られているため、予備知識なしでも「もくか」と読むことはできるかもしれません。

正しくは「もっか」となりますが、これはどちらかというと「もくか」と読むよりも「もっか」と呼んだ方が、話す際にスムーズであるため「もっか」という読み方に落ち着いていると推測できます。

\次のページで「「目下」の使い方」を解説!/

「目下」の使い方

「目下」は以下のように使用します。

1.今質問があった件については「目下」対策を検討中です。
2.君の言っていることも分かるが、「目下」の問題を片づけなければ取り掛かることもできない。
3.「目下」考えるべきは1週間後に〆切が迫っている書類のことだ。

1の例文は、「現在」「ただいま」という意味で「目下」を使用している例です。2の例文は少し異なり、「目の前の」「眼前の」という意味になります。3の例文はさらに異なり、「とりあえず」「ひとまず」という意味で使用されている例です。

それぞれ少しづつニュアンスは違うものの、現在かごく近い未来で取り扱わなければいけないことがあるという部分は共通しています。使用する際は「目下の○○」という風に接続詞の「の」を間に挟む場合も多いです。しかし「考える」「扱う」など動詞を続けるときは副詞扱いとなり、「の」はなくなって「目下○○する」というような文になります。

「目下」の類義語とは?イメージが共通している言葉たち

「目下」の類義語は「眼前/寸前/直面/さしあたり/とにかく/たちまち/現在」などです。

「眼前/寸前/直面」などは、目の前に本題となることが差し迫っているという事態をイメージしやすく、比較的思いつきやすい言葉でしょう。「さしあたり/とにかく/たちまち」なども、他の条件を度外視し最優先で手を付けなければならないことという意味を持っているため、考えやすい言葉です。

「現在」は少々考えづらいかもしれませんが、この場合は「今この瞬間」という意味の「現在」ではなく、それに取り掛かっている状況を指し示す「現在」という意味になります。

概念的な「下」を意味する?もうひとつの「目下」とは?

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「目下」には意味がもうひとつあります。同じ言葉で違う意味を持っているというよりは、すべてが違う別の言葉であるが漢字だけ共通していると捉えた方が正しいでしょう。意味は以下の通りです。

地位・年齢などが自分より下であること。また、その人。

出典:Weblio辞書「目下 意味」

\次のページで「「目下」の読み方とは?「もっか」とは言わない?」を解説!/

こちらの「目下」には、「自分より下の者」という意味があります。主に部下など、立場として下位の人間に使用する言葉です。ただ、しばしば相手のことを見下す表現として「目下」と使用される場合もあります。意味合いとしてはシンプルであるため、覚えるのは簡単でしょう。

「目下」の読み方とは?「もっか」とは言わない?

「さしあたって」という意味を持つ「目下」は「もっか」と読みますが、こちらの「目下」は「めした」と読みます。「目」も「下」も特に変わった読み方というわけではないため、推測で読むことも可能です。

対義語となる「目上(めうえ)」はさらに広く知られている言葉であり、「目上の人間」などという言い回しを聞いたことがある人も少なくありませ。読み方としても「めうえ」の反対と捉えれば覚えやすくなります。

「目下」ってどう使うの?

「目下」は以下のように使います。

1.彼女の悪い癖は、「目下」の人に対して偉そうに振る舞うことだ。
2.「目下」の立場とは言っても、わが社とあの会社とはそう差があるわけじゃない。
3.「目下」の人間からの信頼が厚い人は信用がおける。

多くの場合「目下」には「人間/人」などが続きます。人間以外に使ってはいけないという決まりがあるわけではありませんが、人間が主語である場合が多く、それに伴って人を指す言葉を続けるケースが多いです。上下関係が存在する間柄であれば、企業同士や部署同士などの話にも使用することができます。

「目下」の類義語には何がある?

「目下」の類義語は、「部下/手下」など立場上下の者であるという意味を持つ言葉が当てはまります。また、「年齢が下の者」という意味も「目下」に含まれるため、「年下/後輩/若者」なども「目下」の類義語です。

ただ、実際に読み書きをする際はどちらかというと「目下」の方が類義語扱いになり、多くは部下や後輩などの言葉の方が主流として使用されます。これは、単純に「目下」というだけでは、どのような観点から「下」と位置付けられているのか、伝わりづらいという理由が大きいでしょう。

\次のページで「おまけ:体の部位を指す「目下」とは?」を解説!/

おまけ:体の部位を指す「目下」とは?

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「目下」という言葉で検索すると、「目下のたるみ」などの言い回しが出てきます。これは慣用句などではなく、本当に体の部位として目の下の部分を指している言葉です。

実際は「目下」ではなく「目の下」と表記されている検索結果が出てきますが、これは検索エンジンの能力のひとつになります。つまりユーザーが「目の下」とタイピングしようとして、誤って「目下」と打ってしまった可能性があると考え、「目の下」とみなして結果を表示しているわけです。

そのため、実際に日常で読み書きする際は「目下」と書いても原則目の下の部分は指しません。もうすでに「目下」と表記する言葉は存在するため紛らわしく、強いて言うならば美容整形などの業界で使用される程度でしょう。

文章力が試される「目下」

「目下」という言葉は2つの言葉が同じ漢字で表記されており、それぞれ意味はまったく異なります。そのため、生活の上で「目下」を使用する際は、「目下(もっか)」なのか「目下(めした)」なのか区別しなければなりません。読み方は違うため言葉になればすぐに区別がつきますが、文章で読む際は必ずふりがながふってあるとも限らず、自分で判断しなければならない場合の方が多いでしょう。

意味は異なるため、文脈からどちらが適切なのか判断しやすい言葉ではあります。しかし一番問題であるのは、2つの意味のうちどちらか片方しか知らなかった場合です。もしも片方しか知らなかった場合、違和感を感じつつも自分の知っている意味が正しいと思い込み、結果的に間違った受け取り方をする場合もあります。

これを機会に意味を押さえると同時に、文脈で正しい方を選べる文章力を日々養うことが大切です。

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国語言葉の意味

同じ漢字で別の言葉?2つの意味を持つ「目下」の使い方や類義語も言葉大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「目下」について解説する。「目下」は一見簡単な漢字で単純そうに見えるが、実は奥深く注意が必要な単語です。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「目下」の意味や派生語、歴史などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「下」と書いているけど目の前のこと?「目下」の意味とは

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「目下」の意味は以下の通りです。

1 目の前。すぐ近く。眼前。
2 ただいま。さしあたり。現在。副詞的にも用いる。

出典:Weblio辞書「目下 意味」

「目下」と漢字では書きますが、イメージとしては目の「前」に差し迫る物事を指しています。物理的に何かが目の前にあることだけではなく、まさに目の前にあるような直面している出来事という抽象的な意味も持つ言葉です。転じて「さしあたってすぐ」「とにかくやるべきである」という意味にもなります。

「目下」の読み方とは?

「目下」の読み方は「もっか」となります。「目」という漢字は「もく」とも読めることは広く知られているため、予備知識なしでも「もくか」と読むことはできるかもしれません。

正しくは「もっか」となりますが、これはどちらかというと「もくか」と読むよりも「もっか」と呼んだ方が、話す際にスムーズであるため「もっか」という読み方に落ち着いていると推測できます。

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