この記事では、「怒涛」について解説する。
「怒涛の〇〇」っていう表現はよく聞くよな。俺をはじめとして、文脈から『すごい勢い』ってニュアンスを感じ取っているやつも多いでしょう。ですが辞書にある意味をきっちり把握して、漢字の意味まで説明できるか?そこまでできるやつは、あまりいないんじゃないか。ちなみに俺は無理です。
そこで今回は、頭の中でいらないことばかり怒涛のごとく考えている、うだつの上がらないライターのぷーやんを呼んです。「怒涛」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。気にしないほうがいいことばかり、怒涛のように考えてしまう癖を持つ。

まずは「怒涛」の意味から紹介!

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それでは早速、「怒涛」がなにを意味する言葉なのかを押さえていきましょう。

辞書でみる「怒涛」

見慣れない漢字が使われている「怒涛」。辞書引きするには、読み方を知っておかないといけないですよね。「怒涛」は「どとう」と読みます。「怒濤」と表記されることも。「涛」と「濤」は異体字と呼ばれる関係で、「濤」を簡略化して「涛」の字ができました。前置きが長くなりましたが、辞書で「怒涛」を引いてみましょう。

荒れ狂う大波。また、はげしい勢いで押し寄せるようすのたとえ。「逆巻く―」「―のごとく進撃する」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「怒涛」

激しい勢いをイメージさせる「怒涛」は、大波を比喩した言葉だということですね。実は「涛」という字には、「大きい波」という意味があります。「怒涛」は、大きい波がいかり狂ったように打ち付ける様子から、強烈な勢いをもって迫ってくることを表現した言葉と言えそうです。

「怒涛」の使い方を例文でみてみよう!

次に、「怒涛」の使い方を例文でご紹介します。

1.怒涛の攻撃を終始緩めることなく、相手チームに反撃のすきを与えずに圧倒した。
2.『定価の50%以上OFF』を謳った安売りに、怒涛の如く人々が押し寄せた。
3.この1年半は、家の新築・出産・復職と、怒涛の日々を過ごした。

いずれの例文も、目が回るような物事の展開があったことを示していますね。例文1のようにスポーツでは、完膚なきまでに相手を叩きのめすことも礼儀です。例文3は人生の大きなイベントが重なって、大変な日々を過ごしていたことが伺えますね。乳幼児の子育ては、アパートのような集合住宅で隣人に気を遣いながらやるよりも、思い切って一軒家に引っ越したほうが、ストレスフリーでのびのびできるかもしれません。

\次のページで「「怒涛」の類義語3選!」を解説!/

「怒涛」の類義語3選!

「怒涛」という言葉の輪郭をもっとはっきりさせるために、類義語をみてきましょう。

波乱:穏やかな状態が崩れて、乱れていること

もともとは「波瀾」と書き、「瀾」は「涛」と同じく大きい波を意味します。第二次大戦後に漢字の利用に関する見直しが行われた際、難しい「瀾」の字が使用されなくなり「乱」の字があてられた、という経緯。したがって「波乱」はもともと「波」と「瀾」、すなわち「大きい波と小さい波」という意味で、状態が安定していないことを示します。

激変:急激に変化すること

「怒涛」と表わされる押し寄せる大波は、物理的にも精神的にも安定を脅かすものでしょう。激しい変化を意味する「激変」は、このような「怒涛」の持つパワーを象徴していますね。ちなみに「激変」は「劇変」とも表記されます。「劇」も「劇薬」などと使われるように、「激しい」という意味を持つ漢字です。

畳み掛ける:余裕を与えずにはたらきかける

「畳み」は「折り重ねる」という意味。したがって「畳み掛ける」は「重ねて掛ける」となり、つまり「幾重にもはたらきかける」という意味になります。間断なく仕掛けていくイメージが、「怒涛」の意味と重なりますね。

「怒涛」の対義語はなにがある?

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類義語の次は対義語をみていきましょう。

さざ波:細かく立つ波

漢字で書くと「細波」もしくは「小波」です。荒れ狂った波を指す「怒涛」の、直接的な対義語と言えますね。比喩表現で「さざ波が立つ」と言った場合は、「うまくいっていたことや関係に、小さい不和が現れる」ことを意味します。小さいながらもネガティブな兆候をほのめかす言葉である点に、使う折にはご注意を。

平穏:変わったこともなく、穏やか

「怒涛」の「激しい勢い」と反対の意味の言葉です。「無事」が先頭にくっついて「平穏無事」という四字熟語にも。こうなるとさらに意味が強調されて、変化がなく穏やかに過ごしていることを表します。

\次のページで「静謐:静かで安らか」を解説!/

静謐:静かで安らか

読み方は「せいひつ」です。「謐」の字は、「やすらか」や「ひっそりと静まっている」ことを表します。

「怒涛」の英語表現は?

「怒涛」の類義語と対義語をみてきました。言葉の意味合いの理解を補完するには、英語表現を知っておくことも有効です。そこで、「怒涛」が英語ではどのように言われるのかをみていきましょう。

angry waves:怒涛

「angry(怒りの)」+「waves(波)」の組み合わせです。比喩ではなく、「怒涛」の直訳ですね。

rage:激怒・猛烈

「激怒」「猛烈」などと日本語訳される単語。ちなみに北野武監督の映画『アウトレイジ』は英語表記すると「outrage(非道・憤慨)」ですが、この単語は「rage」とは無関係です。

hectic:興奮した

「興奮した」「多忙を極めた」などといった意味。やや意訳になりますが、「多忙で余裕がない」ことを「怒涛」というときに使うことができます。

ドイツ文学にも登場?四字熟語「疾風怒涛」

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それでは「疾風怒涛」の意味と、ドイツ文学でなにを指す言葉なのかをご紹介していきましょう。

「疾風怒涛」の意味とは?

「疾風怒涛」を辞書で引くと、次のように書かれています。

\次のページで「「疾風怒涛」はドイツ文学の革新運動のこと!」を解説!/

激しい風と荒れ狂う波の意。また、時代が激しく変化することの形容。▽「怒濤」は荒れ狂い逆巻く波。ドイツ語「シュトルム‐ウント‐ドラング」の訳語で、十八世紀後半ゲーテらを中心に展開された文学革新運動をいう。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂) 「疾風怒涛」

荒い波である「怒涛」と、激しい風である「疾風」が組み合わさった語ということですね。また辞書にある通り、語源はドイツ語の「シュトゥルム(嵐)‐ウント(そして)‐ドラング(衝動)」です。

「疾風怒涛」はドイツ文学の革新運動のこと!

18世紀後半のドイツでは、文学の革新運動が起こりました。その内容は、端的に言えば合理・形式主義(理性)から非合理・個人主義(感情)への変化です。それまで主流だった古典主義や啓蒙主義は、均整・調和や理性・合理性に重きをおいた考え方でした。これに対し、感情や主観に重きをおいた「ロマン主義」と呼ばれる考え方が勃興します。

ここに至る革新運動のことを、当時制作された戯曲名から取って「シュトルム‐ウント‐ドラング」と呼ぶように。そしてこの和訳が「疾風怒涛」とされました。「ロマン主義」では恋愛が賛美され、民族意識を高めるような特徴があります。代表的な作家としては、ゲーテやシラーが挙げられるでしょう。

「怒涛」の中にもしっかり自分を持つことが大切

この記事では「怒涛」の意味について解説しました。また「疾風怒涛」をキーワードに、ドイツ文学の革新運動(シュトルム‐ウント‐ドラング)についても触れています。

気候変動・世界的な疫病の蔓延・経済の崩壊・戦争など、世界には大きなうねり(まさに怒涛)がしばしば起こってきました。身近なところでも、ショッキングなニュースや流行り廃りに、自分の考え方や行動が左右されることもあるでしょう。しかしその中にあっても、絶対に譲れない自分軸を持っておくことは、他者の考えに左右されず『自分の人生を生きる』ために大切なこと。とりわけ情報過多な現代にあっては、その重要性が増しているのではないでしょうか。

この記事が「怒涛」の理解と、強い自分を持つことを意識するきっかけになりましたら幸いです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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国語言葉の意味

「怒涛」は大波?「怒濤」との違いとは?意味や使い方・類語・英語訳をwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「怒涛」について解説する。
「怒涛の〇〇」っていう表現はよく聞くよな。俺をはじめとして、文脈から『すごい勢い』ってニュアンスを感じ取っているやつも多いでしょう。ですが辞書にある意味をきっちり把握して、漢字の意味まで説明できるか?そこまでできるやつは、あまりいないんじゃないか。ちなみに俺は無理です。
そこで今回は、頭の中でいらないことばかり怒涛のごとく考えている、うだつの上がらないライターのぷーやんを呼んです。「怒涛」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。気にしないほうがいいことばかり、怒涛のように考えてしまう癖を持つ。

まずは「怒涛」の意味から紹介!

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それでは早速、「怒涛」がなにを意味する言葉なのかを押さえていきましょう。

辞書でみる「怒涛」

見慣れない漢字が使われている「怒涛」。辞書引きするには、読み方を知っておかないといけないですよね。「怒涛」は「どとう」と読みます。「怒濤」と表記されることも。「涛」と「濤」は異体字と呼ばれる関係で、「濤」を簡略化して「涛」の字ができました。前置きが長くなりましたが、辞書で「怒涛」を引いてみましょう。

荒れ狂う大波。また、はげしい勢いで押し寄せるようすのたとえ。「逆巻く―」「―のごとく進撃する」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「怒涛」

激しい勢いをイメージさせる「怒涛」は、大波を比喩した言葉だということですね。実は「涛」という字には、「大きい波」という意味があります。「怒涛」は、大きい波がいかり狂ったように打ち付ける様子から、強烈な勢いをもって迫ってくることを表現した言葉と言えそうです。

「怒涛」の使い方を例文でみてみよう!

次に、「怒涛」の使い方を例文でご紹介します。

1.怒涛の攻撃を終始緩めることなく、相手チームに反撃のすきを与えずに圧倒した。
2.『定価の50%以上OFF』を謳った安売りに、怒涛の如く人々が押し寄せた。
3.この1年半は、家の新築・出産・復職と、怒涛の日々を過ごした。

いずれの例文も、目が回るような物事の展開があったことを示していますね。例文1のようにスポーツでは、完膚なきまでに相手を叩きのめすことも礼儀です。例文3は人生の大きなイベントが重なって、大変な日々を過ごしていたことが伺えますね。乳幼児の子育ては、アパートのような集合住宅で隣人に気を遣いながらやるよりも、思い切って一軒家に引っ越したほうが、ストレスフリーでのびのびできるかもしれません。

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