

今回は特に「こそばゆい」について解説する。あまり広く使われることがないため、方言だと思われることも多いが実際はどうなのだろう。
大学時代に日本語と日本文学について学び、日本語への愛ゆえに塾講師時代には国語の授業に一際力を入れていたというカワナミを呼んだ。意味や語源、使い方、類義語と共に解説していく。さっそく見ていこう。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/カワナミ
大学時代に日本語や日本文学について学び、日本語の魅力に触れる。塾講師時代に最も力を注いだのは国語の授業だった。言葉を知ると世界が広がると本気で信じている。
「こそばゆい」は方言?共通語?
「こそばゆい」は全国共通語であり、辞書にもきちんと載っています。西日本を中心とした地域では「こしょばい」「こちょばい」といった方言が存在するため、音の似ている「こそばゆい」も方言であると思われることが多いようです。かと言って、東日本側で「こそばゆい」を使っているかというと、残念ながらあまり耳にする機会はないでしょう。最近では「くすぐったい」がすっかり主流になりました。
しかし「こそばゆい」には、体だけでなく「心のくすぐったさ」も含まれています。褒められるシーンで、なんだか自分にはもったいないような照れくささを感じ、謙遜する気持ちを柔らかく表現できるのは「こそばゆい」の魅力の一つです。
「こそばゆい」の意味は「くすぐったい」
まずはウェブサイトのコトバンクを利用して、辞書に記されている「こそばゆい」の意味を調べます。
こそばゆ・い
〘形口〙 こそばゆ・し 〘形ク〙
① くすぐられるなどして、むずむずした感じが堪えがたい。くすぐったい。
※京大本湯山聯句鈔(1504)「酸と云わ、こそばゆいぞ」
② 相応以上の賞賛やもてなしなどをうけたりして恥ずかしい。また、気がもめて落ち着かない。くすぐったい。
※浮世草子・新竹斎(1687)三「猶よしある人とおもへるけしきに、尻擽(コソバユ)くいとま乞て出ぬ」
こそばゆ‐が・る〘自ラ四〙
こそばゆ‐さ〘名〙
出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「こそばゆい」
こそばゆ・い
[形][文]こそばゆ・し[ク]
1 くすぐられたような、むずむずした感じである。くすぐったい。「背中が―・い」
2 実力以上に評価されなどして、きまりがわるい。てれくさい。「そんなに褒められては―・い」
[派生]こそばゆげ[形動]こそばゆさ[名]
出典:デジタル大辞泉(小学館)「こそばゆい」
「こそばゆい」の意味は端的に言うと「くすぐったい」ですが、細かく分けると2つになります。1つは身体的・物理的にむずがゆい状態、もう1つは照れくさく身の置き所がないような心理的なむずがゆさです。
例えばふざけて脇の下やわき腹をくすぐられると、耐えがたいムズムズ感を覚えますよね。また、小さな虫が腕に止まっている、服のタグが背中に触れている、など体に直接何かが当たっているとき「こそばゆい」と表現できます。一方、心理的なむずがゆさを感じるのは、自分が思っているよりも過大に評価される、過剰にもてなされる、といったシーンです。本当にくすぐられているわけではないのに、くすぐったく感じるのは、よく考えるとおもしろいですよね。
「こそばゆい」の語源は大和言葉
「こそばゆい」の語源は、大和言葉(やまとことば)の「こそばゆし」です。「こそばゆし」を形容詞化した形が「こそばゆい」になります。
大和言葉とは、大陸から漢語や外来語が入ってくる以前からある日本生まれの言葉のことです。縄文や弥生時代から使われていたと言われ、のちに宮中や幕府といった上流階級の言葉としても広まりました。現在でも「こそばゆい」を由来とした方言が西日本を中心にしているのは、かつての日本が西日本に都を置いていたことと関連がありそうですね。
大和言葉の中には今も残る擬態語が多くあります。「こそばゆい」の「こそ」の部分も、くすぐることを表す「こそこそ」が元です。「こしょこしょ」「くすぐる」(こそぐる)もまた、この「こそこそ」に繋がっています。
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