この記事では「頓珍漢」について解説する。

端的に言えば頓珍漢の意味は「つじつまが合わないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「頓珍漢」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「頓珍漢」の意味や語源・使い方まとめ

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「頓珍漢」と書いて何と読むかご存知ですか?聞けばきっと「それ知ってる!」となる言葉だと思います。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「頓珍漢」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「頓珍漢」の意味は?

まず初めに、国語辞典で「頓珍漢」の意味を確認してみましょう。「頓珍漢」には、次のような意味があります。

1.物事のつじつまが合わないこと。見当違いであること。また、そのさま。
2.間のぬけた言動をすること。また、そのさまや、その人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「頓珍漢」

「頓珍漢」は「とんちんかん」と読みます。「頓珍漢なヤツだな」などと言うのを聞いたことがある、もしくは言ったことがある方もあるかもしれませんね。「頓珍漢」は、「物事が行き違ったり前後したりしてわけがわからなくなること。つじつまが合わないで、ちぐはぐになること」「とんまな言動をすること」を表す言葉です。「とんちんかん」という音の響きからも、行違ったりちぐはぐになったりする様子がイメージできますね。そうしたことからも、シリアスな場面よりは比較的コミカルな場面、おもしろいことやそれほど深刻でない場合に使われることの多い言葉です。

「頓珍漢」の語源は?

次に「頓珍漢」の語源を確認しておきましょう。

「頓珍漢」は、鍛冶屋の相槌(あいづち)の音に由来しているのです。鍛冶屋とは、主に鉄ですが、金属を鍛錬して製品を製造する職人やお店のことを言います。時代劇などに登場する刀職人をイメージしてみてください。あれが鍛冶屋さんです。「頓珍漢」は、その鍛冶屋の師が鉄を打つ間に弟子が槌(つち)を入れるため、ずれて響く音の「トンチンカン」を模した擬音語だったのですね。金属を鍛えるためには、熱した金属を叩かなければなりません。その作業は二人一組で行われることが多いのですが、高い技術が必要なのだそうです。熟練した職人さん同士で息が合っていれば「トン、テン、カン」と良い音がするところ、まだ未熟なお弟子さんが入ると的外れなところを叩いてしまい「トン、チン、カン」と掛け合いの途中にずれた音が入ってしまうのだとか。そうして、「とんちんかん」は音が揃わないことからちぐはぐなことを意味するようになり、さらに間抜けを意味するようになったのです。

なお、「頓珍漢」という漢字は、当て字なのですよ。

\次のページで「「頓珍漢」の使い方・例文」を解説!/

「頓珍漢」の使い方・例文

「頓珍漢」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.上司の質問に対して頓珍漢な受け答えをしてしまったので、会話がそこで止まってしまった。
2.会社では、よくみんなから「頓珍漢なことをする奴だな」と言われてしまう。
3.プロジェクトリーダーの案は頓珍漢に思えたが、意外にも人気が爆発したのでいい経験になった。

「頓珍漢」は、つじつまが合わなくてちぐはぐなことを表現する時間の抜けた言動をすることやそのような人を表現する時に使われます。「頓珍漢な〇〇」という形で使われることが多いですが、「この頓珍漢め!」といったように使われることもありますね。多くの人がこうなるはずだと思っていることや、こうなるべきであるという模範のようなものがあるのに対し、それと違う、ずれたような行動を取ることやその様子を表すのに最適な言葉です。「この間抜け!」と言われるよりも、「この頓珍漢!」と言われた方がユーモアや愛を感じるような気がしませんか。「頓珍漢」は、深刻な状況ではなく、思わず笑ってしまうようなやわらかな場面で使うのが似合う言葉ですね。

「頓珍漢」の類義語は?違いは?

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「頓珍漢」の類義語を見ていきましょう。

その1「ちぐはぐ」

「ちぐはぐ」は、「二つ以上の物事が、食い違っていたり、調和していなかったりするさま」を表す言葉です。「靴下をちぐはぐにはく」「ちぐはぐな言動」などと言いますね。「頓珍漢」と少しニュアンスは違いますが、似たように使うことができます。

\次のページで「その2「目茶苦茶」」を解説!/

その2「目茶苦茶」

「目茶苦茶」は「めちゃくちゃ」と読みます。近年では「めちゃくちゃかわいい」「めちゃくちゃ楽しい」といったように、程度のはなはだしさを表す言葉としてよく使われていますね。しかし元の意味は「まったく筋道が通らないこと、度外れなこと」「どうにもならないほどにこわれたり、混乱したりすること」でした。ちなみに、「くちゃ」というのは語調を整えるために添えた語で、「苦茶」は当て字なのです。そんなところも「頓珍漢」と似ていますね。

その3「滑稽」

「滑稽」は「こっけい」と読みます。「言動がおどけていて、おもしろくおかしいこと。また、ばかばかしくておかしいこと」を意味する言葉です。笑いの対象になるようなおもしろいことや、あまりにもばかばかしいことに使われる言葉ですね。「滑稽なしぐさ」「今さら強がっても滑稽なだけだ」といったように使われます。つじつまが合わないという意味は持っていませんが、コミカルな雰囲気を持っているところは「頓珍漢」と同じですね。

その4「荒唐無稽」

「荒唐無稽」は「こうとうむけい」と読みます。「言説などがでたらめでよりどころがないさま」を意味する言葉です。「無稽荒唐(むけいこうとう)」と言う場合もありますよ。とりとめもないこと、でたらめであることというところが「頓珍漢」と似ていますね。

「頓珍漢」の対義語は?

「頓珍漢」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

その1「合理的」

「合理的」は、「筋道立てて考えた際に理に適っているさま、理性的であるさま」を意味する言葉です。道理や論理にかない、むだなく能率的であるさまを表しますから、「頓珍漢」とは反対の意味を持つ言葉であると言えます。

その2「ロジック」

少し変わったところで「ロジック」も「頓珍漢」の反対の意味を持つ言葉であると言えるでしょう。英語の「logic」は「論法、論理」を意味する言葉ですが、日本では、筋道の通った考え方や思考難しくて複雑な物事をわかりやすくシンプルにしていく思考の筋道を表現する場合に「ロジック」という言葉が使われています。「明確なロジックに裏付けされている」などと言いますね。

\次のページで「「頓珍漢」の英訳は?」を解説!/

「頓珍漢」の英訳は?

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「頓珍漢」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

その1「beside the point」

「beside」は「~をはずれて」という意味の単語です。ですから「beside the point」は「要点をはずれた、的外れな」といった意味になります。見当違いであるというニュアンスを表現したい場合には、このように訳すことができますよ。

その2「inconsistent」

「inconsistent」は「矛盾する、調和しないで、無節操の、気まぐれな」といった意味の単語です。つじつまが合わないというニュアンスを表現したい場合には、この言葉を使うのがよさそうですよ。

His explanation is beside the point.(彼の説明は頓珍漢だ。)

What he says is inconsistent with what he does.(彼は言っていることとやっていることが頓珍漢だ。)

「頓珍漢」を使いこなそう

この記事では「頓珍漢」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「頓珍漢」はつじつまの合わないこと、ちぐはぐなこと、間の抜けた言動をすることを表す言葉でしたね。「頓珍漢な人」と言うと、どこか憎めない人がイメージできませんか。相手のしていることがどうも何か食い違っていると感じた時にも、「頓珍漢ですよ」と笑いながら言えばとげとげしい雰囲気にならずに済むかもしれません。「頓珍漢」という言葉は、癒しの要素を含んでいるような気もしてしまいます。みなさんは、どんな風に感じますか。

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国語言葉の意味

「頓珍漢」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「頓珍漢」について解説する。

端的に言えば頓珍漢の意味は「つじつまが合わないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「頓珍漢」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「頓珍漢」の意味や語源・使い方まとめ

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「頓珍漢」と書いて何と読むかご存知ですか?聞けばきっと「それ知ってる!」となる言葉だと思います。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「頓珍漢」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「頓珍漢」の意味は?

まず初めに、国語辞典で「頓珍漢」の意味を確認してみましょう。「頓珍漢」には、次のような意味があります。

1.物事のつじつまが合わないこと。見当違いであること。また、そのさま。
2.間のぬけた言動をすること。また、そのさまや、その人。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「頓珍漢」

「頓珍漢」は「とんちんかん」と読みます。「頓珍漢なヤツだな」などと言うのを聞いたことがある、もしくは言ったことがある方もあるかもしれませんね。「頓珍漢」は、「物事が行き違ったり前後したりしてわけがわからなくなること。つじつまが合わないで、ちぐはぐになること」「とんまな言動をすること」を表す言葉です。「とんちんかん」という音の響きからも、行違ったりちぐはぐになったりする様子がイメージできますね。そうしたことからも、シリアスな場面よりは比較的コミカルな場面、おもしろいことやそれほど深刻でない場合に使われることの多い言葉です。

「頓珍漢」の語源は?

次に「頓珍漢」の語源を確認しておきましょう。

「頓珍漢」は、鍛冶屋の相槌(あいづち)の音に由来しているのです。鍛冶屋とは、主に鉄ですが、金属を鍛錬して製品を製造する職人やお店のことを言います。時代劇などに登場する刀職人をイメージしてみてください。あれが鍛冶屋さんです。「頓珍漢」は、その鍛冶屋の師が鉄を打つ間に弟子が槌(つち)を入れるため、ずれて響く音の「トンチンカン」を模した擬音語だったのですね。金属を鍛えるためには、熱した金属を叩かなければなりません。その作業は二人一組で行われることが多いのですが、高い技術が必要なのだそうです。熟練した職人さん同士で息が合っていれば「トン、テン、カン」と良い音がするところ、まだ未熟なお弟子さんが入ると的外れなところを叩いてしまい「トン、チン、カン」と掛け合いの途中にずれた音が入ってしまうのだとか。そうして、「とんちんかん」は音が揃わないことからちぐはぐなことを意味するようになり、さらに間抜けを意味するようになったのです。

なお、「頓珍漢」という漢字は、当て字なのですよ。

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