この記事では「厭悪」について解説する。

端的に言えば厭悪の意味は「ひどく嫌って憎むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

ドラマやアニメなど、数多くの映像字幕を作成した経験があるNagiを呼んです。一緒に「厭悪」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Nagi

映像翻訳スクール出身。翻訳、チェッカー以外にも、CC字幕(クローズドキャプション)の制作多数。言葉を文字で表現する「字幕」の世界に数多く触れてきた経験を活かして、分かりやすく解説する。

「厭悪」の意味や語源・使い方まとめ

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厭悪」の読み方は「えんお」です。はたして、どれくらいの人が正しく読めたでしょうか?

それでは早速「厭悪」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「厭悪」の意味は?

まず、国語辞典に記載されている意味を見てみましょう。「厭悪」には、次のような意味があります。

嫌い憎むこと。ひどくいやに思うこと。嫌悪。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「厭悪」

辞書の説明にもあるように「厭悪」は「嫌悪(けんお)」と同義です。ただ、この二つの言葉の間には、ニュアンスの違いがあります。「厭悪」は「いとわしく思って憎む」こと。一方の「嫌悪」は「感覚的に不快感を持って嫌うこと」です。

「嫌」と「厭」を合わせて「嫌っていやがること」を強調した「嫌厭(けんえん)」という言葉もあります。「けんえんの仲」という諺(ことわざ)がありますが、この場合の「けんえん」は「犬猿」なので間違えないようにしましょう。

「厭悪」の語源は?

次に「厭悪」の語源を確認しておきましょう。「厭」という漢字が「厭(いと)う」と読めることからも分かるように。この字には「それ以上することをいやがる」という意味があります。「厭世感」「厭戦ムード」といった言葉からもイメージしやすいですね。

一方の「」の字は「あく」や「わるい」でおなじみですが、ここでは「お」と読みましょう。「お」と読む場合は「憎む・いやな」という意味になります。

\次のページで「「厭悪」の使い方・例文」を解説!/

「厭悪」の使い方・例文

続いて、「厭悪」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.潔癖症の彼は、部屋が片付けられない彼女に厭悪の情を抱いている。

2.過去の逮捕歴が明るみになると、一部の同僚から厭悪のまなざしが向けられるようになった。

3.私の親友は、横暴で横柄な父親を厭悪している。

どの例文からも、強い拒絶や拒否といった感情が伝わってきますね。それぞれの文で使われている「厭悪」を「嫌悪」に置き換えた場合はどうでしょうか?「嫌悪」には「感覚的な不快感」がベースにあるので、より感情的なニュアンスが出てきます。

その一方で、「物事を判断した結果、不快感や憎しみを持つ」というニュアンスがあるのが「厭悪」です。つまり、嫌悪感を持つにいたる揺るぎない理由がある場合、「厭悪」という言葉が使えるといえるでしょう。「嫌悪感」という言葉はあっても「厭悪感」という言葉はありませんよね。

「厭悪」の類義語は?違いは?

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ここからは「厭悪」の類義語を見ていきましょう。「ひどく嫌って憎むこと」と同じような意味を持つ言葉を、いくつか紹介していきます。

その1「憎悪」

憎悪(ぞうお)」は「憎んで嫌うこと」を意味します。「厭悪」よりも、憎しみの激しさがより強く感じられる言葉です。「憎悪の炎を燃やす」という表現はありますが、「厭悪の炎を燃やす」とは言いませんので覚えておきましょう。

\次のページで「その2「毛嫌い」」を解説!/

その2「毛嫌い」

毛嫌い」の意味は「理由なく感情的に嫌うこと」。このため「厭悪」よりも「嫌悪」の意味により近い言葉といえるでしょう。鳥獣が毛並みによって好き嫌いを判断するところからきている言葉なので、見た目で拒否する「食わず嫌い」のニュアンスにも近いかもしれません。

その3「厭忌」

厭忌(えんき)」の意味は「いやがって嫌うこと」。「」という字には「嫌って避ける」という意味があります。

その他にも「厭悪」に似ている言葉には、嫌って避けることを意味する「忌諱(きき/きい)」、つばを吐き捨てるほどに軽蔑して嫌うことを意味する「唾棄(だき)」などもあるので、合わせて覚えておきましょう。

「厭悪」の対義語は?

次は「厭悪」の対義語を見ていきましょう。「ひどく嫌って憎むこと」と反対の意味合いを持つ言葉を紹介します。

「愛好」

愛好(あいこう)」という言葉には「好きなことを楽しむ」という意味があります。芸術・スポーツ・食べ物など、自分の好きなことを追求する人のことを「愛好家」と呼ぶことからも分かりますね。「厭悪」や「嫌悪」が持つ負のエネルギーとは、まさに対照的。大好きという揺るぎない感情であふれているのが「愛好」というわけです。

「厭悪」の英訳は?

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日本語の「厭悪」は英語で表現すると、どのようになるのでしょうか?ここからは日本というフィールドを離れて、文化や習慣の異なる英語圏の視点から「厭悪」の英語訳を見ていきましょう。

その1「dislike」

日本語の「厭悪」を英語で表すには「dislike」が使えます。この単語は「嫌い」という意味を幅広く表現できる便利な単語です。「好き」という意味の「like」に、反対の意味を持たせる接頭辞の「dis」がついていることからも分かりますね。

\次のページで「その2「hatred」」を解説!/

その2「hatred」

hatred」という単語でも「厭悪」を表すことができます。意味は「憎しみ・憎悪・大嫌い」。「憎む」という強い感情を持つ動詞「hate」の名詞形です。怒りや憎しみが背景にある言葉なので、「dislike」よりも「厭悪」により近い表現だといえるでしょう。

1.She has disliked her father since she was a child.
彼女は幼い頃から父親のことを厭悪している。

2.You shouldn't have a hatred for women.
女性に対して厭悪を持つべきではない。

「厭悪」を使いこなそう

この記事では「厭悪」の意味・使い方・類語などを説明しました。「厭悪」や「嫌悪」以外にも、「嫌い・憎む」といった負の感情に関連したさまざまな表現を紹介しました。それぞれのニュアンスも微妙に異なっていましたね。人間というものが、いかに多様なマイナス感情を抱えている生き物かという表れだといえるでしょう。こういったネガティブな言葉をたくさんマスターしておくと、ドラマや小説に感情移入しやすくなり、より楽しめるようになると思いますよ。

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国語言葉の意味

「厭悪」の意味や使い方は?例文や類語を字幕制作者がわかりやすく解説!

この記事では「厭悪」について解説する。

端的に言えば厭悪の意味は「ひどく嫌って憎むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

ドラマやアニメなど、数多くの映像字幕を作成した経験があるNagiを呼んです。一緒に「厭悪」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Nagi

映像翻訳スクール出身。翻訳、チェッカー以外にも、CC字幕(クローズドキャプション)の制作多数。言葉を文字で表現する「字幕」の世界に数多く触れてきた経験を活かして、分かりやすく解説する。

「厭悪」の意味や語源・使い方まとめ

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厭悪」の読み方は「えんお」です。はたして、どれくらいの人が正しく読めたでしょうか?

それでは早速「厭悪」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「厭悪」の意味は?

まず、国語辞典に記載されている意味を見てみましょう。「厭悪」には、次のような意味があります。

嫌い憎むこと。ひどくいやに思うこと。嫌悪。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「厭悪」

辞書の説明にもあるように「厭悪」は「嫌悪(けんお)」と同義です。ただ、この二つの言葉の間には、ニュアンスの違いがあります。「厭悪」は「いとわしく思って憎む」こと。一方の「嫌悪」は「感覚的に不快感を持って嫌うこと」です。

「嫌」と「厭」を合わせて「嫌っていやがること」を強調した「嫌厭(けんえん)」という言葉もあります。「けんえんの仲」という諺(ことわざ)がありますが、この場合の「けんえん」は「犬猿」なので間違えないようにしましょう。

「厭悪」の語源は?

次に「厭悪」の語源を確認しておきましょう。「厭」という漢字が「厭(いと)う」と読めることからも分かるように。この字には「それ以上することをいやがる」という意味があります。「厭世感」「厭戦ムード」といった言葉からもイメージしやすいですね。

一方の「」の字は「あく」や「わるい」でおなじみですが、ここでは「お」と読みましょう。「お」と読む場合は「憎む・いやな」という意味になります。

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