

端的に言えば井の中の蛙大海を知らずの意味は「非常に見識が狭い」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んだ。一緒に「井の中の蛙大海を知らず」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/むかいひろき
ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。
「井の中の蛙大海を知らず」の意味は?
「井の中の蛙大海を知らず」には、次のような意味があります。
自分の狭い知識や考えにとらわれて、他の広い世界のあることを知らないで得々としているさまをいう。井蛙(せいあ)。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「井(い)の中の蛙(かわず)大海(たいかい)を知(し)らず」
「井の中の蛙大海を知らず」にはいくつかの読み方がありますが、「いのなかのかわず たいかいをしらず」が最も一般的です。「蛙(かわず)」はカエルのことを指します。
井戸の中にいるカエルは、その井戸の中がこの世の全てだと思っていて、外に大きな海が存在していることを知りません。そこから「自分の狭い知識や経験にとらわれ、他に広い世界があるのを知らないで得意げになっている」という意味のことわざとしての意味が生まれました。
「井の中の蛙大海を知らず」をすべて言うと長いため、短縮された「井の中の蛙」という形で使用されることも多いです。その場合も意味は「井の中の蛙大海を知らず」と変わりません。
「井の中の蛙大海を知らず」の語源は?
次に「井の中の蛙大海を知らず」の語源を確認しておきましょう。
このことわざは中国からやってた漢籍(中国で著された書籍)が由来だと考えられています。平安時代の終わりごろに編纂された、漢籍から故事成語をまとめた『世俗諺文』に「井底の蛙(カへル)」という項目があり、現代と同じ意味が解説されているそうです。そして由来となった漢籍は、中国の古代の思想家である壮子(そうし)(紀元前369年頃~紀元前286年頃)が著した『荘子』だとされています。その『荘子』の「秋水編」に記載されている「井蛙不可以語於海者、拘於虚也」が、「井の中の蛙大海を知らず」のことではないかと考えられているそうです。
ちなみに、「井の中の蛙大海を知らず」に一文加わった「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」というポジティブな意味のことわざも存在します。こちらは『荘子』には書かれておらず、日本で新たに誕生したものだと考えられていますね。
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