この記事では「懸想」について解説する。

端的に言えば懸想の意味は「恋慕う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「懸想」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を活かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい言葉で解説していく。

「懸想」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「懸想」という言葉の意味をご存じですか?古文で使われることが多く言葉だけ見てみると難しそうに感じますが、意味をしっかりと理解してしまえば難しい言葉ではありません。

それでは早速、「懸想」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「懸想」の意味は?

「懸想」には、次のような意味があります。

異性に思いをかけること。恋い慕うこと。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「懸想」は「けそう」と読み、恋をする、惚れるなど、誰かに対して恋愛感情を持つことを意味する言葉です。昔は、「愛してる」などの相手に思いを伝える直接的な表現は避けるべきと考えられていました。そのため、「懸想」という言葉で気持ちを表現していたのです。また、辞書では「懸想」の対象は異性と限定されています。しかし、ジェンダーに対して多様な考え方が広がっている現代では、性別問わず使用することができるのではないでしょうか。

「懸想」の語源は?

次に「懸想」の語源を確認しておきましょう。

もともと「懸想」は「けんそう」と読まれていました。しかし、「ん」が省略されて読まれるようになったため、現在は「けそう」と読むのが一般的です。「懸想」は「懸」と「想」で構成されます。「懸」はつなぐ、離れないようにする、「想」は心に浮かべるという意味を持ち、この2つが組み合わされることで意中の相手を心に思い続けるという意味を持つようになりました。そして、それが今日でも使われている異性に思いをかけるという意味になったのです。

\次のページで「「懸想」の使い方・例文」を解説!/

「懸想」の使い方・例文

「懸想」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あの時に経験した叶わない懸想の痛みを今も忘れることができない。
2.彼女は学生時代からずっと、大学のサークルの先輩に懸想している。
3.昔、男ありけり。懸想じける女のもとに(出典:伊勢物語 第三段)

3つの例文を挙げました。それではひとつずつ解説を見ていきましょう。

例文1は、叶わなかった恋愛感情を痛みを今も忘れることができないということを表しています。ここでは、「懸想」が名詞として使用されているところがポイントです。

例文2では、「懸想」の後に「する」をつけることで動詞として使用しています。「ずっと懸想している」で、ずっと想い続けているという意味になるのです。

例文3は、伊勢物語 第三段からの引用文で、現代語訳は「昔、男がいた。その男が思いを寄せている女のもとへ」と訳されます。昔は、男性が女性に思いを寄せる際に「懸想」が使われていましたが、今日では女性から男性に思いを告げるのも一般的。また、トランスジェンダーに対する理解も深まっていているので、幅広いシーンで使うことができるでしょう。

「懸想」の類義語は?違いは?

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異性に思いをかける、恋慕うことを表現するには、他にどのような言い回しがあるのでしょうか。

その1「片思い」

「片思い」は「かたおもい」と読み、一方だけが相手を恋慕うという意味を持つ言葉です。相手を恋慕うという意味を持つ点では「懸想」と共通しています。しかし、「片」という漢字が付いている分、「片思い」のほうが片方だけが恋慕っているという意味合いが強くなるのです。

\次のページで「その2「恋慕」」を解説!/

1.高校の時に片思いをしていた先輩と10年ぶりに再会し、実は両想いであったことを知った。

2.バレンタインに、片思いの相手に手作りチョコをプレゼントして思いきって告白をした。

その2「恋慕」

「恋慕」は「れんぼ」と読み、相手を恋慕うことを意味し、「懸想」と同様に恋愛感情を表現する言葉です。「恋慕」の「慕」は、慕ったり思いを寄せたりすることを表し、そこに「恋」という漢字が組み合わされることで、恋する思いを寄せるという意味になります。

1.彼女に恋慕するあまり、ずっと上の空で他のことが手につかない。

2.この作品は、作者が実在の女性に恋慕している気持ちが強く綴られている。

その3「恋煩い」

「恋煩い」は「こいわずらい」と読み、ある人を恋慕う気持ちが募るあまり病気のようになることを意味する言葉です。あまりにも誰かのことを好きになりすぎて、食事が喉を通らなくなったり、仕事や勉強が手につかなくなることを恋の病と言いますよね。「恋煩い」はそのような状態を表す言葉なのです。「懸想」と意味は似ていますが、「恋煩い」は生活に支障が出る点に意味の違いがあります。

1.彼女は非常に淡白な性格をしているので、恋煩いとは無縁だろう。

2.恋煩いで食事も喉を通らない友人を見ていると、こちらも心配になってくる。

「懸想」の対義語は?

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「懸想」には明確な対義語はありません。恋慕うと反対の意味になるであろう言葉をしいて挙げるなら以下のようになるのではないでしょうか。

\次のページで「その1「無関心」」を解説!/

その1「無関心」

「無関心」は「むかんしん」と読み、相手に興味を示さないこと、気にかけないことを意味する言葉です。好きの反対は無関心とも言ったりしますよね。相手に嫌われることよりも、何も興味を示してもらえない方が辛い場合もあるのかもしれませんね。また、恋愛についてだけでなく、趣味や人間関係に関心を持たないなど、広い意味で使われます。

1.いくらアプローチしても彼は私に無関心なままなので、もう諦めるしかないのだろうか。

2.彼はたいがいのことには無関心だが、唯一の趣味である音楽のことになると人が変わったように話し出す。

その2「嫌悪」

「嫌悪」は「けんお」と読み、嫌い憎むこと、ひどく嫌うことを意味する言葉です。何かに対する我慢しがたい不快な感情を表し、マイナスなイメージを持つ対象に使用されます。「けんあく」と読み間違えることが多いので注意してください。

1.彼の度が過ぎたアプローチは、好意を持つどころか嫌悪の情さえ覚える。

2.いくら仕事の早い先輩でも、後輩への思慮の欠けた言動には嫌悪の念を抱かざるを負えない。

「懸想」を使いこなそう

この記事では「懸想」の意味・使い方・類語などを説明しました。

この言葉は「異性に思いをかける」という意味を持ち、誰かに対して恋愛感情を持つことを表す言葉です。「懸想」は名詞ですが「する」を付けて動詞としても使用できます。また、辞書には異性が対象と書かれていますが、現代では性別問わず使うこともできるでしょう。

類義語として「片思い」「恋慕」「恋煩い」を挙げました。また、「懸想」には明確な対義語はありませんが、反対の意味として「無関心」「嫌悪」を挙げているので意味の違いを確認しておきましょう。

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国語言葉の意味

「懸想」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒現役ライターがわかりやすく解説!

この記事では「懸想」について解説する。

端的に言えば懸想の意味は「恋慕う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「懸想」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を活かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい言葉で解説していく。

「懸想」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「懸想」という言葉の意味をご存じですか?古文で使われることが多く言葉だけ見てみると難しそうに感じますが、意味をしっかりと理解してしまえば難しい言葉ではありません。

それでは早速、「懸想」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「懸想」の意味は?

「懸想」には、次のような意味があります。

異性に思いをかけること。恋い慕うこと。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「懸想」は「けそう」と読み、恋をする、惚れるなど、誰かに対して恋愛感情を持つことを意味する言葉です。昔は、「愛してる」などの相手に思いを伝える直接的な表現は避けるべきと考えられていました。そのため、「懸想」という言葉で気持ちを表現していたのです。また、辞書では「懸想」の対象は異性と限定されています。しかし、ジェンダーに対して多様な考え方が広がっている現代では、性別問わず使用することができるのではないでしょうか。

「懸想」の語源は?

次に「懸想」の語源を確認しておきましょう。

もともと「懸想」は「けんそう」と読まれていました。しかし、「ん」が省略されて読まれるようになったため、現在は「けそう」と読むのが一般的です。「懸想」は「懸」と「想」で構成されます。「懸」はつなぐ、離れないようにする、「想」は心に浮かべるという意味を持ち、この2つが組み合わされることで意中の相手を心に思い続けるという意味を持つようになりました。そして、それが今日でも使われている異性に思いをかけるという意味になったのです。

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