この記事では「先んじて」について解説する。

端的に言えば先んじての意味は「前もって」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「先んじて」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「先んじて」の意味や語源・使い方まとめ

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「先んじて」という言葉をご存知ですか。何気なく使っているけれど、正しい意味を聞かれると不安という方もあるかもしれませんね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「先んじて」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「先んじて」の意味は?

まず初めに、「先んじて」の意味を国語辞典で確認してみましょう。「先んじて」には、次のような意味があります。

他の人より先に進む。先に何かをする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「先んずる」

「先んじて」は「さきんじて」と読みます。「せんじて」と読みたくなってしまうかもしれませんが、それは誤りですので気をつけましょう。「先んじて」は、動詞「先んじる」の連用形である「先んじ」に接続助詞「て」がついた形。「先んじる」は「先んずる」の上一段化です。「先んずる」には、「人より先に行く、人より前に行う、先手(せんて)を打つ」という意味があります。そこから「先んじて」は「前もって」「予め(あらかじめ)」「先に」を表す表現となりました。

「先んじて」の語源は?

次に「先んじて」の語源を確認しておきましょう。

さきほど「先んじて」は「先んじる」の変形であると説明しました。「先んじる」は、「先にする」を転じた言葉なのです。ですから「人よりも物事を先にする」という意味を持つようになったのですね。

この「先んじる」が用いられた故事成語に「先んずれば人を制す」という言葉があるのをご存知でしょうか。この言葉は『史記』の「項羽本紀(こううほんき)」という章の「先んずれば人を制す、後(おく)るれば則(すなわ)ち人の制する所と為る」からとられました。また、孫氏の言葉に「先んじて戦地に処(お)りて、敵を待つものは佚(いつ)す」というものもあります。同じ意味を持つ「先手必勝」や「機先を制す」ということわざも聞いたことがあるのではないでしょうか。これらはそれぞれ、先に機運をつかみ敵より一歩早く手を打つことが勝利をつかむコツであると述べているのです。何事も人より先に行えば有利な立場に立てるということを教えてくれているのですね。

\次のページで「「先んじて」の使い方・例文」を解説!/

「先んじて」の使い方・例文

「先んじて」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ビジネスでは、他社に先んじて市場性があることを見出すことが必要だ。
2.あなたは、ライバルに先んじて新事実を発見することに成功した。
3.イベント開催に先んじて、準備チームの行動指針を策定した。

「先んじて」は、「〇〇よりも先に」「〇〇よりも前に」ということを表現したい場面で使うことができる言葉です。誰よりも早く行うことで物事を有利に進めるという意味合いもありますし、起こりそうな出来事を予測し、相手や状況が良くなることを案じて準備しておくという意味でも使われます。また、「先んじてご挨拶に伺います」といったように、敬語表現と合わせて使うこともできますよ。

「先んじて」の類義語は?違いは?

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「先んじて」の類義語をいくつか見ていきましょう。

その1「先だって」

「先だって」は「先立って」と書きます。読み方は、「さきだって」です。「せんだって」と読みたくなってしまうかもしれませんが、この場合は誤りになるので気をつけましょう。「せんだって」は「先達て」と書き、「さきごろ、このあいだ」という違う意味を持つ言葉なのです。「先だってお話した件は」などと言いますね。紛らわしいですが、間違えないように注意してくださいね。

「先だって」は、動詞「先立つ」の連用形である「先立ち」の促音便形に接続助詞「て」が付いた形です。「先立つ」には「先頭に立って行く」「順序が先である」「先に死ぬ」「何かをするときにはじめに必要になる」といった意味があります。ですから「先だって」は「他より先に、前もって」を表し、「先んじて」と似た意味を持っているのです。

\次のページで「その2「先駆けて」」を解説!/

その2「先駆けて」

「先駆けて(さきがけて)」は、「他の事項よりも先に」を意味する言葉です。「先駆け」は「まっさきに敵中に攻め入ること」を意味していますので、誰よりも、何よりも先にすることを表しているのですね。「先んじて」と同じように使うことができます。

その3「逸早く」

「逸早く(いちはやく)」は、「真っ先に、他人にさきがけて、すばやく」を意味する言葉です。「いつはやく」と読んでしまわないように注意してくださいね。あらかじめ準備しておくという意味はありませんが、誰よりも早くという意味では「先んじて」と同じように使うことができます。

「先んじて」の対義語は?

「先んじて」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

「後れて」

「先んじる」と反対の意味を持つ言葉として「後れて」が挙げられます。「おくれて」は「遅れて」とも書きますが、「遅れる」の場合は「間に合わない、おそくなる」という意味の言葉です。一方「後れる」と書くと「他のものよりあとになる」という意味の言葉となるのですよ。

「先んじて」の英訳は?

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「先んじて」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

その1「in advance of」

「in advance of」は、「~に先立って、より進んで」を意味します。「advance」は、「前へ進める、前進させる」「進歩する、進展する」などの意味のある言葉です。「in advance of」は、「~より進歩して」「~より前に」などの意味も含みます。

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その2「ahead」

「ahead」は、「前方に、前途に、これから先に」という意味と共に、「先んじて、前もって」という意味も持っています。また「有利な立場に、優勢に」という意味もあるのです。まさに「先んじて」の英訳として使えますね。

It is necessary to inform the office of your visit in advance.(ご訪問に先んじてご連絡いただく必要があります。)

He keeps ahead of any other kids.(彼は他の子供たちより常に先んじている。)

「先んじて」を使いこなそう

この記事では「先んじて」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「先んじて」は、「前もって」や「予め」を意味する言葉でしたね。「先んずれば人を制す」との言葉にもあるように、何事も人より先に行えば有利な立場に立つことができます。先を見越して準備をするというのは簡単なことではありませんが、先んじれば物事を有利に運ぶことができるということを意識するだけでも何かが変わるかもしれません。そんなことを思いながら、「先んじて」という言葉、ぜひ使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

「先んじて」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「先んじて」について解説する。

端的に言えば先んじての意味は「前もって」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「先んじて」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「先んじて」の意味や語源・使い方まとめ

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「先んじて」という言葉をご存知ですか。何気なく使っているけれど、正しい意味を聞かれると不安という方もあるかもしれませんね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「先んじて」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「先んじて」の意味は?

まず初めに、「先んじて」の意味を国語辞典で確認してみましょう。「先んじて」には、次のような意味があります。

他の人より先に進む。先に何かをする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「先んずる」

「先んじて」は「さきんじて」と読みます。「せんじて」と読みたくなってしまうかもしれませんが、それは誤りですので気をつけましょう。「先んじて」は、動詞「先んじる」の連用形である「先んじ」に接続助詞「て」がついた形。「先んじる」は「先んずる」の上一段化です。「先んずる」には、「人より先に行く、人より前に行う、先手(せんて)を打つ」という意味があります。そこから「先んじて」は「前もって」「予め(あらかじめ)」「先に」を表す表現となりました。

「先んじて」の語源は?

次に「先んじて」の語源を確認しておきましょう。

さきほど「先んじて」は「先んじる」の変形であると説明しました。「先んじる」は、「先にする」を転じた言葉なのです。ですから「人よりも物事を先にする」という意味を持つようになったのですね。

この「先んじる」が用いられた故事成語に「先んずれば人を制す」という言葉があるのをご存知でしょうか。この言葉は『史記』の「項羽本紀(こううほんき)」という章の「先んずれば人を制す、後(おく)るれば則(すなわ)ち人の制する所と為る」からとられました。また、孫氏の言葉に「先んじて戦地に処(お)りて、敵を待つものは佚(いつ)す」というものもあります。同じ意味を持つ「先手必勝」や「機先を制す」ということわざも聞いたことがあるのではないでしょうか。これらはそれぞれ、先に機運をつかみ敵より一歩早く手を打つことが勝利をつかむコツであると述べているのです。何事も人より先に行えば有利な立場に立てるということを教えてくれているのですね。

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