この記事では「冥利に尽きる」について解説する。

端的に言えば冥利に尽きるの意味は「これ以上ないほどに幸せに思うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「冥利に尽きる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「冥利に尽きる」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「冥利に尽きる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

冥利に尽きる」は「みょうりにつきる」と読みます。日常会話でもしばしば使われる身近な表現ですね。しかし「冥利」とは何か、その由来を知っている人は少ないかも知れません。これを機会にしっかりと覚えましょう。それでは早速「冥利に尽きる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「冥利に尽きる」の意味は?

まず初めに「冥利に尽きる」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「冥利に尽きる」には、次のような意味があります。

1.その立場にいる者として、これ以上の幸せはないと思う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「冥利に尽きる」

2.それ以外のものでは決して味わうことの出来ない、人間として最高の充足感

出典:新明解国語辞典(三省堂)「冥利」

上記の通り「冥利に尽きる」は、これ以上ないほどの充足感や満足感を感じる、と言う意味を持っています。

詳しく言うと「その立場において」と言う意味合いがあり、例えば「教師冥利に尽きる」など、その立場や役職などから、とても充足感や満足感を感じる、と言うことなのです。したがって「男冥利」や「女冥利」、「親の冥利」などと、その人の立場を具体的に示す言葉を前に置くことが多いでしょう。つまり、その立場から何かを行って、それに対してもたらされた結果が、これ以上ないほどの幸福感を感じるものである、と言うことなのです。

単純に幸福や幸せと言うより、行いに対しての結果により幸福感充足感がある、と言うニュアンスがあるので、気をつけましょう。

「冥利に尽きる」の語源は?

次に「冥利に尽きる」の語源を確認しておきましょう。「冥利」とは何のことなのでしょう。

実は「冥利」は、もともと仏教用語でした。「冥」とは、人の智や手が届かない神仏の領域を意味し、「利」は、ご利益の「利」と同じように、幸運なこと、恩恵のことです。仏語における「冥利」とは、よい行いをした報いとして仏様から受ける恩恵、と言うことなのですね。

そして、「尽きる」が、これ以上ない、と言う意味で後ろに付けられました。こうして、「冥利に尽きる」と言う慣用句が、これ以上ないほどの幸せ、充足感、と言う意味で一般に使われるようになったのです。

\次のページで「「冥利に尽きる」の使い方・例文」を解説!/

「冥利に尽きる」の使い方・例文

それでは、「冥利に尽きる」の使い方を実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.自分が出演した映画が大きな賞を受賞したが、主演俳優として役者冥利に尽きると言うものだ。
2.専門家の評価よりも、来店客みんなが笑顔で残さず食べて行ってくれることの方が料理人冥利に尽きると言うものです。
3.これだけ人気が出て多くの子供が夢中になり、さらにアニメ化までされたら作家冥利に尽きるだろう。

例文の通り、「冥利に尽きる」は、具体的な役職や職業を前置することが多いでしょう。これは決まった言い方があるわけでなく、色々な職業や立場に置き換えて使うことができます

また、例文1と2は、自分の気持ちを表すのに「冥利に尽きる」を使っていますが、例文3は、他の人からの目線で「冥利に尽きるだろう」という言い方で用いています。このように、第三者目線で使うこともできますね。

「冥利に尽きる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「冥利に尽きる」の類義語には「果報者」が挙げられます。

「果報者」

果報者」の読み方は「かほうもの」です。実は「果報」もまた仏教用語で、「冥利」と似た意味を持っています。「果報」は前世や現世で行った行動の因縁が幸運や不運として報われることです。しかし、現在において「果報」は、一般的に幸せや幸運と言う意味で使われていますね。そして「果報者」とは、簡単に言えば「幸せ者」と言う意味です。

もともとの仏語では、前世や現世の自分の行いが返って幸運を授かる、と言う意味を持つことを考えると「冥利に尽きる」の類義語としてふさわしいと考えられます。

\次のページで「「冥利に尽きる」の対義語は?」を解説!/

「冥利に尽きる」の対義語は?

image by iStockphoto

「冥利に尽きる」の対義語には「甲斐がない」が挙げられます。

「甲斐がない」

「甲斐がない」は「かいがない」と読みます。この言葉も身近で、日常会話の中でも良く使われますね。

「甲斐」は、交換すると言う意味の古語「かふ」活用形「かひ(かい)」の当て字であると考えられています。「かひがない」とは、もともとは、交換する価値がないと言う意味で、これが転じて、行いに対しての報いが期待外れで心が満たされない、と言う意味になったようです。

「冥利に尽きる」が、「その人の立場において行った事への報いから、これ以上ないほどの幸福、充足感を得た」と言う意味でも用いられますから、「返ってきたものに満足できない、不満である」と言う意味の「甲斐がない」は対義語としてふさわしいでしょう。

「商売冥利」の意味は?

商売冥利」(しょうばいみょうり)と言う言葉があります。この言葉は、商売人冥利に尽きる、と言う表現とは意味が変わってくる場合がありますので紹介しましょう。

一つめは、仏語と同じ意味を持ち、神仏が知らないうちに商いに利益を与えてくれる、と言うことです。二つめに、商人の誇りを持って不当なことやいい加減なことはできない、と言う意味も持っています。これらの意味を持つ「商売冥利」は、近代文学(明治時代)までしばしば使われていますから、覚えておいてくださいね。

また、「商売冥利に尽きる」と言う表現でしたら、一般的な意味の、商売をやっていてこれ以上ない幸せ、と考えて良いでしょう。

「冥利に尽きる」を使いこなそう

この記事では「冥利に尽きる」の意味・使い方・類語などを説明しました。身近な慣用句ではありますが、「みょうりにつきる」と言う読み方は知っていても、漢字を覚えていない人が少なくないでしょう。また、「めいり」と読んでしまう間違いがしばしばあるようですから気をつけましょう。

また、「冥利に尽きる」は、単にプレゼントなどを受け取った時などに、単純に「この上ない喜びだ」と言う意味で使うと不自然ですから気をつけましょう。あくまでも、何か自分が行動したことに対する報いである、と言うニュアンスがありますから注意しましょう。

" /> 【慣用句】「冥利に尽きる」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「冥利に尽きる」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「冥利に尽きる」について解説する。

端的に言えば冥利に尽きるの意味は「これ以上ないほどに幸せに思うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「冥利に尽きる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「冥利に尽きる」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「冥利に尽きる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

冥利に尽きる」は「みょうりにつきる」と読みます。日常会話でもしばしば使われる身近な表現ですね。しかし「冥利」とは何か、その由来を知っている人は少ないかも知れません。これを機会にしっかりと覚えましょう。それでは早速「冥利に尽きる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「冥利に尽きる」の意味は?

まず初めに「冥利に尽きる」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「冥利に尽きる」には、次のような意味があります。

1.その立場にいる者として、これ以上の幸せはないと思う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「冥利に尽きる」

2.それ以外のものでは決して味わうことの出来ない、人間として最高の充足感

出典:新明解国語辞典(三省堂)「冥利」

上記の通り「冥利に尽きる」は、これ以上ないほどの充足感や満足感を感じる、と言う意味を持っています。

詳しく言うと「その立場において」と言う意味合いがあり、例えば「教師冥利に尽きる」など、その立場や役職などから、とても充足感や満足感を感じる、と言うことなのです。したがって「男冥利」や「女冥利」、「親の冥利」などと、その人の立場を具体的に示す言葉を前に置くことが多いでしょう。つまり、その立場から何かを行って、それに対してもたらされた結果が、これ以上ないほどの幸福感を感じるものである、と言うことなのです。

単純に幸福や幸せと言うより、行いに対しての結果により幸福感充足感がある、と言うニュアンスがあるので、気をつけましょう。

「冥利に尽きる」の語源は?

次に「冥利に尽きる」の語源を確認しておきましょう。「冥利」とは何のことなのでしょう。

実は「冥利」は、もともと仏教用語でした。「冥」とは、人の智や手が届かない神仏の領域を意味し、「利」は、ご利益の「利」と同じように、幸運なこと、恩恵のことです。仏語における「冥利」とは、よい行いをした報いとして仏様から受ける恩恵、と言うことなのですね。

そして、「尽きる」が、これ以上ない、と言う意味で後ろに付けられました。こうして、「冥利に尽きる」と言う慣用句が、これ以上ないほどの幸せ、充足感、と言う意味で一般に使われるようになったのです。

\次のページで「「冥利に尽きる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: