今回は「厚壁組織」という用語について学習していこう。

中学や高校の生物では、ほとんど聞くことがないキーワードかもしれませんね。厚壁組織は植物のからだを支える重要な組織です。”からだを支える仕組み”というのは、植物が効率よく日光を浴びて光合成をするために欠かすことのできないものです。しっかりと学んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

厚壁組織とは?

厚壁組織(こうへきそしき)は、厚壁細胞が集まって構成されている組織です。

植物の茎や根の維管束に多く見られ、植物体を支えるのに重要な役割を果たしています。

厚壁組織をつくっている厚壁細胞は、その名前の通り、厚いをもっている細胞です。

ここでいう「壁」というのは、細胞壁のこと。厚壁組織は、その細胞壁に大きな特徴がある細胞ですので、細胞壁について少し詳しく学んでおきましょう。

\次のページで「1.細胞壁とは」を解説!/

1.細胞壁とは

細胞壁は、細胞膜の外側に存在する構造物で、植物の細胞や菌類、細菌類の細胞にみられます。今回は植物の厚壁組織がテーマですので、話を植物の細胞壁に絞りましょう。

植物の細胞壁の主成分はセルロースという糖類です。セルロースはグルコース分子がたくさん連なった高分子ですが、私たちのおなかの中では分解できません。人間はセルロースを分解する消化酵素をもっていないのです。

中学校の理科でも、この細胞壁については学習するでしょう。細胞壁には「細胞の構造を支える」という機能があります。人間のような骨をもっていない植物が自身のからだを保持できるのは、細胞壁のおかげといっても過言ではありません。

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それくらいしっかりした”強度”をもった細胞壁なのですが…ここで、ちょっと考えてみてください。細胞分裂をした直後の植物細胞の周りにガチガチの硬い細胞壁を張り巡らせてしまったら、細胞が大きくなれないと思いませんか?

それを解決する方法として、植物は成長段階に応じて大きく2種類に分けられる細胞壁を使い分けています。この辺は、学校の授業ではあまり深く触れられないところでしょう。

二種類の細胞壁とは「一次壁」と「二次壁」です。

一次壁と二次壁

一次壁と二次壁

image by Study-Z編集部

一次壁とは、まだ生長の途中にある細胞にみられる細胞壁です。一次細胞壁ともいいますが、これは後ほどご紹介する二次壁に比べてうすい壁になっています。

細胞自体の大きさがまだ変わる可能性があるので、ある程度の伸縮・変形が可能という特徴があるんです。

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一次壁では、セルロースでできた繊維の間を、ヘミセルロースという別の物質がつないでいます。ヘミセルロースはセルロースよりも、比較的繋ぎ変えがしやすい分子です。細胞の成長に応じて切断、繋ぎ変えをおこなうことで、一次壁は伸長を可能にしています。

ここに、ペクチンなど他の成分も複雑に絡み合い、細胞壁は構成されているのです。

\次のページで「リグニンと木化」を解説!/

一方で、細胞が大きくなるような成長が終わり、成熟した植物細胞で形成されるのが二次壁です。二次細胞壁ともよばれます。この二次壁は、一次壁の内側につくられていくものです。

そうですね。一般的に、二次壁は一次壁よりも強度があります。とにかく「硬い!」「強い!」「分解がむずかしい!」というイメージをもってください。

一次壁と二次壁の差を生むのは、それぞれの細胞壁を構成する成分や構造の違いです。どちらも主成分はセルロースですが、二次壁ではリグニンという分子がたくさん含まれていることが多いですね。セルロースやリグニン、その他の物質からできた二次壁は、より強固になります。

リグニンと木化

リグニンが沈着し、分厚い二次壁ができていくことを木化(もっか)といいます。リグニン化、もしくは木質化(もくしつか)とよばれることもありますね。

「木(木質)に化ける」と書くことからも想像できますが、細胞壁の木化によってできるのが、樹木を支える幹です。リグニンが沈着すると、緑色ではなく茶色にみえるようになります。

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さあ、長くなりましたので、このあたりで細胞壁に関する基本的な解説は終わりにしましょう。

今回の主役である「厚壁組織」に話を戻すため、「厚壁細胞」の話をしたいと思います。

2.厚壁細胞

厚壁組織を構成している厚壁細胞は、二次壁が分厚くなり(肥厚し)、リグニンが沈着することで強化された細胞です。完全に成熟すると多くの場合は細胞壁を残し、その中身の原形質は失われてしまいます。

\次のページで「繊維」を解説!/

二次壁ができている細胞ですので、植物が若いときにはあまり目立ちません。生長してくると分化が進むようになるんです。

厚壁細胞は、繊維厚壁異形細胞の2種類に大別することができます。

繊維

細長い形をした厚壁細胞は繊維、もしくは繊維細胞とよばれます。維管束などに存在し、植物のからだを機械的に支えているのは、まさにこの繊維からなる厚壁組織です。木部にある場合には木部繊維、師部(篩部)にある場合は師部繊維などともよばれます。

厚壁異形細胞

厚壁細胞のなかでも、構造が大きく異なるものを厚壁異形細胞といいます。

その特徴によってさらにいくつかの種類に分けられますが、なかでも比較的よくイメージできるのが短形厚壁異形細胞という細胞です。

短形厚壁異形細胞は、円や楕円に近いような形をしている細胞ですが、細胞壁に結晶化したシリカやセルロースを含んでいるという特徴があります。別名は石細胞(せきさいぼう)。梨を食べたときに口の中で感じる「しゃりしゃり」とした独特の食感は、果肉にこの石細胞が含まれているために生じるのです。

厚角組織・厚角細胞とは?

さて、厚壁組織について調べていると、必ずといっていいほど厚角組織(こうかくそしき)や厚角細胞という名前を目にします。厚壁組織と厚壁細胞に良く似た名前ですが、これはどんなものなのでしょうか?

厚角細胞は、厚い一次壁をもっている細胞です。厚壁細胞では二次壁が比較的均等に厚くなりますが、厚角細胞では一次壁の厚さは不均一。とくに隣接する細胞同士の角の部分で厚くなることが多いため、このような名前で呼ばれます。

また、厚角細胞は木化しておらず、ふつうは細胞質も残っている、若く生長途中の各器官にみられる、などの点が、厚壁細胞との大きな違いでしょう。

Plant cell type collenchyma.png
By Snowman frosty at English Wikipedia - Own work, Public Domain, Link

そして、厚角細胞が集まってできたのが厚角組織です。厚角組織の主な役割は、厚壁組織同様、植物のからだを支持することにあります。ただし、厚壁組織よりも柔軟性があり、植物の成長に合わせて形を変えやすいという特徴があるんです。

細胞壁の特徴を述べられるようにしよう

厚壁組織について説明するときにはまず、その細胞壁のもつ特徴をしっかりと理解しておくことが必要になります。”二次壁”や”リグニン”、”木化”などのキーワードをおさえておきましょう。そして、厚壁組織や厚壁細胞のはたらき、厚角細胞との違いがスムーズに言えるようになること。これらがしっかりと説明できるようであれば、中学生・高校生で学ぶ範囲を超えた、かなりレベルの高い知識だといえると思います。

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体の仕組み・器官理科生物

植物の「厚壁組織」って何?細胞壁と何が違うの?現役講師が5分でわかりやすく解説!

今回は「厚壁組織」という用語について学習していこう。

中学や高校の生物では、ほとんど聞くことがないキーワードかもしれませんね。厚壁組織は植物のからだを支える重要な組織です。”からだを支える仕組み”というのは、植物が効率よく日光を浴びて光合成をするために欠かすことのできないものです。しっかりと学んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

厚壁組織とは?

厚壁組織(こうへきそしき)は、厚壁細胞が集まって構成されている組織です。

植物の茎や根の維管束に多く見られ、植物体を支えるのに重要な役割を果たしています。

厚壁組織をつくっている厚壁細胞は、その名前の通り、厚いをもっている細胞です。

ここでいう「壁」というのは、細胞壁のこと。厚壁組織は、その細胞壁に大きな特徴がある細胞ですので、細胞壁について少し詳しく学んでおきましょう。

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