

端的に言えば推し量るの意味は「推測する」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
社会生活は「推し量るのがポイントだ」という悟りに達した、読書家ライター伊勢雄真を呼んだ。一緒に「推し量る」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/伊勢雄真
理工学部に所属する現役大学生。読書が好きで自然科学分野から人文学・社会科学まで幅広く読む。
読書で培った様々な知識と理系の勉強で養った論理的思考力で、みなさんを「推し量る」の世界に誘おう。
「推し量る」の意味は?
推し量るの辞書的な意味を見ていきます。推し量るを国語辞典で引いてみると次のような意味が出てきました。
類似の事実を当てはめてみて、検討をつける。推測する。推量する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「推し量る」
「おしはかる」と読みます。「推量」というのが同義語です。「推量」を大和言葉で読むと「推し量る」という意味になります。なので意味は同じでありますし、ニュアンスの違いもありません。
漢字をよく見てみましょう。「推」は手偏に「進」のつくりと二つの部品で構成されています。つくりの方が「すい」という音を表しているのです。「量」は象形文字。金文では、穀物を入れる袋の上にじょうごを付けた姿をかたどっているのが分かります。この形から物事の多さを計測する「量」という現在の意味や形に変化していったのです。
「推し量る」の使い方・例文
それでは「推し量る」の使い方を見ていきます。例文を見てください。
1.相手の心意を推し量る。
2.人気の根拠を推し量る。
3.彼女の心中を推し量る。
4.気持ちを推し量る。
どれも「推測する」と言い換えても意味が分かると思います。1の心中は心・精神という意味になりますね。3の心中は心の中、胸中、内心という意味です。よって、基本的に他者の心の中で思っていることを推測するといった意味で使われがちな言葉になります。なので、「人間の感情」+「推し量る」という意味で使われがちだということは分かっておきましょう。

ここまで「推し量る」の意味や使い方を説明してもらった。ここでは古典文法に出てくる「推量」について軽く復習しておこう。
推量に割り振られているのは「む・むず・らむ・けむ・らし・めり・なり・まし・べし」だ。代表的なものだけ取り上げて解説していくぞ。「む」は単なる推量、「むず」というとちょっと強調される。「らむ」は更に現在にフォーカスが当たって、「現在の推量」という意味だ。「けむ」は逆に過去推量。「らし」は推定だ。現在でも「~らしい」なんて言うな。「めり」は視覚を根拠にした推定だ。「なり」は逆に聴覚、もっと言えば相手の話などから推定するという意味になる。「まし」は反実仮想。事実に反したことを想定することだな。「もし~だったら」といった役になる。べしは強い推量。「きっと~だ」という意味になる。
では、伊勢にバトンを戻して「推し量る」の類語・対義語・英訳を説明してもらおう。
その1「推察」
相手の心の中を思いやるという意味です。
その2「推定」
これは「ある事実を手掛かりに推し量らって決めること」という意味です。他にもこのような意味の熟語は、想定、類推、類知、推知などがあります。どれもなんとなく聞いたことのある言葉ではないでしょうか。
その3「斟酌」
ここからは、あまりなじみのない熟語を2つ紹介します。まずは斟酌です。「しんしゃく」と読みます。意味を辞書を引いて確認してみました。
1.相手の事情や心情をくみ取ること。また、汲み取って手加減すること。
2.あれこれ照らし合わせて取捨すること。
3.言動を控えめにすること。遠慮すること。
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