この記事では「専ら」について解説する。「専ら」は読み方こそ難しいが、意味はとても日常的であり、シーンを問わず使いやすい言葉です。難読にあたる言葉ゆえに、ひらがなで書かれていることも多いから、読み方さえわかれば意味もピンとくるというケースも多いでしょうな。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「専ら」の意味や派生語、類義語などを見ていきます。
ライター/sasai
元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。
【一】[副]他はさしおいて、ある一つの事に集中するさま。また、ある一つの事を主とするさま。ひたすら。ただただ。
【二】[形動ナリ]専念するさま。また、主要・肝要なさま。
出典:Weblio辞書「専ら 意味」
「専ら」は「専念する」という意味であり、漢字から意味を推測するのが比較的簡単です。ただひとつのことに集中するというニュアンスがあると捉えておきましょう。また、「主だった」という意味も持っています。上記の2つの意味は似て非なることながら、実際に文章中で出てくると区別のつきづらい言葉です。
「専ら」は「もっぱら」もしくは「もはら」と読みます。調べると、どちらの読み方であっても意味は同様とし、相互に解説されている場合が多いです。自分で読む際はどちらの読み方であっても間違いにはなりません。しかし、一般的には「もっぱら」と読んだ方が音として読みやすく、日常的に使われる際も「もっぱら」読みの方を採用される場合が大半です。
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「専ら」は難読の言葉に当てはまります。そのため、日常で使用される際はあえて漢字表記を使わず、「もっぱら」とひらがなで表記されることも少なくありません。このように、漢字で書けるけれどあえてひらがなで使用することを「漢字を開く」と言います。
難読の言葉にはしばしば見られることですが、特に「専ら」は言葉そのものが短く、ひらがなにしても読みづらいということもないため、開かれていることが多いです。
「専ら」は以下のように使います。
1.最近の趣味は「専ら」ガーデニングだ。
2.彼は「専ら」あのプロジェクトの作業ばかりこなしている。
3.これは「専ら」小売店を相手にした事業となるだろう。
1、3の例文はどちらかというと「主に」という意味で受け取れます。2の例文は「専念している」という意味で、そればかりこなしているという意味で捉えられるでしょう。しかしいずれにしろ、「主に」という意味でも「専念している」という意味でも文章として間違いではありません。「専ら」という言葉の判断の難しさが、例文ひとつとってもよくわかります。
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「専ら」はどちらかというと日常的な言葉です。何気ない会話の中で使われることが多い言葉ですが、「専ら」を用いた派生用語も存在しています。用語の意味だけではなく、「専ら」がどのように使われているかも含めて知識を深めていきましょう。
「専ら物」という言葉をご存知ですか?古紙・古繊維(古着などのこと)・空きびん・鉄くずの4つのことです。状況に応じて「専ら物はあっちへ置いてください」などという文脈で使用されます。ただし、必ず4つ全部揃った状態を指しているわけではなく、1種類だけであっても「専ら物」のひとつであることは変わりません。
「専ら物」というのは略称で、正式には「専ら再生利用(リサイクル)の目的となる廃棄物」を指しており、一番最初と一番最後を取って「専ら物」です。真ん中の部分が丸々略されているため、予備知識なしで聞くとごみ関連の言葉だとはわかりませんが、日々仕事で携わっている人には「専ら物」というだけで通じます。業界用語と言っても良いでしょう。
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\次のページで「その2:「専ら派遣」はただの派遣社員のことではない」を解説!/
「専ら派遣」の「派遣」というのはいわゆる派遣社員の「派遣」であり、意味は派遣元事業者が、派遣社員を特定の一社または複数者に限定して派遣するという意味になります。派遣社員の派遣される先が特定の企業に限定されるため、「専ら同じ所への派遣」という意味の言葉です。
「専ら派遣」は上記の通り派遣事業について使用される言葉ですが、現在は「専ら派遣」はやってはいけないこととして禁止されています。本来、派遣社員側は待遇に納得できなければ他の派遣先を選択できますが、「専ら派遣」の場合は派遣元が派遣先を指定してしまうため、労働者の権利が極端に弱くなってしまうためです。
しかし、禁止されているからと言って「専ら派遣」という言葉が使われないというわけではありません。覚えておきましょう。
「専ら」という言葉は、実は各種法律でたびたび出てくる言葉でもあります。上記トピックで解説した「専ら物」もその例の一つであり、「専ら再生利用(リサイクル)の目的となる廃棄物」という言葉は実際に廃棄物処理法などに記載があるのです。そのため、これから先の未来で新しい法律が制定された場合、新しく「専ら」が繋がる言葉が生まれるかもしれません。
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「専ら」という言葉には大別して2種類の意味があります。「専念している」、もしくは「主に」のどちらかの意味になりますが、「専ら」という言葉を使用している場合は区別がつきづらいですが、類義語に置き換えるとそれぞれのニュアンスの違いがはっきりと表れるようになるのです。そのため、置き換えの際は文意を誤らないよう注意してください。
「ただ/ひたすら/専念する」はいずれもほぼ同様の意味であり、それにばかり集中している様子を表します。「専用/専門」は、置き換え可能な言葉というよりはニュアンスが共通する言葉と捉えた方が良いでしょう。そのまま置き換えてしまうと、文章として誤りが生まれてしまう場合があるため注意が必要です。
「主に/主要に」は「専ら」とほぼ共通の意味を持っています。「大抵」は意味が共通の言葉というより、意訳すると当てはまる言葉と捉えておいた方が良いでしょう。置き換えの際は元の文章からニュアンスが変わらないよう十分注意しましょう。
\次のページで「日常に寄り添う「専ら」」を解説!/
「専ら」は一見すると読みづらく、とっつきにくい言葉ですが、意味はごく一般的です。また、現代ではネットを通じていろいろな情報が簡単に手に入る様になったため、知りたい知識がある際しらべると「専ら」が出てくることも多いでしょう。特に法律の世界では「専ら」はたびたび出現します。そのような時に、「専らって何だっけ?」などと逐一調べなくとも良いように、ぜひ覚えておいてください。