端的に言えば俄かの意味は「突然」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は難関私大の文学部を卒業し、表現技法にも造詣が深い十木陽来を呼んです。一緒に「俄か」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/十木陽来
難関私大の文学部卒ライター。現代文芸の表現技法を学びながら趣味で小説を書いたりもしてきた。その知識を使って様々な言葉の意味をわかりやすく丁寧に解説する記事を書いている。
「俄か」の意味や語源・使い方まとめ
皆さんは「俄か」をどう読むかご存じですか? 「俄か」は「にわか」と読みます。現代でもよく使われる言葉ですね。ですが皆さんは「俄か」がどういう意味なのかを理解しているでしょうか。そして「俄か」を正しく使えているでしょうか。
この記事では「俄か」について様々な視点から解説していきたいと思います。それでは早速「俄か」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
「俄か」の意味は?
「俄か」には、次のような意味があります。
1.物事が急に起こるさま。突然。
2.名詞の上に付いて、急にその状態になる意を表す。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「俄か」
「俄か」は「急に」「突然に」という意味です。また、この言葉は名詞を修飾する形になると「急にその状態になる」という意味となります(「俄雨」「俄雪」など)。徐々に変化するような場面では「俄か」は用いられません。
また、「俄か」俄かに湧いたファンということで「俄かファン」の略語で用いられるケースも多いです。「俄かファン」には次のような意味があります。
それまでファンでも何でもなかったのに突然ファンだと公言するようになった人、あるいは、巷で大いに話題となっている人物などについて臨時のファンとなり、世間の盛り上がりに乗じて振舞う人などを指す語。
出典: 実用日本語表現辞典「にわかファン」
「俄かファン」の場合、「俄か」が漢字で書かれることは少ないです。また「にわか」「ニワカ」などと略されることもあり、アイドルやアニメなどのサブカルチャーの愛好家(いわゆるオタク)によってよく用いられます。更に「俄かファン」は流行に便乗しているだけというイメージが強いことから、侮蔑的な意味が込められることが多いです。
「俄か」の語源は?
「俄か」は歴史的仮名遣いでは「にはか」と書く古語から来ており、古くからある日本語ですのではっきりとした語源はわかっていません。ただ「俄」という漢字には「たちまち」「急に」といった意味があるため、それに「にわか」という訓読みがあてられたものと思われます。
また、江戸時代から明治時代にかけては「俄」という即興で行われる芝居がありました。これは「俄狂言」の略語で、歌舞伎の演目の再現や滑稽な話を演じるものが多かったです。即興で演じるから、「俄」つまり素人が演じるから、路上で突然「俄かに」始まり衆目を集めたからなど、名前の由来には様々な説がありますが、どれも「急に」という「俄か」の本来の意味からとられていることがわかるでしょう。
「俄か」の使い方・例文
「俄か」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.せっかくブランドファッションに身を包んだのに、俄かに天気が悪くなってきた。
2.ワールドカップの年になると、サッカーの試合を見たこともないのにファンと公言する俄かが現れる。
例文1は「急に」の意味で用いられています。急に天候が変わるなど、予測できない自然現象で使われることが多いでしょう。また「~に」の形になることがほとんどで、「俄かだ」のように使われることは稀です。
例文2は「俄かファン」の略称として使用されています。例文のように「俄か」と漢字で書くことは少ないです。また、この場合の「俄か」は侮蔑的な意味が込められているので、他人に対して使う際には注意が必要でしょう。
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