この記事では「謹んで」について解説する。

端的に言えば謹んでの意味は「かしこまって」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「謹んで」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「謹んで」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「謹んで」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「謹んで」の意味は?

「謹んで」には、次のような意味があります。

《動詞「つつしむ」の連用形に接続助詞「て」の付いた「つつしみて」の音変化》敬意を表してうやうやしく物事をするさま。かしこまって。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「謹んで」

「謹んで」は「つつしんで」と読みます。「謹んで」の言葉を一般的によく見るのは年賀状でしょうか。「謹んで新年のお慶びを申し上げます」という文面は、誰もが一度くらいは目にしているでしょう。

「謹んで」は「かしこまって~いたします」という意味をあらわしますが、そのように言い換えられるわけではなく、決まった言い方で使われる言葉です。年賀状の挨拶文のほかにも、結婚式では「謹んでお祝い申し上げます」、葬式では「謹んでお悔やみ申し上げます」などと使います。

ビジネスシーンでも、報告に謝罪にと広く使う言葉です。使い方のバリエーションはいろいろあり、スマートに使いこなせたら社会人としての株はグっとあがることでしょう。しかしフォーマルな言葉であるため、間違って使うと大変な失礼にあたることも。慣れないうちは下調べして使うのが良いかもしれません。

「謹んで」の語源は?

次に「謹んで」の語源を確認しておきましょう。「謹んで」は「謹む(つつしむ)」に「で」をつけた、連用形です。「謹む」の語源は古語の「つつむ」。他人を包容する「包む」や態度を控える「慎む(つつしむ)」の語源でもある言葉です。自分を抑えて他人に敬意をはらう意味合いが「謹む」に通じますね。

「謹」の字には「言葉を控えめにする」という意味があります。「謹」の右側の部分は「黄」と「土」からなり、神をまつるために土を練り込める様子をあらわしているそう。「言葉を練り込める」ところから、「言葉に気を配る」つまり「言葉を控えめにする」という意味になります。

\次のページで「「謹んで」の使い方・例文」を解説!/

「謹んで」の使い方・例文

「謹んで」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。
2.故人のご逝去を悼み、謹んでご冥福をお祈りします。
3.漫才グランプリにおきまして、当社所属の「マヂックラブリー」がみごと優勝しましたことを、社員の皆様に謹んでご報告申し上げます。
4.この度は多大なご迷惑をおかけしましたことを、謹んでお詫び申し上げます。
5.「謹賀新年」本年もよろしくお願い申し上げます。

例文1と2は、不幸があった際にお悔やみを伝える言葉です。1は遺族に向けた言葉、2は故人に向けた言葉となります。これらは弔電(お悔やみの電報)などでの使い方です。口頭でお悔みを伝えるときは「この度は心よりお悔み申し上げます」というのが一般的でしょう。

例文3は、報告に使う「謹んで」の例です。「謹んで~申し上げます」と使うことで、みんなで分かち合いたいという気持ちを品よく丁寧にあらわしていますね。

例文4は、謝罪するときに使う言葉です。「謹んで」を使って強い反省を示しています。

例文5で使っている「謹賀新年」は「謹んで新年のお祝いを申し上げます」という意味の四字熟語です。つまり年賀状にその両方を書くと、意味が重複することになります。片方だけを使いましょう。

「謹んで」の類義語は?違いは?

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「謹んで」は決まった言い方で使うため、言い換えられるような類義語はありません。

場合によっては同じ意味をあらわす「恐縮ながら(きょうしゅくながら)」「僭越ながら(せんえつながら)」を紹介します。

その1「恐縮ながら(きょうしゅくながら)」

「恐縮ながら」は、断ったりお願いしたりするときに、失礼のないようにへりくだる表現です。「大変恐縮ではありますが、今回は辞退させていただきます」「お忙しい中恐縮ですが、早めに返信いただけますと幸いです」のように使います。

「謹んで」を使った場合は「誠に残念ではございますが、今回は謹んで辞退させていただきます」「お忙しいとは存じますが、早めに返信いただけますよう謹んでお願い申し上げます」となるでしょうか。おおむね同じ意味をあらわしていますね。

例えば「謹んでお悔やみ申し上げます」という言葉などは、「恐縮ながら」を使ってあらわすことはできません。注意してくださいね。

\次のページで「その2「僭越ながら(せんえつながら)」」を解説!/

その2「僭越ながら(せんえつながら)」

「僭越ながら」は、「出過ぎたまねをしますが」という意味です。「僭越」の意味はズバリ「でしゃばり」。私のようなものが生意気にもでしゃばりますがご容赦ください、と謙虚さを示す表現です。

「僭越ではありますが、乾杯の音頭をとらせていただきます」は、「謹んで」を使うと「乾杯の発声の大役を、謹んで務めさせていただきます」という感じ。「僭越」の謙虚さを「大役」という言葉で言い換えています。

「謹んでお祝いを申し上げます」と「僭越ながらお祝いを申し上げます」を比べると、「僭越ながら」の文の方には、「謹んで」の文には含まれない妙な謙遜を感じますよね。このように言い換えに適さない例もあります

「謹んで」の対義語は?

「謹んで」の対義語もまた、ありません。

かなり限定的ではありますが、逆の意味をあらわすことがある「甘んじて」を紹介します。

「甘んじて」

「甘んじて」とは、「仕方なく受け入れる」という意味です。「謹んで」を「かしこまって(積極的に)お受けする」と使う場合には、反対の意味をもつといえます。

会社で辞令を受けるときには、形式的でも「謹んでお受けします」と返事するのが普通です。心の中では「受けたくない」と思っているかもしれません。しかし辞令はすでに決定事項。「望まない人事異動を甘んじて受け入れる」という状況です。

喜ばしい内容の辞令に対し「謹んでお受けします」というときは、まさにその言葉のとおり「かしこまってお受けします」という心境でしょう。「甘んじて」とは反対の状況です。

「謹んで」の英訳は?

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「謹んで」の英訳には「respectfully」を使います。

「respectfully」

「respectfully」は「敬意を表して」「うやうやしく」という意味です。「respect」は「尊敬」「敬意」という意味。日本語でも「リスペクト」と使われるため、おなじみですね。

「謹んで」を使ったあいさつ文は、そのほかの言い回しでも表現できます。例文で確認しましょう。

The Management respectfully requests that the audience refrain from using cameras during performance.
(当劇場はお客様が開演中にカメラのご使用をご遠慮くださいますよう謹んでお願い申しあげます。)

I wish you a Happy New Year.
(謹んで新年のお慶びを申し上げます。)

Please accept my sincere deepest condolences.
(謹んでお悔やみ申し上げます。)

\次のページで「「謹んで」を使いこなそう」を解説!/

「謹んで」を使いこなそう

この記事では「謹んで」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「謹んで」は「かしこまって~いたします」という意味をあらわす言葉です。「謹んで新年のお慶びを申し上げます」のように、決まった言い方で使われます。

スマートに使うには慣れが必要ですね。使えるポイントを覚えておいて、そのときはすかさず使う、そこから始めてみてはいかがでしょうか。

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国語言葉の意味

「謹んで」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「謹んで」について解説する。

端的に言えば謹んでの意味は「かしこまって」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「謹んで」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「謹んで」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「謹んで」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「謹んで」の意味は?

「謹んで」には、次のような意味があります。

《動詞「つつしむ」の連用形に接続助詞「て」の付いた「つつしみて」の音変化》敬意を表してうやうやしく物事をするさま。かしこまって。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「謹んで」

「謹んで」は「つつしんで」と読みます。「謹んで」の言葉を一般的によく見るのは年賀状でしょうか。「謹んで新年のお慶びを申し上げます」という文面は、誰もが一度くらいは目にしているでしょう。

「謹んで」は「かしこまって~いたします」という意味をあらわしますが、そのように言い換えられるわけではなく、決まった言い方で使われる言葉です。年賀状の挨拶文のほかにも、結婚式では「謹んでお祝い申し上げます」、葬式では「謹んでお悔やみ申し上げます」などと使います。

ビジネスシーンでも、報告に謝罪にと広く使う言葉です。使い方のバリエーションはいろいろあり、スマートに使いこなせたら社会人としての株はグっとあがることでしょう。しかしフォーマルな言葉であるため、間違って使うと大変な失礼にあたることも。慣れないうちは下調べして使うのが良いかもしれません。

「謹んで」の語源は?

次に「謹んで」の語源を確認しておきましょう。「謹んで」は「謹む(つつしむ)」に「で」をつけた、連用形です。「謹む」の語源は古語の「つつむ」。他人を包容する「包む」や態度を控える「慎む(つつしむ)」の語源でもある言葉です。自分を抑えて他人に敬意をはらう意味合いが「謹む」に通じますね。

「謹」の字には「言葉を控えめにする」という意味があります。「謹」の右側の部分は「黄」と「土」からなり、神をまつるために土を練り込める様子をあらわしているそう。「言葉を練り込める」ところから、「言葉に気を配る」つまり「言葉を控えめにする」という意味になります。

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