この記事では「興る」について解説する。

端的に言えば興るの意味は「勢いが増す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

ドラマやアニメなど、数多くの映像字幕を作成した経験があるNagiを呼んです。一緒に「興る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Nagi

映像翻訳スクール出身。翻訳、チェッカー以外にも、CC字幕(クローズドキャプション)の制作多数。言葉を文字で表現する「字幕」の世界に数多く触れてきた経験を活かして、分かりやすく解説する。

「興る」の意味や語源・使い方まとめ

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興る」の読み方は「おこる」です。いざ読もうとすると読めないという人が多いのではないでしょうか。

それでは早速「興る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「興る」の意味は?

まず、国語辞典に記載されている意味を見てみましょう。「興る」には、次のような意味があります。

新しいものが生じ、勢いが盛んになる。また、ひっそりしていたものが目立つ状態になる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「興る」

「興る」の意味に併せて、同訓異字である「起こる」との意味の違いも確認しておきましょう。一般的に広く使われている「起こる」には「物事や事件が新たに発生する」という意味があります。ここに「盛んになる」という意味合いが入る場合は「興る」を使いましょう。さらに言えば、「興す/起こす」にも同じようなニュアンスの違いがあります。少しややこしく感じるかもしれませんが、どちらも場面によって使い分ける必要があるので、是非覚えてくださいね。

「興る」の語源は?

次に「興る」の語源を確認しておきましょう。「興」という漢字には「4本の手で協力して持ち上げる」という意味があります。この漢字は、各パーツの組み合わせによって作られた会意文字。組み合わさっている字は「舁」と「同」です。「舁」という字には2人で両手をかけて持ちあげるという意味があります。

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「興る」の使い方・例文

「興る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.教授は長年、スイスで興った時計産業の歴史を研究している。

2.日宋貿易の影響は、鎌倉幕府が興ったあとの鎌倉時代にも及んだ。

3.江戸時代中期、国学や蘭学といった新しい学問が興った。

産業・国・学問と、言及しているものはそれぞれ異なりますが、どの例文にも「新しく生まれたことが盛んになる」という意味合いが入っていることが分かりますね。「興る」を「起こる」に置き換えてみるとどうでしょう?なんとなく違和感があるのではないでしょうか。

「興る」の類義語は?違いは?

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ここからは「興る」の類義語を見ていきましょう。「勢いが増す」と同じような意味を持つ言葉を、いくつか紹介していきます。

その1「繁栄する」

繁栄」は「豊かに栄えて発展すること」を表す言葉です。「」の字には「植物の枝葉や株が増える」という基本的な意味合いがあります。「草木が繁(しげ)る」という使い方からも分かりますね。ここから転じて、「動物の数が増える」ことを表す「繁殖」。さらには「人の数が増えてにぎやかになる」意味を持つ言葉も表すようになりました。その代表となる言葉が「繁栄」です。

\次のページで「その2「興隆する」」を解説!/

その2「興隆する」

興隆(こうりゅう)する」も「勢いが盛んになること」を意味します。すでに「興」の字が入っていますね。一方の「隆」は「成長して盛り上がる」という意味の字。「隆起」という言葉からもイメージしやすいですね。

「興」が入った類義語は、他にもいくつかあります。学術の分野や産業などを盛んにするという意味の「振興(しんこう)」。既存のものに対して新しい勢力がおこることを意味する「新興」。急に勢いが盛んになることを意味する「勃興(ぼっこう)」。人の気持を奮いおこすという意味の「作興(さっこう)」など。これらの言葉も合わせて覚えておくとよいでしょう。

「興る」の対義語は?

次は「興る」の対義語を見ていきましょう。「勢いが増す」と反対の意味合いを持つ言葉を紹介します。

その1「滅びる」

「興る」の対義語は「滅(ほろ)びる」です。説明するまでもないと思いますが、「勢いが衰えて消えてなくなる、死ぬ」という意味があります。「滅亡」という言葉もあるように、まさに「興る」と対照的な表現ですね。滅びるは「亡びる」と書くこともできます。

その2「廃れる」

廃(すた)れる」には「盛んだったものが衰える」という意味があります。かつては勢いがあったものが、無残にしぼむさまが見て取れますね。「興る」では上向きだった矢印が、下降線をたどって地面に落ちるイメージが浮かびます。

「興る」の英訳は?

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日本語の「興る」は英語で表現すると、どのようになるのでしょうか?ここからは日本というフィールドを離れて、文化や習慣の異なる英語圏の視点から「興る」の英語訳を見ていきましょう。

その1「flourish」

日本語の「興る」という意味は、英語では「flourish」という単語を使って表すことができます。「flour」の語源は「flower」。「花開く」という意味合いが「繁栄する」につながっていることが分かりますね。その他にも、動植物が成育するという意味の「繁茂(はんも)する」や、商売がうまくいく「繁盛・繁昌(はんじょう)する」といった意味もあります。

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その2「prosper」

prosper」も「繁栄する」という意味がある単語です。語源である「sper」には「希望・望み」という意味があります。そのため「成功することで栄える」という意味合いが強いワードだといえるでしょう。「flourish」と「prosper」は同義ですが、語源からひも解くと、そのニュアンスの違いが分かりますね。

1.It was in the sixteenth century that automotive industry flourished in this city.
この町で自動車産業が興ったのは、16世紀のことである。

2.The Middle East developed and prospered tremendously.
中東は大きな発展と繁栄を遂げた。

「興る」を使いこなそう

この記事では「興る」の意味・使い方・類語などを説明しました。「おこる」を口頭で表現する際は問題ありませんが、文として書く場合は使い分けが必要です。盛んになるという意味合いがあるのにも関わらず「起こる」を使ってしまうと、ニュアンスが変わったり不自然な感じが出てしまいます。意味の違いを意識して、しっかりと使い分けていきましょう。

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国語言葉の意味

「興る」の意味や使い方は?例文や類語を字幕制作者がわかりやすく解説!

「興る」の使い方・例文

「興る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.教授は長年、スイスで興った時計産業の歴史を研究している。

2.日宋貿易の影響は、鎌倉幕府が興ったあとの鎌倉時代にも及んだ。

3.江戸時代中期、国学や蘭学といった新しい学問が興った。

産業・国・学問と、言及しているものはそれぞれ異なりますが、どの例文にも「新しく生まれたことが盛んになる」という意味合いが入っていることが分かりますね。「興る」を「起こる」に置き換えてみるとどうでしょう?なんとなく違和感があるのではないでしょうか。

「興る」の類義語は?違いは?

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ここからは「興る」の類義語を見ていきましょう。「勢いが増す」と同じような意味を持つ言葉を、いくつか紹介していきます。

その1「繁栄する」

繁栄」は「豊かに栄えて発展すること」を表す言葉です。「」の字には「植物の枝葉や株が増える」という基本的な意味合いがあります。「草木が繁(しげ)る」という使い方からも分かりますね。ここから転じて、「動物の数が増える」ことを表す「繁殖」。さらには「人の数が増えてにぎやかになる」意味を持つ言葉も表すようになりました。その代表となる言葉が「繁栄」です。

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