この記事では「落とし前」について解説する。

端的に言えば落とし前の意味は「もめごとなど失敗の後始末をすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大手企業に35年以上勤務し、仕事でたくさんの文章を扱ってきたベテランのKAIKAIを呼んです。一緒に「落とし前」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/KAIKAI

東京の大手企業に35年以上勤務し、仕事でたくさんの文章を扱ってきた経験を持つ。学生時代から国語が得意でことばの意味には自身あり。

「落とし前」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「落とし前」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「落とし前」の意味は?

「落とし前」には、辞書をひくと次のような意味があります。

《もと、てき屋などの隠語》もごとの後始末。また、そのための金品。「けんかの落とし前をつける」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「落とし前」

「落とし前」(おとしまえ)とは、「もめごとなどの後始末のこと」をいう言葉です。ヤクザ映画(えいが)のなかの喧嘩シーンでよく聞くセルフで、「落とし前をつけろろ」などとすごんでいる場面が目にうかびますね。あるひとの不祥事やあやまちに対して「責任をとって欲しい」という願望を表現しているものです。このように、「落とし前」は「落とし前をつける」というフレーズで使われます。

「落とし前をつける」の「前」はもともとは金額の意味で、「つける」は「ものごとを決着させる」という意味です。「結論づける」などと使われます。

「落とし前」の語源は?

「落とし前」は、縁日に露店商を営む香具師(やし・やくざや的屋のこと)が使っていた用語で、露店などのまわりで買い物客と価格交渉の折り合いをつけるため、適当な価格にまけてあげることを「落とし前」と言いました。それが転じて、争いごとなどの間に入ってうまく収めることの意味になり、それがさらに転じて、面倒な内容のことの後始末をすることを言う言葉になりました。なお、「落とし前」の「前」は「金額」の意味です。

\次のページで「「落とし前」の使い方・例文」を解説!/

「落とし前」の使い方・例文

「落とし前」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.おかげで損害を受けた。この落とし前はどうしてくれるつもりだ。
2.落とし前をつけるまで、ここから帰さないからな。
3.あいつをチームから外すことで落とし前はついた。

「落とし前」は必ず「落とし前をつける」という言いうフレーズで使われます。いずれの例文も日常生活ではほとんど使われることがなく、ヤクザ映画やアニメ動画などでよく聞かれるセリフですね。どの例文も、失敗や不祥事に対してどう後始末をつけるのかと言ったことの問いかけというよりは、むしろ脅しととらえることができます。日常生活では言われたくない言葉ですし、使うのも控えたい言葉ですね。

「落とし前」の類義語は?違いは?

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その1「けり」

「けり」とは、もっぱら「けりをつける」というフレーズで使われます。「もめごとなどの決着をつける」という意味です。「落とし前をつける」に比べてやや穏やかな響きがあります。そのためいろんなシーンで使われ、特にビジネスシーンでは「仕事の決着をつける」といったように、また、勉強のシーンでも「この難問にけりをつけたい」なのと使われるのです。さらに、自分自身に対しても「進学の悩みにけりをつける」といったように使われます。

\次のページで「その2「後始末」」を解説!/

その2「後始末」

「後始末」(あとしまつ)は、「あとかたづけをする」という意味と、「いろんなことの事後処理をする」という意味があります。後者の意味で「落とし前」の類義語となるのです。日常生活でもよく使われ、もめごとに対するだけでなく広くいろんな意味で使われています。「落とし前」や「けり」をもっとやさしく、通常の言い方にした言葉とも言えますね。「昨日の喧嘩の後始末をしてもらう」などと言います。

相手を威嚇する場合、「後始末をしてもらおう」と言っても、なんだか迫力はありません。やっぱり「落とし前をつけてもらおう」と言う方が断然迫力があります。

「落とし前」の対義語は?

「落とし前」の対義語は何でしょうか。

その1「なあなあ」

「落とし前」の対義語は「なあなあ」です。感動詞の「なあ」を重ねたもので、「適当にすませる」という意味になります。「落とし前」が「きっちりけじめをつける」という意味なので、ほどほどに、いいかげんにすませる「なあなあ」は反対の意味と言えるのです。「反対の意見があったが、なあなあに済ませることにした」などと使われます。

その2「適当」

「適当」は、「うまくあてはまること」「ほどよいこと」と言う意味と、「いいかげんであること」の意味とがあります。後者の意味で、きっちり処理をするという意味の「落とし前」とは反対の意味になるのです。「政府が適当な回答をして国民をだますことは許されない」などと使われます。

「落とし前」の英訳は?

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「落とし前」は英語では何と言うのでしょうか。

「How would you pay for this」

英語で日本語の「落とし前」の意味で使われるのは「How would you pay for this」です。単語としては該当がなく、このような慣用句で表現されます。金銭的のみならず道徳的なことに対しても使われるのです。また、事の大小にかかわらずを問わず使われます。例えば、小さな約束を破られたときだけではなく、仕事で重大なミスをされたときにも使うのです。

以下に例文をあげます。

\次のページで「「落とし前」を使いこなそう」を解説!/

You had stolen my money. How would you pay for this?(あなたは私のお金を盗んだ。落とし前をつけてもらう)
You have crused your car into my bicycle .How woulr you pay  for this?(車を私の自転車に衝突させた。落とし前をつけてもらおう)

「落とし前」を使いこなそう

「落とし前」は日常(にちじょう)めったに使われる言葉ではありません。「落とし前をつけてもらう」と言う場合は、重大な責任問題がある場合にだけ限定してつかうようにしましょう。また、逆に他人からそういわれたら、相当の覚悟を決めて対処するようにしましょうね。いずれにしても、「落とし前」はわたしもあなたも、映画やアニメなどの世界で楽しむだけの言葉としておくのが一番オススメです。

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国語言葉の意味

「落とし前」の意味や使い方は?例文や類語をたくさんの文章を扱ってきたライターがわかりやすく解説!

この記事では「落とし前」について解説する。

端的に言えば落とし前の意味は「もめごとなど失敗の後始末をすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大手企業に35年以上勤務し、仕事でたくさんの文章を扱ってきたベテランのKAIKAIを呼んです。一緒に「落とし前」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/KAIKAI

東京の大手企業に35年以上勤務し、仕事でたくさんの文章を扱ってきた経験を持つ。学生時代から国語が得意でことばの意味には自身あり。

「落とし前」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「落とし前」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「落とし前」の意味は?

「落とし前」には、辞書をひくと次のような意味があります。

《もと、てき屋などの隠語》もごとの後始末。また、そのための金品。「けんかの落とし前をつける」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「落とし前」

「落とし前」(おとしまえ)とは、「もめごとなどの後始末のこと」をいう言葉です。ヤクザ映画(えいが)のなかの喧嘩シーンでよく聞くセルフで、「落とし前をつけろろ」などとすごんでいる場面が目にうかびますね。あるひとの不祥事やあやまちに対して「責任をとって欲しい」という願望を表現しているものです。このように、「落とし前」は「落とし前をつける」というフレーズで使われます。

「落とし前をつける」の「前」はもともとは金額の意味で、「つける」は「ものごとを決着させる」という意味です。「結論づける」などと使われます。

「落とし前」の語源は?

「落とし前」は、縁日に露店商を営む香具師(やし・やくざや的屋のこと)が使っていた用語で、露店などのまわりで買い物客と価格交渉の折り合いをつけるため、適当な価格にまけてあげることを「落とし前」と言いました。それが転じて、争いごとなどの間に入ってうまく収めることの意味になり、それがさらに転じて、面倒な内容のことの後始末をすることを言う言葉になりました。なお、「落とし前」の「前」は「金額」の意味です。

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