選挙や政治の話題でよく出てくる言葉に、「派閥の領袖」という言葉がある。聞いたことがあるかな?そもそも漢字が読みづらいかもしれませんね。「はばつの りょうしゅう」と読む。

この「領袖(りょうしゅう)」という言葉、簡単に言えば「指導者」という意味です。ただ、他にも「指導者」という意味の言葉はたくさんあり、それぞれニュアンスが微妙に異なってくる。これが使い分けできるとカッコいいぞ。

ということで、今回はその「領袖」について、院卒日本語教師の"むかいひろき"に解説してもらうことにしたぞ!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「領袖」の意味や語源は?

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「領袖」という言葉、聞きなれない人も多いかもしれません。ただ、ニュースを見ていると政治の話題では時々登場する言葉でもあります。まずは、その「領袖」の意味と語源を確認していきましょう。

「領袖」の意味は「集団の指導者」

まずは「領袖」の辞書での意味を確認していきましょう。「領袖」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

団体などを率いて、その長となる人物。集団の指導者。
「党派の―」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「りょう-しゅう【領袖】リヤウシウ」

「領袖(りょうしゅう)」は「集団の指導者」という意味の言葉です。「集団の指導者」という意味の言葉は「リーダー」や「トップ」など様々ありますが、それらと比較すると少し聞きなれない言葉かもしれませんね。そして、それらの言葉とは意味は同じですが若干語感が異なってきます。

現代語で「領袖」という言葉を使うと、古めかしい言い方のややくだけ表現という印象を受けますね。そのため、国の指導者である首相や大統領を指して使うことはあまりありませんし、自身が所属する組織の長を他所で紹介するときに、「うちの領袖の○○です」と使うことはほぼ絶対にありません。この辺りは、例文や類義語のコーナーで確認していきましょう。

「領袖」の語源は、衣類!

「領袖」の語源は、文字からも推測できる通り、衣類がその語源となっています。「領」が表すものは衣服の襟(えり)、「袖」はもちろん衣服の袖(そで)です。襟と袖は衣服を取る時に掴む部分であり、また目立つ部分でもあることから、集団における長(指導者)の意味が生まれたのだと考えられています。

なお、この「領袖」は日本で誕生した言葉ではなく、中国で誕生した言葉だと考えられていますね。唐の時代の648年に成立した『晋書』に、「領袖」という言葉がすでに登場します。

「領袖」の使い方を例文とともに確認!

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続いて、「領袖」の使い方を確認していきましょう。意味のコーナーで「領袖」は古めかしい言い方のややくだけ表現という印象があると述べました。よって、政党を除いた公的な組織の長(国の指導者や地方自治体の長など)を指して使用されることはあまりありません

1.自民党の各派閥の領袖が集結し、長崎県の佐世保市内のテーマパークに隣接したホテルで会合が開かれたらしい。
2.指定暴力団A組の領袖である坪内氏は、外国のマフィア組織のボスであるモウラル・マリーナ氏ともつながりがあり、そこから大量の拳銃を密輸しているらしい。
3.学校内で代表的な3つのグループの領袖が、今日の十時から体育館裏で決闘を行うらしい。

例文1では、「自民党の各派閥のトップが集まり」という意味で「領袖」が使用されています。政党内の派閥やグループの長を表す際に、この「領袖」という言葉はよく使用されますね。選挙前後にはニュースで一度は耳にするはずです。

例文2では、「指定暴力団A組の組長である坪内氏」という意味で「領袖」が使用されています。暴力団やマフィア、ギャングなどの犯罪組織の長を指す時にも「領袖」はよく使用されますね。

例文3では、「学校内で有名な3つのグループの」という意味で「領袖」が使用されています。このような非公式の組織の長を指す時にも、「領袖」はよく使用されますね。

\次のページで「「領袖」の類義語は?」を解説!/

「領袖」の類義語は?

続いて「領袖」の類義語を見ていきましょう。「領袖」の類義語は「ドン」「ボス」「首領」「リーダー」「トップ」「首脳」です。それぞれの意味やニュアンスを確認した上で、「領袖」と比較してみてください。ニュアンスごとにまとめて紹介してみました。

「ドン」「ボス」「首領」:ある集団の長

「ドン」「ボス」「首領」は「ある集団の長」という意味の言葉です。この3つの言葉は、主に非公式の組織の長犯罪組織の長を指すために使われることが多い、ややくだけた表現ですね。現代語の「領袖」のニュアンスに一番近いかもしれませんね。

これら3つの言葉は、公的な場や、他者に自身が所属する組織の長を紹介する場面での使用は、まずできません。冗談めかした言い方として「ボス」であればギリギリ許容範囲かもしれませんが、初対面の相手には避けたほうが無難でしょう。

「リーダー」「トップ」:指導者、組織の最上層にある人

「リーダー」「トップ」は「指導者」「組織の最上層にある人」という意味の言葉です。もちろん、英語の「leader」「top」が元となっています。この「リーダー」「トップ」は、非公式の組織の長や犯罪組織の長に限らず、公的な組織の長や首相、大統領など、ありとあらゆる「指導者」に対して使用できるのが特徴です。つまり、守備範囲が最も広い言葉ですね。

「首脳」:組織の最上層にある人

「首脳」は「組織の最上層にある人」という意味を持った言葉です。この「首脳」は、主に公的な組織の長に対して使用される特徴があります。つまり、国や地方自治体の長(首相、大統領、知事、市長など)や、会社の長(社長、会長など)ですね。非公式の組織の長や犯罪組織の長に対しては使用不可ではありませんが、あまり使用されません。

「領袖」の英語表現は?

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次に、「領袖」の英語表現を見ていきましょう。「領袖」の英語表現は「leader」と「boss」です。類義語のコーナーにも出てきましたね。意味や使い方を確認していきましょう。

\次のページで「「leader」:リーダー」を解説!/

「leader」:リーダー

「leader」は、もちろん「リーダー」「指導者」という意味の英単語です。以上の意味で使用される場合は、「領袖」の訳語として使用できます。ただ、英語の「leader」には日本語の「リーダー」よりもさらに多くの意味があるのが特徴です。「目玉商品」や「特価品」「主輪」と言った意味もあります。

今回は、「領袖」の訳語に対応した意味に絞って、例文を見ていきましょう。

1.Gomez, the leader of a drug ring in Country D, uses his talents to lead a huge organization without problems.
D国の麻薬組織の領袖であるゴメス氏は、その才能を生かして巨大な組織を問題なく統率している。

2.So far, Mr. Ohmura seems to be the leader of the Japanese group in this area.
今のところ、大村さんがこの辺りの日本人グループの領袖らしい。

「boss」:ボス

「boss」は「ボス」「組織のトップ」「上司」「社長」などという意味を持った言葉です。外国のドラマで、上司や社長に対して「Boss!」と呼びかけたり、「私の上司は~」と話している時に「My boss ~」といった表現を使ったりしている場面を見たことがある人はいませんか?このように、使用できる対象が広いのが日本語の「ボス」との違いですね。

「領袖」と訳すことができる例文を確認していきましょう。

1.Mr. Mateo, the boss of a drug cartel in S country, is suspected of smuggling large quantities of opium from India.
S国の麻薬カルテルの領袖であるゴメス氏には、インドから大量のアヘンを密輸しているという疑惑がある。

2.Mr. Jasmine, the boss of a gang in Country D, does his evil deeds without regard to the public gaze.
D国のギャングの領袖であるジャスミン氏は、人目をはばからず悪事を働いている。

ニュアンスや場面に気をつけて使おう!「領袖」

今回は「領袖」について紹介しました。「領袖」は「集団の指導者」という意味の言葉ですが、誰に対して使用するのか、どんな場面で使用するのかなど、「リーダー」や「トップ」との使い分けが大切になります。使い分けが不安になったり、この場面で「領袖」を使っていいのかな…と思ったら、是非この記事を振り返ってみてください!

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国語言葉の意味

「派閥の”領袖”」って何?「領袖」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

選挙や政治の話題でよく出てくる言葉に、「派閥の領袖」という言葉がある。聞いたことがあるかな?そもそも漢字が読みづらいかもしれませんね。「はばつの りょうしゅう」と読む。

この「領袖(りょうしゅう)」という言葉、簡単に言えば「指導者」という意味です。ただ、他にも「指導者」という意味の言葉はたくさんあり、それぞれニュアンスが微妙に異なってくる。これが使い分けできるとカッコいいぞ。

ということで、今回はその「領袖」について、院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうことにしたぞ!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「領袖」の意味や語源は?

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「領袖」という言葉、聞きなれない人も多いかもしれません。ただ、ニュースを見ていると政治の話題では時々登場する言葉でもあります。まずは、その「領袖」の意味と語源を確認していきましょう。

「領袖」の意味は「集団の指導者」

まずは「領袖」の辞書での意味を確認していきましょう。「領袖」は、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

団体などを率いて、その長となる人物。集団の指導者。
「党派の―」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「りょう-しゅう【領袖】リヤウシウ」

「領袖(りょうしゅう)」は「集団の指導者」という意味の言葉です。「集団の指導者」という意味の言葉は「リーダー」や「トップ」など様々ありますが、それらと比較すると少し聞きなれない言葉かもしれませんね。そして、それらの言葉とは意味は同じですが若干語感が異なってきます。

現代語で「領袖」という言葉を使うと、古めかしい言い方のややくだけ表現という印象を受けますね。そのため、国の指導者である首相や大統領を指して使うことはあまりありませんし、自身が所属する組織の長を他所で紹介するときに、「うちの領袖の○○です」と使うことはほぼ絶対にありません。この辺りは、例文や類義語のコーナーで確認していきましょう。

「領袖」の語源は、衣類!

「領袖」の語源は、文字からも推測できる通り、衣類がその語源となっています。「領」が表すものは衣服の襟(えり)、「袖」はもちろん衣服の袖(そで)です。襟と袖は衣服を取る時に掴む部分であり、また目立つ部分でもあることから、集団における長(指導者)の意味が生まれたのだと考えられています。

なお、この「領袖」は日本で誕生した言葉ではなく、中国で誕生した言葉だと考えられていますね。唐の時代の648年に成立した『晋書』に、「領袖」という言葉がすでに登場します。

「領袖」の使い方を例文とともに確認!

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続いて、「領袖」の使い方を確認していきましょう。意味のコーナーで「領袖」は古めかしい言い方のややくだけ表現という印象があると述べました。よって、政党を除いた公的な組織の長(国の指導者や地方自治体の長など)を指して使用されることはあまりありません

1.自民党の各派閥の領袖が集結し、長崎県の佐世保市内のテーマパークに隣接したホテルで会合が開かれたらしい。
2.指定暴力団A組の領袖である坪内氏は、外国のマフィア組織のボスであるモウラル・マリーナ氏ともつながりがあり、そこから大量の拳銃を密輸しているらしい。
3.学校内で代表的な3つのグループの領袖が、今日の十時から体育館裏で決闘を行うらしい。

例文1では、「自民党の各派閥のトップが集まり」という意味で「領袖」が使用されています。政党内の派閥やグループの長を表す際に、この「領袖」という言葉はよく使用されますね。選挙前後にはニュースで一度は耳にするはずです。

例文2では、「指定暴力団A組の組長である坪内氏」という意味で「領袖」が使用されています。暴力団やマフィア、ギャングなどの犯罪組織の長を指す時にも「領袖」はよく使用されますね。

例文3では、「学校内で有名な3つのグループの」という意味で「領袖」が使用されています。このような非公式の組織の長を指す時にも、「領袖」はよく使用されますね。

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