この記事では「慎む」について解説する。

端的に言えば慎むの意味は「控える」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「慎む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「慎む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「慎む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「慎む」の意味は?

「慎む」には、次のような意味があります。

1.あやまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。
2.度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。
3.(「謹む」と書く)うやうやしくかしこまる。
4. 物忌みする。斎戒する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「慎む/謹む」

「慎む」の読み方は「つつしむ」です。「慎む」は失敗しないように行動を控えること。1の意味では「言葉を慎みなさい」、2の意味では「暴飲暴食を慎む」のように使います。どちらも「控える」の意味ですね。

1と2の意味はほぼ同じといえますが、細かくみれば「言葉を慎みなさい」は「言葉に気をつけなさい」ということ。この「慎む」は「気をつける」「慎重におこなう」という意味です。「暴飲暴食を慎む」は「食べすぎ飲みすぎにならないような食べ方をする」ということ。度が過ぎないようにするという意味です。

3の「謹む」は「謹んでお受けいたします」のように、かしこまった場面で使う言葉。「慎む」とは意味が違いますが、「敬意をあらわすために行動を控える様子」と考えれば似ているところもあります。辞書に一緒に載っているのはそのためでしょう。

4の意味は、現代では物忌みの習慣が薄れているため一般的には使いません。

「慎む」の語源は?

次に「慎む」の語源を確認しておきましょう。「慎む」の語源は「慎む(つつむ)」。ややこしいですが、古文の中では「慎む」と書いて「つつむ」と読む例があります。「慎む(つつむ)」の意味は「遠慮する」「気後れする」。「遠慮する」の意味が、現代の「慎む(つつしむ)」に通じていますね。

その「慎む(つつむ)」は「包む」と語源が同じだそう。「包む」という言葉には他人を受けとめる優しさを感じますが、その「包む人」は誰にも包まれていませんね。自分が甘えたい気持ちは抑え、自律しているのだともいえます。古来より「つつむ」という言葉には、自分が控えることで良くあろうとする意味合いがあったのかもしれません。

「慎」の字は、気を配ることで心がいっぱいの様子をあらわすのだそう。それを知ると「もっと自分を解放していいよ」と言ってあげたくなりますね。

\次のページで「「慎む」の使い方・例文」を解説!/

「慎む」の使い方・例文

「慎む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.相手が話をしているときは私語を慎む、何か聞かれたらきちんと返事をする、君たちはそんなことも習ってこなかったのかね。
2.食事をきちんととって、お酒も慎んでください。そろそろ健康的な生活に戻らなければ、あなたの人生がダメになってしまいます。
3.顧客の個人情報を流出させるような言動は、厳に慎むべきと言ってあったはずだ。
4.ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。

1の例文は「私語をするな」と言い聞かせているシーン。人が話しているときに私語をすることはあやまちであり、それをしないように気をつけなさいという意味で使っている「慎む」です。

2の例文は、酒を飲み過ぎている相手に対して「お酒の量を減らしてください」と言っているシーン。度が過ぎないようにするという意味で「慎む」を使っています。

3の例文で使っているのは、「厳に慎む」という決まった言い方です。「厳に慎む」とは、絶対に間違いを起こしてはいけないという気持ちで言動を厳しく控えること。政治家や顧客を多く持つ企業など、責任ある立場の人にはこの姿勢が求められます。

4の例文は、混同しやすい「謹む」を使った文章です。こうような意味合いのときには「謹む」の字を使います。区別できると良いでしょう。

「慎む」の類義語は?違いは?

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「慎む」の類義語には「自重する」「律する」「自粛する」があります。

その1「自重する」

「自重する」とは、軽々しい行動をとらずに慎重にすること。「しばらく酒は自重することにした」のように使い、「慎む」との言い換えもできる言葉です。

「自重する」には「自分の品位を保つ」「自分の身体を大切にする」という意味もあります。「自分に重きをおく」というのが、この言葉の持つもともとのイメージです。

ネット上では「自重しろ」という言葉で「調子に乗るな」「ひっこめ」という意味をあらわすのを見かけます。意外と広く知られている言葉です。

\次のページで「その2「律する」」を解説!/

その2「律する」

「律する」とは、一定のレベルを保つように管理することです。「自己を律する」であれば、自分をコントロールし、衝動や欲求を意志の力で管理すること。

自らを厳しく監視する「律する」と、あやまちをしないように自らを抑える「慎む」は、どちらもある意味自虐的なイメージ。自分は良くあるべきという姿勢が共通点といえます。

その3「自粛する」

「自粛する」とは、良くないと思われる言動を自分の側から控えることです。良くない言動を控えることはすなわち「慎む」ことであるため、言い換えが可能。「活動を自粛する」は「活動を慎む」とほぼ同じ意味ですね。

「自粛する」の特徴は、他人の目を気にしてそうした、という状況でよく使われることです。本当はしたいことをわざわざ自分の方から控えるのは、やはり他人からの圧力を感じてのことなのでしょう。

「慎む」の対義語は?

「慎む」の対義語には「度を越す」があげられます。

「度を越す」

「度を越す」とは、ちょうど良い適切な具合でやめずにやりすぎることです。「慎む」は失敗しないように控えることですから、意味合いとしては真逆といえます。

「あんたの態度は度を越してるよ」といったら、「あんたの態度の悪さは許せる範囲を越えてるよ」という感じでしょうか。「度を越えて飲んじゃった」の場合は「適量を越えて飲みすぎちゃった」という感じですね。

「慎む」の英訳は?

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「慎む」の英訳には「be careful」などを使います。

「be careful」

「careful」は「注意深い」という意味です。「慎む」には「失敗のないように慎重にする」という意味があるため、イメージ的にもつながりますね。

「慎む」をあらわす英文は、状況に応じて「be careful」以外にもあるのです。例文で確認してみましょう。

\次のページで「「慎む」を使いこなそう」を解説!/

Be careful what you say.
(言葉を慎みなさい。)

Watch your tongue!
(言葉に気をつけろ!= 言葉を慎め!)

The doctor told me to cut down on my drinking and smoking.
(医者に酒とタバコを慎むように言われた。)

「慎む」を使いこなそう

この記事では「慎む」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「慎む」は「失敗しないように慎重にする」「度が過ぎないようにする」という意味。「控える」というイメージがピッタリくる言葉です。

「慎」の字は名前にも使われますね。「気を配ることで心をいっぱいにしている」という意味を持つ字ですが、それがすなわち人生で成功する秘訣となるのかもしれません。慎み深い人が嫌われることはないでしょうから。

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国語言葉の意味

「慎む」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「慎む」について解説する。

端的に言えば慎むの意味は「控える」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「慎む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「慎む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「慎む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「慎む」の意味は?

「慎む」には、次のような意味があります。

1.あやまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。
2.度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。
3.(「謹む」と書く)うやうやしくかしこまる。
4. 物忌みする。斎戒する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「慎む/謹む」

「慎む」の読み方は「つつしむ」です。「慎む」は失敗しないように行動を控えること。1の意味では「言葉を慎みなさい」、2の意味では「暴飲暴食を慎む」のように使います。どちらも「控える」の意味ですね。

1と2の意味はほぼ同じといえますが、細かくみれば「言葉を慎みなさい」は「言葉に気をつけなさい」ということ。この「慎む」は「気をつける」「慎重におこなう」という意味です。「暴飲暴食を慎む」は「食べすぎ飲みすぎにならないような食べ方をする」ということ。度が過ぎないようにするという意味です。

3の「謹む」は「謹んでお受けいたします」のように、かしこまった場面で使う言葉。「慎む」とは意味が違いますが、「敬意をあらわすために行動を控える様子」と考えれば似ているところもあります。辞書に一緒に載っているのはそのためでしょう。

4の意味は、現代では物忌みの習慣が薄れているため一般的には使いません。

「慎む」の語源は?

次に「慎む」の語源を確認しておきましょう。「慎む」の語源は「慎む(つつむ)」。ややこしいですが、古文の中では「慎む」と書いて「つつむ」と読む例があります。「慎む(つつむ)」の意味は「遠慮する」「気後れする」。「遠慮する」の意味が、現代の「慎む(つつしむ)」に通じていますね。

その「慎む(つつむ)」は「包む」と語源が同じだそう。「包む」という言葉には他人を受けとめる優しさを感じますが、その「包む人」は誰にも包まれていませんね。自分が甘えたい気持ちは抑え、自律しているのだともいえます。古来より「つつむ」という言葉には、自分が控えることで良くあろうとする意味合いがあったのかもしれません。

「慎」の字は、気を配ることで心がいっぱいの様子をあらわすのだそう。それを知ると「もっと自分を解放していいよ」と言ってあげたくなりますね。

\次のページで「「慎む」の使い方・例文」を解説!/

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