

端的に言えば「犇めく」の意味は「たくさんの人々が集まっているさま」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
語学好き・英語好き・読書好きなライターくふを呼んだ。一緒に「犇めく」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/くふ
語学好き・英語好き・読書好きなライター。学習塾での経験を活かし分かりやすく丁寧な解説をお届けする。
「犇めく」の意味は?
「犇めく」には、次のような意味があります。辞書や辞典などで正確な内容を確認しましょう。
1.大勢の人が1か所にすきまなく集まる。また、集まって騒ぎたてる
2.ぎしぎしと音がする
出典:デジタル大辞泉(小学館)「犇めく」
牛が3つで「犇めく」。何と読むか分かるでしょうか。読むことができたあなたは語彙力が高いでしょう。「犇めく」とは「1.大勢の人が1か所に集まっている状況 2.ぎしぎしと音がする」の意。読み方は「ひしめく」です。一つの場所にたくさんの人が集中している場面や人がたくさん集まりどよめていてるさまを示す言葉ですよ。満員電車で人が密集している様子やセール会場にたくさんの人が集まっている光景を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
古典の有名な作品にもたくさん使われている言葉です。「平家物語」においては「京より御使ありとて犇めきけり=京より使いの者があると大勢の人が集まった」のように「観衆が集まっている」という意味で使われています。
「宇治拾遺物語」では「片方に寄りて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにしいだしたるさまにて、ひしめき合ひたり 」=「部屋の隅に寄って、寝たふりをして、ぼたもちが出来上がるのを待っていたらもうできたようで僧たちが一緒に騒ぎ立てています」のように「騒ぎ立てている」という意味を示していますよ。
「枕草子」においては 「いとど奥の方より、物の犇めき鳴るもいと恐ろしくて」=「さらに奥の方から、ぎしぎしと物音がするさまがとても恐ろしくて」のように「ぎしぎしと物音がするさま」を表しています。とても歴史の深い言葉だということが感じられるでしょう。
「犇めく」の語源は?
次に「犇めく」の語源を確認しておきましょう。「犇」は「牛が群れを作って集まっているところに何か驚くようなものごとが起こり、牛たちが慌てて走り逃げる様子」を示しているとされています。「牛たちが集団でいる様子や牛たちが一斉に走り出す状況」から派生して、現在の「犇めく」の意味である「混雑しているさま」を表すようになったと伝えられていますよ。「牛」を3つ使用して状況を示すという発想力の豊さが大いに感じられます。「犇めく」の由来について理解が深まりましたね。
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